インタビュー

かぜの定義とは?他の病気と見分けるために。

かぜの定義とは?他の病気と見分けるために。
総合診療医/感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授/一般社団法人Sapporo Medical Academy(SMA)代表理事/ 北海道大学医学院大学院社会医学博士課程 岸田 直樹 先生

総合診療医/感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授/一般社団法人Sapporo M...

岸田 直樹 先生

体調が優れないとき、私たちはしばしば「かぜだと思う」と、病院や薬局で伝えることがあります。果たして、その症状は本当にかぜによるものなのでしょうか。一般社団法人Sapporo Medical Academy代表理事で感染症コンサルタントの岸田直樹先生は、医療者もまた、かぜという用語を誤って使用することがあるとおっしゃいます。この記事では、かぜの定義と、定義づけをする必要性についてお話しいただきました。

かぜの定義-自然によくなる上気道のウイルス感染症

かぜは私たちが最も日常的にかかりやすい病気であり、体調が優れないと「かぜをひいた」と考えがちです。しかしそれは本当にかぜなのでしょうか? かぜとはどのような病気なのでしょうか。どのような症状があれば、かぜと言うことができるのでしょうか。ここでは、まずはかぜとはどのようなものであるのかという定義について述べていきます。

かぜの定義は、「自然によくなる上気道のウイルス感染症」のことをいいます。臨床的な上気道とは、喉と鼻、肺の手前にある気管支のことを指します。そして感染症とは、菌やウイルスといった微生物が体内に侵入し、感染し増殖することで発症する病気のことです。つまり、かぜとは上気道のウイルス感染症であり、下痢だけなどではかぜとはいわないということになります。

主な症状としては、鼻水・のどの痛み・咳・発熱・くしゃみなどがあげられます。しかし、逆にこれらの症状が見られたからといってかぜとはいえず、他の病気の可能性もあります。かぜに似た症状を出す病気は、ウイルス以外の呼吸器の感染症やそれ以外にもあり、この鑑別を行うのは医療者の重要な役割となります。また、かぜは自然によくなるという特徴を持っているので、症状が長引く場合は、かぜではない可能性があると考えられます。

かぜの定義は、他の疾患との鑑別のために重要

先ほど、下痢はかぜではないと述べましたが、実際に医療者の中には「お腹のかぜ」というような表現を用いて説明する人もいます。確かに、下痢はウイルス性胃腸炎、つまり自然によくなる腸のウイルス感染症のひとつの症状ですから完全に間違いとはいえませんが、ここでは「ウイルス性胃腸炎」と診断するのが正しいといえます。なぜなら、医療者は「どこまでがかぜか?」ということを明確にすることで、先に述べたように、かぜ以外の疾患との鑑別をする必要があるからです。下痢までかぜに含めてしまうと、かぜというカテゴリーが広くなってしまい鑑別が難しくなります。

例えば、咳とのどの痛みと鼻水が出ていればかぜ(ウイルス性上気道炎)とし、嘔気・嘔吐や腹痛、下痢がある場合には、診断はウイルス性胃腸炎であるとします。この場合は、症状もわかりやすいですが、実際には頭痛や倦怠感、関節痛などそのほかの症状もあり、複雑になります。このとき医療者は、「どこまでがかぜか?」を見極め、症状や検査から鑑別をしていきます。そうすることによりスムーズに適切な治療が進み、早く治ることにつながります。ですから、かぜの定義はできるだけ曖昧にせず、「自然によくなる上気道のウイルス感染症」のみを指すこととし、重要なのはウイルス感染の部位を広げすぎずに、上気道のみに絞り、その症状がきちんとあるかどうかと考えることです。

*本記事は岸田直樹先生の著書「総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!」を参考にしています。