インタビュー

ピンクの目に対する抗菌薬 ― 必要なとき、必要でないとき

ピンクの目に対する抗菌薬 ― 必要なとき、必要でないとき
岸田 直樹 先生

感染症コンサルタント 、北海道科学大学 薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medic...

岸田 直樹 先生

徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...

徳田 安春 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2016年04月20日です。

ピンクの目は「結膜炎」とも呼ばれている、起こる頻度の高い病気の一つです。特に子供の発症が多く、感染や刺激によって目が赤くなります。その他にも、かゆくなったり、涙が出たり、腫れたり、まぶたが厚くなったりという症状が現れる場合もあります。

ピンクの目に対して、抗菌薬の点眼液や軟膏が処方されることがありますが、米国眼科学会によると、抗菌薬はほとんどの場合「効果がない」と言われています。さらに、効果があるどころか「有害である」という場合もあるのです。その理由は以下の通りです。

ピンクの目の多くはウイルス性ですが、抗菌薬はウイルスを殺しません。そのため、何もしなくても1週間程度で症状は消失します。また、ピンクの目は、花粉、イエダニ、ペット、コンタクトレンズや化粧品に対するアレルギー反応によっても起こりますが、抗菌薬はアレルギーにも効きません。アレルギー性であれば、アレルギーの原因となるものを避けることで症状は軽快します。

ピンクの目の3つ目の原因は細菌です。細菌には抗菌薬が有効ですが、細菌性でも軽度であれば、ほとんどの場合は治療をしなくても10日間以内で症状は消失します。

抗菌薬は、目にかゆみやチクチクするような痛み、ヒリヒリするような痛み、腫れ、充血を起こすことがあり、涙が増えることもあります。中には、アレルギー反応が出る人もいます。

ジェネリック抗菌薬の点眼剤や軟膏は、12ドルから60ドル(日本円で約1,300円〜6,500円)かかります。新しい薬やブランド薬品であれば、130ドル以上必要なこともあります。さらに、もし抗菌薬に耐性のある感染症にかかっていたとしたら、追加の診察や高額な薬が必要になります。

・症状が重篤である

・免疫機能が低下している(この場合、別の疾患も抱えている可能性があります)

・治療なしで1週間以上経っても症状が良くならない

ウイルス性:風邪やインフルエンザ咽頭炎にかかり、流涙の症状があります。

アレルギー性:目のかゆみ、まぶたの腫れ、鼻水、鼻のかゆみの症状があります。花粉症喘息など他のアレルギー疾患を持つ人に多いです。

・細菌性:粘液性で、しばしば黄緑色の目やにが1日中続きます。(風邪やインフルエンザでは通常現れない症状です。)

ピンクの目を落ち着かせるために

・清潔で冷たく、濡れたもので圧迫しましょう。冷たい人工涙液(市販のもの)で効きます。

アレルギー性結膜炎には、よく冷えた抗ヒスタミン点眼薬(処方薬または市販のもの)が効果的です。また、花粉症シーズンの間は窓を締めましょう。

ピンクの目は非常に接触感染が起こりやすいです。そのため、感染拡大の予防に努めましょう。

予防方法としては以下が挙げられます。

・よく手を洗い、アルコール消毒剤を使いましょう

・目を触ってはいけません

・コンタクトレンズを使ってはいけません

・一度使った洗面用タオルやティッシュを使ってはいけません

・シーツやタオルは、温水と中性洗剤で洗いましょう

・感染源となる可能性のある眼鏡類や化粧品は、清潔にするか取り替えましょう

以下の場合は医師に相談しましょう。

・眼の痛み、視野異常、光に過度に敏感となる場合

・過去に緑内障の手術を受けたことがある場合

・細菌性として抗菌薬を使っているのにもかかわらず、3~4日以内に症状が改善しない場合

・1週間経ってもウイルス性のピンクの目が悪化している場合

 

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 倉敷中央病院 花田沙穂

監修:岸田直樹先生、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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  • 感染症コンサルタント 、北海道科学大学 薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medical Academy(SMA) 代表理事

    日本感染症学会 感染症専門医・指導医日本内科学会 総合内科専門医日本化学療法学会 抗菌化学療法指導医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター

    岸田 直樹 先生

    “良き医学生・研修医教育が最も効率的な医療安全”をモットーに総合内科をベースに感染症のスペシャリティを生かして活動中。感染症のサブスペシャリティは最もコモンな免疫不全である“がん患者の感染症”。「自分が実感し体験した臨床の面白さをわかりやすく伝えたい」の一心でやっています。趣味は温泉めぐり、サッカー観戦(インテルファン)、物理学、村上春樹作品を読むこと。 医療におけるエンパワメントを推進する法人を立ち上げ活動している。

  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    日本内科学会 総合内科専門医日本プライマリ・ケア連合学会 指導医・プライマリ・ケア認定医

    徳田 安春 先生

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