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卵巣嚢腫とは? 妊娠とのかかわりについても解説

卵巣嚢腫とは? 妊娠とのかかわりについても解説
大石 元 先生

国立国際医療研究センター病院 産婦人科 診療科長

大石 元 先生

目次
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子宮に2つある卵巣は、妊娠に必要な卵子を放出(排卵)するなど、女性の体において大きな役割を担っています。卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)とは卵巣に生じる良性腫瘍(りょうせいしゅよう)であり、皮様嚢腫(ひようのうしゅ)やチョコレート嚢胞(のうほう)など、さまざまな種類があります。卵巣嚢腫の中には妊娠と関連するものもあり、卵巣嚢腫があることによって不妊につながるケースもあります。

今回は、卵巣嚢腫の治療に携わっていらっしゃる国立国際医療研究センター病院 産婦人科診療科長の大石(おおいし) (はじめ)先生に、卵巣嚢腫の概要や、妊娠とのかかわりについてお話をお伺いしました。

卵巣とは、子宮の両脇にそれぞれ1つずつある臓器です。卵巣の主なはたらきには、卵子の放出(排卵)と、エストロゲンやプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンの分泌があります。

卵巣は2つあるため、病気による摘出など何らかの原因で片方の卵巣がなくなったとしても、もう片方の卵巣によって排卵や女性ホルモンの分泌が行われます。

画像:Pixta
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卵巣嚢腫とは、卵巣に生じる良性腫瘍です。卵巣嚢胞と呼ばれることもあります。タイプによっても異なりますが主に20~30歳代の女性に多く現れるでしょう。

液状の内容物が入った袋状の病変であることが特徴で、内容物によってさまざまな種類に分けられます。主な種類として、皮様嚢腫、チョコレート嚢胞漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)、粘液性嚢胞腺腫などが挙げられます。

皮様嚢腫とは、袋状の病変の内部に皮膚や毛髪、歯などの組織が貯留したものを指し、さまざまな年代で生じる可能性があります。なお、皮様嚢腫の原因は十分に明らかになっていません(2020年8月時点)。

チョコレート嚢胞とは、子宮内膜症によってチョコレートのような出血が病変の内部に貯留したものを指します。チョコレート嚢胞の原因は、子宮内膜症と呼ばれる病気です。子宮内膜とは、受精卵が着床する場所、つまり妊娠する場所です。妊娠しない場合には、剥がれて月経血として体外に排出されます。これがいわゆる“生理”と呼ばれる現象です。

子宮内膜症とは、子宮内膜が本来あるべき子宮以外の場所に発生してしまう病気です。子宮内膜が卵巣にできると古い血液が溜まってしまいチョコレート嚢胞となります。なお、確率は低いですがチョコレート嚢胞は、がん化する可能性があります。

病変の内部に液体が貯留したものを漿液性嚢胞腺腫、粘液が貯留したものを粘液性嚢胞腺腫と呼びます。漿液性嚢胞腺腫や粘液性嚢胞腺腫の原因は十分に明らかになっていません(2020年8月時点)。

卵巣嚢腫を生じていたとしても無症状であることが多いです。そのため、何らかの検診の際に偶然発見されるケースも少なくないでしょう。

ただし、卵巣嚢腫が大きくなることで腹部の圧迫や、卵巣がねじれたり病変が破けたりすることで腹痛が現れることがあります。特に皮様嚢腫では、卵巣全体がねじれること(卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん))があります。卵巣嚢腫茎捻転が起こると強い痛みを伴うため、救急での治療を行うことも多いです。

画像:Pixta
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卵巣嚢腫は、主に超音波検査とMRIで、ある程度確定診断を行うことが可能です。病変自体は超音波検査で確認することができますし、嚢腫の内容物を調べるためにはMRIが有効です。

なお、可能性は低いですが病変が悪性ということもあります。そのため、悪性の可能性が考えられるときには、手術で取り出した病変の性質を調べる術中迅速病理診断*を行うこともあります。

*術中迅速病理診断:手術の際に細胞や組織の一部を採取し、腫瘍が悪性か良性かなどを判断する診断

卵巣嚢腫は卵巣にできる病変ということもあり、妊娠への影響を心配される方もいらっしゃるかもしれません。卵巣嚢腫は良性腫瘍であるため、病変そのものが妊娠環境に悪影響を与えるわけではありません。たとえば、皮様嚢腫、漿液性嚢胞腺腫や粘液性嚢胞腺腫があったとしても、不妊につながる可能性は低いと考えられます。

ただし、チョコレート嚢胞は不妊につながると考えられます。特に、ある程度の大きさになると、妊娠環境を悪化させる可能性が高いといえます。次のページで詳しくお話ししますが、チョコレート嚢胞があり妊娠を希望される場合には、治療の方法やタイミングの選択が大切です。

お話ししたように、皮様嚢腫、漿液性嚢胞腺腫や粘液性嚢胞腺腫の原因は十分に明らかになっていないため、予防は難しいと考えられます。ただし、チョコレート嚢胞は、ある程度予防することができるでしょう。

チョコレート嚢胞を予防するためには、子宮内膜症をできる限り防ぐことが大切です。子宮内膜症を防ぐためにはピルの服用をおすすめしています。

特に、いわゆる“生理痛”と呼ばれる月経の際に起こる腹痛が重い場合には注意が必要です。子宮内膜症の患者さんの多くが月経痛を訴えるからです。子宮内膜症は、月経血が腹腔(ふくくう)内部に逆流することによって起こると考えられています。そのため、月経の回数が増えることによって子宮内膜症が起こる可能性が高くなることが分かっています。昔と比べて出産回数が減少していたり、妊娠・出産も高齢化していたりする現代では、月経の回数が増える傾向にあるため子宮内膜症になる可能性が高いといえます。

ピルの服用によって月経をコントロールしながら子宮内膜症の予防につなげてほしいと思います。

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