卵巣とは、子宮の左右に1つずつある2~3cm程度の臓器で、女性ホルモンの分泌や卵子を放出する役割を持っています。ここにできる腫瘍を卵巣腫瘍といい、良性・悪性(卵巣がん)・中間の境界悪性の3種類に大別されるため、卵巣腫瘍の診断を受けても必ずしも卵巣がんであるわけではなく、むしろ卵巣腫瘍の8割は良性といわれています。
卵巣腫瘍は特に初期では症状が現れにくいため、異変を感じたときには進行していることもあります。そこでここでは、卵巣腫瘍の症状や予防、検査について詳しく解説します。
卵巣腫瘍は良性か悪性かにかかわらず、特に初期ではほとんど自覚症状がなく、月経周期が乱れるようなこともないとされています。そのため、健康診断で腹部の超音波検査やCT検査を行った場合、子宮がん検診で超音波検査を行った場合に偶然発見されることがあります。
また、悪性の場合は下腹部にしこりの存在を感じる、お腹が張るといった感覚を覚えることがありますが、このような症状を感じる場合はすでにがんが進行していることもあります。さらにお腹の張りなども単に太っただけと思い込んでしまい、受診が遅れることも珍しくありません。
卵巣腫瘍は進行すると直径20cmもの大きさになることがあり、腫瘍が大きくなると症状が現れることがあります。その場合の症状としてはお腹の張りや下腹部の痛み、食欲低下、腫瘍が膀胱や腸を圧迫することによる頻尿や便秘などが挙げられます。また、リンパ管が圧迫されたり静脈血の戻りが悪くなったりすると、下肢のむくみや腹水の貯留もみられるようになり、妊娠中のようにお腹が前に突き出すほど大きくなることもあります。6cmを超える腫瘍では卵巣腫瘍茎捻転(腫瘍の付け根の捻じれ)や腫瘍の破裂が起こることもあり、この場合は下腹部に激しい痛みが現れ、緊急手術が必要となります。
悪性の場合は進行すると腹膜播種(お腹の中にがんが広がること)が生じることがあるほか、大網(胃から垂れ下がり、大腸小腸を覆う膜)、大腸、小腸、脾臓、横隔膜、後腹膜リンパ節などに転移してさまざまな症状が現れることもあります。
良性、悪性にかかわらず、卵巣腫瘍に対して早期発見に有効とされている方法は現時点で存在しません。現在ではさまざまながん検診が実施されており、それらは厚生労働省の指針にも定められていますが、卵巣がんにおいては指針で定められている検診がなく、科学的根拠のある検診方法も確立されていません。もっとも簡便とされるのは超音波検査で、腹部からの検査より婦人科での経腟、経直腸超音波検査のほうがより卵巣が見やすくなります。そのため、下腹部の痛みや張りなど気になる症状がある場合は婦人科の受診を検討するとよいでしょう。
卵巣がんの発生要因としては10%程度が遺伝によるものと考えられており、家系内に卵巣がんや乳がんにかかったことのある人がいる場合には注意が必要です。そのほかに排卵の回数が多いことも知られており、妊娠・出産経験がない、月経が早く始まり閉経が遅い、不妊治療で排卵誘発剤を使用していた女性や、子宮内膜症の診断を受けている方は卵巣がんのリスクがやや高いと自覚し、早めの受診を心がけるとよいでしょう。
症状があり受診した場合の検査としては、内診で子宮や卵巣の状態を見る、直腸診で直腸や周辺に異常がないか見る、超音波検査によって腫瘍の状態や位置などを見るといった方法が挙げられます。さらにCTやMRI、腫瘍マーカーを調べることで診断率が向上します。しかし、このような検査でも良性か悪性かを区別することが難しいこともあり、確定診断には腹水を検査してがん細胞の有無を調べることや、手術で採取した腫瘍の組織を調べる病理診断が必要です。
卵巣腫瘍は初期では症状が見られないことが多く、通常のがん検診や人間ドックで行われる子宮頸がん検診や内診、腹部超音波検査では発見されないこともあります。診断の入口は簡便な超音波検査からですので、下腹部の違和感など気になることがある場合はもちろん、できるだけ婦人科での定期検診を受けること検討するとよいでしょう。
札幌白石産科婦人科病院 産婦人科 院長
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