概要
急性喉頭蓋炎とは、気管の入り口にある喉頭蓋と呼ばれる箇所が主に細菌感染によって腫れてしまう病気です。
喉頭蓋は、飲食物が気管に入り込むことがないように飲食物の流れを左右に分け、飲食物が正しく食道へ流れるように誘導する役割を担っています。急性喉頭蓋炎は、急激に危険な呼吸困難を引き起こし命に関わることもあるため、早急に治療を行うことが大切です。
原因
急性喉頭蓋炎の原因の多くは、インフルエンザ菌などによる細菌感染です。インフルエンザ菌b型(Hib)に対するワクチンが広まったことで、小児の患者は激減しました。
感染以外の原因としては、糖尿病や自己免疫性疾患などの病気、頸部への放射線照射などの治療、さらには喫煙などが関与していることがあるといわれています。
さらに、火災による気道のやけどや薬剤によるアナフィラキシーショック、魚の骨などの異物による刺激が発症の原因になることもあります。
症状
急性喉頭蓋炎は感冒に続発することが多く、初期症状としては発熱やのどの痛み、ものの飲み込みにくさなどがあります。
進行すると、嚥下時痛(飲み込むときの、のどの痛み)が強くなり、飲食物だけではなく、唾液を飲みこむことができないほどの痛みを訴えます。喉頭蓋の腫れが強くなると、くぐもった声となり、呼吸も苦しくなります(呼吸困難)。
息苦しさにも段階があり、はじめのうちは息を吸う際にゼーゼー、ヒューヒューといった音がなるような症状が現れます。それらの症状は急速に進行し、処置が遅れた場合には窒息死に至る可能性もあります。症状が出現してから1日未満で呼吸困難に陥る、劇症型といわれる危険な病態もあることから、医療機関を受診し、速やかに適切な診断と治療を受ける必要があります。
検査・診断
急性喉頭蓋炎が疑われる場合に用いられるのは、一般的に喉頭ファイバースコープ検査です。また、補助的な検査として頸部造影CT検査や血液検査などが選択されることもあります。
のどの強い痛みがあるにもかかわらず、口腔内所見として中咽頭の炎症所見に乏しい(患者の訴えと口腔咽頭所見の乖離)場合には喉頭蓋炎が疑われます。喉頭蓋炎が疑われる場合には、急性喉頭蓋炎であるかを確認するために喉頭ファイバースコープ検査を行います。また、患者の症状や状態に応じて頸部造影CT検査や血液検査が行われることもあります。
喉頭ファイバースコープ検査
喉頭ファイバースコープ検査とは、喉頭蓋を検査するときに用いられる一般的な方法で、胃カメラよりも細いファイバースコープを鼻から挿入して行う検査です。喉頭蓋の炎症や腫れの状態・程度、そして空気の通り道が十分確保されているかを観察し、確定診断を行うことができます。
なお、なんらかの理由で喉頭ファイバースコープ検査が行えない場合には、X線検査で喉頭蓋の腫れの状態を確認することもあります。
頸部造影CT検査
頸部造影CT検査とは、喉頭蓋周辺の様子を細かく観察することができる検査です。
頸部を触ったときの明らかな痛みや腫れのような症状がみられる場合に用いられることがあります。急性喉頭蓋炎の診断に加え、合併していることもある扁桃周囲や頸部の膿瘍の診断にも役立ちます。
血液検査
急性喉頭蓋炎における血液検査とは、炎症がどのくらい起こっているのかを確認するために行われる検査です。白血球数や炎症の程度の目安となるタンパク質の一種であるCRPの数値を確認するために用いられます。さらに、糖尿病があると病気が重症化しやすく、また副腎皮質ステロイドを用いることで血糖値が変動する場合があるため、血糖値やHbA1cといった項目の検査も行います。
治療
急性喉頭蓋炎は、進行すると窒息して命に関わる状態に陥るリスクがあります。したがって、診察を受けた段階では症状が軽い場合であっても入院での治療が基本です。そのうえで、抗菌薬や副腎皮質ステロイドを用いた点滴を行いますが、進行している状態では気道の確保や膿瘍を開放する手術治療が必要となることもあります。
一般的には4〜5日程度で改善する傾向がみられますが、症状が重い場合には改善までに2週間程度かかります。
薬物療法
抗菌薬や副腎皮質ステロイドを点滴して喉頭蓋の粘膜の炎症や腫れを抑えます。また、副腎皮質ステロイドに粘膜を収縮させるアドレナリンを合わせた薬剤を、ネブライザーを使って吸入することもあります。
手術治療
喉頭蓋の腫れがひどく、窒息の恐れがある場合に選択されるのが緊急気管切開術です。
緊急気管切開術では、外科的な治療による気道確保を目的としています。また、頸部造影CT検査などで扁桃周囲や頸部に膿瘍が見つかった場合には、切開排膿術といわれる手術を検討します。
医師の方へ
急性喉頭蓋炎の詳細や論文等の医師向け情報を、Medical Note Expertにて調べることができます。
「急性喉頭蓋炎」を登録すると、新着の情報をお知らせします
関連の医療相談が13件あります
急性喉頭蓋炎の緊急性に関して
患者は19歳女性です。 3日ほど前、急性喉頭蓋炎で救急車で搬送されました。 救急車到着時点で心拍数低下、意識低下が起こっていたそうです。 車内で挿管、気管支拡張、高濃度酸素の処置を施されました。 救急隊いわく、もう少し遅れていれば窒息死とのことで、本来であれば入院、切開をするべきとのことでした。 しかし、患者の親が入院拒否を申し出たため処置後に帰宅。 本人に入院拒否の意思はありませんでした。 その後症状が治まらず、現在、声が出せない、喉の腫れや出血といった症状が出ています。 呼吸も浅く、水分すら飲み込めない状態です。 再診をすすめ、病院に行かせたのですが、診断結果は炎症が起こっているから様子見とのこと。 これだけの症状なのに様子見だけで、窒息のリスクはないのでしょうか? また、セカンドオピニオンとして別な病院で診断を受けさせた方が良いのでしょうか?
喉の下が晴れる
28日から顎の下の方が腫れ始め、病院へ(総合内科)行って血液検査とCT検査を行った。薬を処方されたが喉が腫れ続けている。 31日の今日では喉が腫れてた場を呑み込むのも痛く、のどが圧迫された感じがする。 28日から抗生物質を飲み続けてるが全く聞いていない様子。 今は腫れがひどくなり、舌が押し上げられているような感じがする アドバイスをください
教えてください
昨日風邪で咳と鼻水、喉の痛みがあり耳鼻科に行った所喉は対した事はなくて鼻は赤くなってると言われました。でも夜になると咳がひどく出るし飲み物も飲むのも痛くて辛いです。朝起きたら声が出なくてはじめてのことでビックリしてます。原因は何でしょうか?もう一度同じ耳鼻科に行ったほうがいいですか?それとも他のところに行ったほうがいいですか?寝てても咳で苦しくておきます。たんもでます。声は出るようになるのでしょうか?
繰り返す喉の痛みについて
この数ヶ月頻繁に喉に痛みや違和感があります。熱は出ません。大抵は市販薬やのど飴で数日経てばよくなっていました。 しかし、今月になってから酷く、耳鼻科で薬をいただいて良くなっても、薬を飲み終わって数日するとまた痛みが出てくるというのを繰り返していて、段々痛みが酷くなっています。コロナのこともあり、生活に支障をきたすようになってきました。 9月に内視鏡で診て貰った際には、上咽頭に膿があった以外には特に問題はないようでした。日頃から喉を乾燥させないようにのど飴をなめたり、加湿器を使ったりと気をつけているのですが…。なぜこのように繰り返すのでしょうか? また、以前から鼻水が喉に流れてきている気がしている(実際喉を見ると鼻水のようなものがついていることがあります。)のと、鼻が片方ずつ詰まるのですが、鼻をかんでも出てきません。こういったことも原因になりますか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。