インタビュー

典型的なかぜに罹ったとき、病院や薬局ではどのような薬が処方される?

典型的なかぜに罹ったとき、病院や薬局ではどのような薬が処方される?
岸田 直樹 先生

感染症コンサルタント 、北海道科学大学 薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medic...

岸田 直樹 先生

この記事の最終更新は2016年02月25日です。

かぜの治療は、基本的に薬を使って行われていると思われがちです。症状が酷く、早く治したいときには病院へ行かれる方も多いでしょう。しかし、症状が軽い場合には薬局やドラッグストアで販売されている「OTC医薬品」を使用する方も多いかもしれません。本記事では、咳・鼻水・のどの痛みそれぞれに対し、医療機関や薬局ではどのような医薬品が出されるのか、その効能と副作用にはどのようなものがあるか、一般社団法人Sapporo Medical Academy代表理事で感染症コンサルタントの岸田直樹先生に教えていただきました。

“3症状チェック”つまり、咳、鼻水、のどの痛みの3つの症状が急に、また同時期に同程度で生じた場合、「典型的かぜ型」となります。このとき最も基本となる治療法は、薬を服用する内科的治療と思われがちです。病院でいわゆるかぜ薬をもらうか、薬局でかぜ薬を購入する方もいるでしょう。しかし、これはすべて対症療法となります。残念ながら風邪を真に治す薬(かぜを引き起こすウイルスを殺す薬)は現在のところありません。

病院で処方される薬と薬局で販売されている薬には、どのような違いがあるのでしょうか。薬局やドラッグストアで販売されている医薬品は「OTC医薬品」と呼ばれ、主に医師が処方する医薬品は「医療用医薬品」と分類されます。薬局で購入できるOTC医薬品の役割は、自分自身で健康管理を行いつつ軽い病気の症状を緩和することです。そのため、病院で処方される薬よりは若干量が少ないですが、成分では大差はなく、むしろOTCの方が総合感冒薬(さまざまな症状に対応している)ものが多い印象です。

しかし、OTC医薬品の作用や名前をみて、どの症状のための薬なのかを十分に理解できる方は少ないのではないでしょうか。かぜ薬にはいろいろな種類がありますが、それぞれの副作用や併用してはいけない薬、投与してもよい患者さんなどは異なっており、それを総合的に考えて医療者は処方を決めています。

そこで、次項では一般的にかぜに対して効果があるとされている医薬品の成分について、症状別にまとめていきます。

咳に対する薬としては、デキストロメトルファン、リン酸コデイン、漢方では麦門冬湯などがあります。これらには、咳を抑えるという効能があります。リン酸コデインは少し便秘になりやすいという特徴があるので、普段から便秘の方は避けたほうがよいでしょう。また、麦門冬湯は主に痰が出ないような乾いた咳が出ているときに効果的で、のどに潤いを与えます。どれも病院にも薬局にもあります。

鼻水に対する薬としては、第一世代の抗ヒスタミン薬、漢方では小青竜湯などがあります。これらには、くしゃみや鼻水が出るのを抑える効能があります。第一世代の抗ヒスタミン薬には、フマル酸クレマスチン・ジフェインヒドラミン・マレイン酸クロルフェニラミン・プロメタジンなどがあり、副作用として眠気などがあるので、車の運転や機械作業をする方は服用に注意が必要です。こちらも、どれも病院にも薬局にもあります。

のどの痛みに対する薬としては、アセトアミノフェン、イブプロフェン、漢方では桔梗湯などがあります。効能としては、のどの痛みの原因であるのどの炎症を抑える薬になります。アセトアミノフェン、イブプロフェンは、今はOTC医薬品として使われていますが、かつては医療用医薬品でした。つまりこちらも、どれも病院にも薬局にもあります。

このように、かぜの症状に対する薬はほぼOTC医薬品として切り替えられています。これらのことを「スイッチOTC」と呼び、現在もいくつかの薬の成分が候補にあがっています。

上記のように、症状ごとに副作用や服用して合併症が起きないかなどを総合的に判断して薬を選択していきますが、すべての症状に薬が必要というわけではありません。すべての症状に薬が欲しい場合は総合感冒薬がよいとは思いますが、副作用も多くなりますので、医療者はその見極めをするため「特につらい症状はどれですか?」と聞き、上位2症状程度を主な対象とした治療を行います。そうしなければ薬の山になってしまうのです。

*本記事は岸田直樹先生の著書「総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!」を参考にしています。

 

  • 感染症コンサルタント 、北海道科学大学 薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medical Academy(SMA) 代表理事

    日本感染症学会 感染症専門医・指導医日本内科学会 総合内科専門医日本化学療法学会 抗菌化学療法指導医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター

    岸田 直樹 先生

    “良き医学生・研修医教育が最も効率的な医療安全”をモットーに総合内科をベースに感染症のスペシャリティを生かして活動中。感染症のサブスペシャリティは最もコモンな免疫不全である“がん患者の感染症”。「自分が実感し体験した臨床の面白さをわかりやすく伝えたい」の一心でやっています。趣味は温泉めぐり、サッカー観戦(インテルファン)、物理学、村上春樹作品を読むこと。 医療におけるエンパワメントを推進する法人を立ち上げ活動している。

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