ちふす

チフス

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

チフスとは、チフス菌(Salmonella typhi)やパラチフス菌(Salmonella paratyphi)による細菌感染症です。発熱や下痢、発疹を認めますが、下痢などの症状が目立たずに発熱症状が前面に出ることも多く、病気を疑わなければ診断が遅れることがあります。

なお、チフスの原因菌と同じサルモネラ属の菌により食中毒が生じることもありますが、これらは別のタイプであり、臨床症状も大きく異なります。

チフスは、東南アジアや中南米、アフリカなどで多くみられます。チフスとパラチフス両者を合わせて年間推定で2, 200万人の感染者がいるといわれており、うち20万人以上の方が亡くなっていると考えられています。

日本ではチフスは3類感染症に指定されています。国内発症例は毎年30件前後で多くは海外渡航者ですが、渡航歴のない方の発症例もあります。

原因

チフスは、チフス菌やパラチフス菌による細菌感染症です。チフス菌やパラチフス菌は、人にのみ感染しますが、感染しても発症せず保菌者となる場合もあります。菌は糞便中に排泄され、汚染された食べ物や水などを摂取することで感染が拡大します。

腸管に入った病原体は、腸管粘膜に存在するM細胞内に入った後、マクロファージと呼ばれる細胞にうつり、リンパや血液の流れに乗って全身に拡散して、全身症状を引き起こします。また、病原体は胆汁の中にも潜むことが知られており、保菌者においては胆汁内に菌が生息しています。

症状

菌を摂取した後、6~30日の潜伏期間を経て症状が出現します。発熱が代表的な症状ですが、インフルエンザのときのような急激な高熱を呈するわけではありません。日を経るにつれて徐々に熱があがり、数日で39℃以上になります。発熱には日内変動があり、夕方から夜にかけて高くなります。

熱が出ると脈も速くなるのが一般的ですが、チフスの場合、熱の割には脈が緩やかであることも知られています。

そのほか、下痢や便秘、胸やお腹を中心にバラ疹と呼ばれる発疹がみられることもあります。発症後2週間ほど経過して、腸管出血や腸穿孔(せんこう)(穴があく)などの重篤な合併症を来すこともあります。

無治療の場合、高熱が1か月ほど持続して症状は改善するようになります。

検査・診断

チフスでは、問診にて長引く発熱などの症状や、過去2か月以内の海外渡航歴などを確認します。

確定診断は、便や血液、胆汁などを用いた培養検査で病原体を確認することからなされます。古典的にはWidal反応と呼ばれる方法によりチフスを確定することもあります。Widal反応では、チフス菌に特徴的なタンパク質を測定します。

また、効果の高い抗菌薬を特定するための検査が行われることもあります。

治療

チフスでは、ニューキノロン系やセファロスポリン系の抗生物質による治療が行われます。地域によって抗生物質の効きが異なるため、状況に応じて使用する抗生物質を決定します。たとえば、チフスの治療ではニューキノロン系が使用されることが多いのですが、東アジアでは本薬剤の効きが悪い細菌が多いことが知られています(耐性と呼びます)。

予防

チフスにはワクチンによる予防接種が有効で、飲み薬と注射薬がありますが、日本では未承認であり、どの医療機関でも接種可能というわけではありません。流行地域への渡航に際してワクチンを希望される際には、輸入ワクチンを取り扱う医療機関への相談が必要です。

また、海外渡航中にはできる限りの感染予防策を講じることが大切です。チフス菌やパラチフス菌は、食べ物や水、氷などを介して感染します。調理状況がわからない食べ物、加熱が不十分な食べ物などは摂取せず、可能な限りミネラルウォーターを使用することが大切です。

一般的な感染症予防策ですが、食事の前には手洗いをしっかり行うことも重要です。

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