ちふす

チフス

大腸・小腸

目次

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概要

チフスとは、チフス菌(Salmonella typhi)やパラチフス(Salmonella paratyphi)により引き起こされる細菌感染症を指します。発熱や下痢、発疹を認める疾患ですが、下痢などの症状が目立たずに発熱症状が前面に出ることも多く、病気を疑わなければ診断が遅れるありうる疾患です。

なおチフスの病原菌である「サルモネラ」に関連して、食中毒が生じることもあります。しかし、食中毒に関連したサルモネラ菌は、チフスを引き起こすサルモネラとは別のタイプのものであり、臨床症状も大きく異なるため、混乱しないように注意が必要です。

発症例の多くは東南アジアや中南米、アフリカなどの発展途上国で多くみます。チフスとパラチフス両者を合わせて年間推定で2,800万人の感染者がいるといわれており、うち20万人以上の方が亡くなっていると考えられています。

日本においてチフスは3類感染症に指定されています。国内発症例は毎年30件前後の報告例があり、多くは海外渡航者ですが、渡航歴のない方においても発症例があります。このことは、国内でも病気を発症しうる可能性を示唆しており、注意が必要な疾患であると考えられています。 

原因

チフスは、チフス菌(Salmonella typhi)やパラチフス(Salmonella paratyphi)原因となり引き起こされる細菌感染症です。チフス菌やパラチフスは、人にのみ感染を起こしますが、感染者すべてが症状を呈する訳ではなく保菌者となる場合もあります。

チフス菌やパラチフスは糞便中に排泄されることになり、細菌で汚染された食べ物や水などを摂取することで感染は拡大します。こうした感染様式をとることから、衛生環境が悪い地域ほどチフス症例は多い傾向にあります。

腸管に摂取された病原体は、腸管粘膜に存在する「M細胞」と呼ばれる細胞内に入り込みます。その後マクロファージと呼ばれる細胞にうつり、リンパや血液の流れに乗って病原体は全身に拡散し、全身症状を引き起こすようになります。また、胆汁の中にも病原体は潜むことが知られており、保菌者においては胆汁内に菌が生息しています。

症状

チフス菌やパラチフスを摂取した後、6〜30日の潜伏期間を経て症状が出現します。発熱が代表的な症状ですが、インフルエンザの時のような急激な高熱を呈する訳ではありません。日にちを経るにつれて徐々に熱のベースはあがり、数日の経過で39℃以上になります。

また終日熱が高いわけではなく、日内変動があることも特徴のひとつとして挙げることができ、夕方から夜にかけて体温は高くなります。さらに、熱が出ると脈も速くなるのが一般的ですが、チフスにおいては熱の割には脈が緩やかであることも知られています(比較的徐脈と呼びます)。

発熱の経過が特徴的ですが、そのほか、下痢や便秘をみることもあります。腸管に寄生する細菌であり胃腸炎症状を来すように想起されるかもしれませんが、下痢の頻度は必ずしも高くはなく、むしろ便秘になる方もいらっしゃいます。

発症して2週間ほど経過すると胸やお腹を中心に発疹が出現することもあり、「バラ疹」と呼ばれます。また同時期からは、腸管出血や腸穿孔といった重篤な合併症を来すこともありえます。無治療の場合の経過としては、高熱が1か月ほど持続して症状は改善するようになります。

検査・診断

チフスの診断は、便や血液、胆汁などを用いた培養検査で病原体を同定することからなされます。古典的にはWidal反応と呼ばれる方法を用いて、チフスを確定することもあります。

Widal反応では、チフス菌に特徴的なタンパク質である「O抗原」や「H抗原」と呼ばれる抗体を測定するのですが、必ずしも陽性率は高くありません。しかし安価に行える検査であり、発展途上国を中心に現在でも使用される検査方法です。

治療

チフスでは、ニューキノロン系やセフェム系の抗生物質を用いて治療が行われます。地域によって抗生物質の効きが異なるため、状況に応じて使用する抗生物質を決定します。たとえば、チフスの治療に際してはニューキノロン系が第一選択として使用されることが多いのですが、インドにおけるチフスでは本薬剤に対して効きが悪い細菌が多いことも知られています(耐性と呼びます)。

チフスに対してはワクチンによる予防接種が有効であり、チフスの流行地域へ渡航予定がある場合には接種を検討することが推奨されています。ワクチンの種類には飲み薬と注射薬があります。日本においては未承認であり、どの医療施設でも接種可能という訳ではありません。渡航に際してワクチンを希望される際には、輸入ワクチンを取り扱うクリニックへの相談が必要です。

ワクチンによる予防効果は100%ではないため、海外渡航中には出来る限りの感染予防策を講じることが大切です。病原体であるチフス菌やパラチフスは、食べ物や水、氷などを介して感染します。調理状況がわからない食べ物、加熱が不十分な食べ物などについては摂取を避けることが重要です。

また、水を摂取するに際しても可能な限りミネラルウォーターを使用することが大切です。一般的な感染症予防策に通じる点ではありますが、食事の前には手洗いをしっかり行うことも感染予防のためには重要になります。

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