インタビュー

かぜだと思ったのに-かぜに似た別の病気には何がある?

かぜだと思ったのに-かぜに似た別の病気には何がある?
岸田 直樹 先生

総合診療医/感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授/一般社団法人Sapporo M...

岸田 直樹 先生

かぜは、薬局で購入できるOTC医薬品やセルフケアでも十分に対応できる病気です。しかし、今回ご紹介する適切なセルフケアをとっていてもなお症状が緩和されていかない場合、背後に非常に危険な病気が潜んでいる可能性があります。本記事では、かぜと似た症状を呈する重篤な疾患にはどのようなものがあるか、一般社団法人Sapporo Medical Academy代表理事で感染症コンサルタントの岸田直樹先生にお伺いしました。

「典型的かぜ型」のときに心掛けるべきセルフケア

ここまで紹介してきた「典型的かぜ型」に対しての治療は、それぞれの症状別に治療を行う「対症療法」で十分に対応できます。病院へ行き医療用医薬品をもらうか、薬局でOTC医薬品を購入して、自宅療養するのが最もよい治療法となります。セルフケアとしては、無理をせずに安静にして休息をとり、部屋を暖かくして身体を冷やさないように心掛けることが重要です。

また、消化がよく、かぜによる体力の消耗を補えるような栄養価の高い食べ物を摂取することも大切です。熱が高い場合は体から水分が出ていったしまうため、脱水症状を防ぐためにこまめな水分補給をしましょう。

このように、かぜはセルフケアが必要な病気です。ここで、今一度かぜの症状とはどのようなものであったかということを思い出してみましょう。「急に咳、鼻水、のどの痛みが約24時間程度で同じくらいの強さで出てくる」というのが、かぜの特徴的な症状でした。しかし、対症療法やセルフケアを行っても症状がよくならない場合は、かぜではない可能性があります。

「かぜだと思ったのに」-かぜのような症状を呈する他の疾患とは

かぜと症状が似ており、鑑別しなければならない他の病気には、アレルギー性鼻炎やインフルエンザ、急性細菌性副鼻腔炎、細菌性扁桃腺炎、急性喉頭蓋炎、百日咳そして肺炎などがあげられます。これらはかぜの症状と一部似ているものもあるので、間違えることはありえます。

このほか、かぜのような症状だと感じやすい、予想だにしなかった重篤な病気が隠れていることもあります。実際の例をいくつか紹介しましょう。

例えば、軽い咳の症状があり、少し呼吸が苦しいと訴えていた70代の男性がかかっていた病気は、「心不全」でした。また、だるさと微熱が長引くので病院に行った20代男性が、「急性肝炎」と診断されたという例もあります。他にも、熱が出たので病院へ行った40代の女性が実は「腎盂腎炎」だったということもありました。のどのあたりが痛いのでかぜだと思ったという60代の女性は、病院で「心筋梗塞」であったという診断を受けました。

どれも怖い病気と思って心配になりますが、丁寧に“3症状チェック“をしてみるとどれも3症状はそろってはおらず、風邪ではないことに気がつくことは医療者からは実はそれほど困難ではありません。

危険な病気を見逃さないためにも「かぜの定義」は重要である

このような大きな病気とかぜを患者側で区別できない理由には、やはりかぜの定義が曖昧であるという背景があります。これは医療者に対してもいえることです。かぜの定義が曖昧だと、患者側がかぜを疑って受診し、そのように伝えた場合にかぜ以外の病気を見逃してしまう可能性があるのです。ですから、記事1「かぜの定義とは?他の病気と見分けるために。」から繰り返し述べてきたように、「自然によくなる上気道のウイルス感染」というかぜの定義を知っておくことが大切なのです。

病院を受診したときに、患者さんと医療者の両者がそれぞれに「かぜである」と思い込んでしまうことは避けなければなりません。そのため、医療従事者は患者さんの症状をよく聞き、かぜの症状を鑑別することが肝要です。

また、この記事を読まれている読者の皆さんも、薬局でOTC医薬品を購入する際には「本当に自分の症状はかぜによるものなのか」ということを、かぜの定義に照らし合わせて今一度ぜひ考えてみてください。そして、かぜと判断できるならばすべて医療機関を受診するのではなく、セルフケアとして自宅でゆっくり休むことも一つの選択肢にしていただけたらと思います。

*本記事は岸田直樹先生の著書「総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな!」を参考にしています。