概要
チフスとは、腸チフスとパラチフスを指す感染症の総称です。東南アジアや南アジアなど衛生水準の低い国での罹患率が高く、世界では1年間で腸チフスに2,690万人、パラチフスには540万人が感染しているといわれています。国内での発症例はほとんどが海外から持ち込まれたケースで、年間20〜30症例ほどの発症が報告されています。
チフスは感染から7〜14日程度の潜伏期間を経て、高熱を伴い発症します。発熱時には一時的に背中や胸にピンク色の発疹(バラ疹)が現れることがあり、そのほかに頭痛や全身の倦怠感などの症状がみられます。発症早期に適切な治療を受ければ比較的予後は良好ですが、重症の場合には意識障害や腸穿孔により腸管出血を生じる恐れもあり、注意が必要です。
チフスは日本の感染症法でコレラや細菌性赤痢と同じ3類感染症に指定されており、診察した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要があります。また、学校保健安全法では第3種の感染症とされ、医師によって感染の恐れがないと確認されるまでは学校への出席が停止されます。
原因
腸チフスはチフス菌、パラチフスはパラチフスA菌による感染が原因です。保菌者の尿や便に汚染された食物や水などを摂取することによって感染します。また、胆石症*の人が感染した場合は胆嚢に菌がたまり、便の中に排菌することで感染源となる可能性があります。
チフスに感染する可能性が高い国は東南アジアや南アジア、アフリカ、カリブ海、中央アメリカ、南アメリカなど比較的衛生水準の低い国で、特に南アジアでは罹患率が高いといわれています。
*胆石症:肝臓で作られた胆汁(たんじゅう:脂肪やタンパク質に対する消化液)の成分が、胆管を通り胆嚢に蓄えられるまでに何らかの原因で固まって胆石が生じ、腹痛や炎症を引き起こす病気。
症状
感染後、7〜14日の潜伏期間を経て高熱を出し発症します。頭痛や全身倦怠感、便秘、バラ疹などの症状がみられることも特徴です。
チフスでは以下の3つが代表的な特徴とされていますが、これらの出現する確率は30~50%とあまり高くありません。
- バラ疹……背中や胸に現れるピンク色の発疹
- 比較的徐脈……高熱にもかかわらず、脈が比較的ゆっくり(徐脈)である状態
- 脾腫……脾臓が腫れて大きくなる
なお、重症の場合には、意識障害や腸穿孔をきたすこともあります。
検査・診断
長引く熱や、発展途上国からの帰国後にどの臓器に感染しているかが不明なまま高熱をきたす場合には、マラリアやデング熱とともにチフスが疑われます。
確定診断には血液や尿、便などの複数の検体を培養し細菌を特定する細菌学的検査が行われます。骨髄を採取する骨髄培養検査は体への負担が大きいですが、検出率が80~90%と高いことが特徴です。
治療
腸チフス、パラチフスともに、内服や点滴などの抗菌薬を用いた治療が行われます。
ニューキノロン系や第三世代セファロスポリン系、アジスロマイシンなどが用いられますが、どの抗菌薬も全ての症例で効果が期待できるわけではありません。菌の種類や流行地域によって抗菌薬の効き目が異なるため、治療前に血液培養検査を行い、検出された菌と抗菌薬との感受性を調べたり、状況に応じて使用する薬剤を調整したりして抗菌薬が決定されます。
なお、適切な抗菌薬を使った場合でも解熱までには数日かかることがあります。また、治療が終わっても再発の可能性や排菌の可能性があるため注意が必要です。
予防
チフスの予防には、予防接種や飲食時の感染対策などが挙げられます。
予防接種
腸チフスの感染予防のために、世界的にワクチン(不活化ワクチン、弱毒性ワクチン)が実用化されています。しかし国内ではいずれも未承認で、接種できる医療機関が限られています。職業などによりチフスの罹患率が高い国に渡航する予定がある場合にはワクチンの接種が推奨されるケースがあるため、渡航医学を専門とした医師や産業医などに相談してみましょう。
なお、パラチフスに対するワクチンは今のところ日本国内では流通しておらず、腸チフスのワクチンにパラチフスの感染を予防する効果はありません。
飲食時の感染対策
チフスは生水や生野菜、生肉などを摂取することによって感染するケースがあります。発展途上国で飲食する際には十分に加熱調理されたものを食べるようにし、水は一度沸騰させるほか、ペットボトルやビンに入ったミネラルウォーターを飲むようにしましょう。
また、飲食の前に十分な手洗いをすることも重要です。
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