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良性卵巣腫瘍の原因 ~多くは不明だが、子宮内膜症など女性器の病気を持つ人は注意を~

良性卵巣腫瘍の原因 ~多くは不明だが、子宮内膜症など女性器の病気を持つ人は注意を~
明石 祐史 先生

札幌白石産科婦人科病院 産婦人科 院長

明石 祐史 先生

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良性卵巣腫瘍(りょうせいらんそうしゅよう)の種類はいくつかあり、代表的なものに卵巣子宮内膜症性嚢胞(らんそうしきゅうないまくしょうせいのうほう)チョコレート嚢胞)、嚢胞腺腫、成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)などが挙げられます。それぞれに原因も異なるため、ここでは良性卵巣腫瘍の原因、症状や治療法などについても解説します。

良性卵巣腫瘍の種類としては以下のようなものがあり、それぞれ原因が違うと考えられています。

  • 卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞):子宮内膜症が原因で卵巣の中にチョコレートのような古い出血がたまっている腫瘍
  • 成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫):皮膚や髪、歯などの組織がたまっている腫瘍
  • 嚢胞腺腫:水や粘液がたまっている腫瘍

良性卵巣腫瘍の原因は、種類にもよりますが原因不明のものが多いとされています。

チョコレート嚢胞は卵巣にできる子宮内膜症です。子宮内膜症は子宮の内膜やそれに似た組織が子宮以外で発育・増殖する病気です。卵巣に子宮内膜症が発生する原因としては、腹膜病変が卵巣表面の皮質と入り込んでしまう説、卵巣外偽嚢胞である説などがあります。チョコレート嚢胞は血液の貯留によって増大し、時には内容液が漏れ出るような破裂を起こすこともあります。さらに、40歳以上、4cm以上のチョコレート嚢胞ではがん化する確率が高くなっていくことが知られています。

皮様嚢腫は何らかの原因で、受精していないにもかかわらず卵子が分裂を始め、腫瘍の中に皮膚や髪、歯などの組織がたまって増大するものです。皮様嚢腫はまれにがん化することがあります(1~2%)。特に、閉経後に卵巣が大きくなった場合はがん化の可能性もふまえて精密検査が必要となることがあります。

良性卵巣腫瘍の治療法は種類や大きさによって異なり、腫瘍が小さく悪性の可能性が低い場合は定期的に超音波検査などを行い、経過観察が行われることがあります。さらに、チョコレート嚢胞の場合は腫瘍の縮小を目的に、黄体ホルモンや低用量ピル、GnRHアゴニストといったものを用いるホルモン療法が行われることもあります。

手術方法は開腹手術と腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)の2種類に大別され、悪性の可能性が考えられる場合は開腹手術を、それ以外の場合は腹腔鏡下手術を行うことが一般的です。腹腔鏡下手術とは、腹部に小さな穴をいくつか開け、そこからカメラと器具を入れて手術する方法です。

また、卵巣腫瘍はサイズが大きくなってくると茎捻転(けいねんてん)(ねじれ)や破裂が起こって急激な腹痛が現れることがあり、その場合は緊急手術が必要となることもあります。

術後は症状がなければ生活に制限はなく、術後2週間程度で社会復帰できることが一般的です。ただし、閉経前の卵巣子宮内膜症性嚢胞で今後の再発が心配な場合は、嚢胞の縮小が期待できる経口避妊薬などを服用し、予防する場合もあります。

良性卵巣腫瘍は症状がないことも多いとされていますが、子宮内膜症など女性器疾患を持つ人は発症する可能性があるため、定期的な検診を受けるなど日ごろから早期発見ができるように心がけるとよいでしょう。

また、治療法は多岐にわたるため、まずは検査を行い腫瘍の状態や良性、悪性かどうかなどを判断し、今後の妊娠希望も考慮したうえで治療法が選択されます。そのため、治療の際は医師に希望や不明点を伝え、納得したうえで治療を受けられるようにしましょう。

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