インタビュー

子宮筋腫や卵巣のう腫の手術——患者さんにとって安全で安心な腹腔鏡手術を目指して

子宮筋腫や卵巣のう腫の手術——患者さんにとって安全で安心な腹腔鏡手術を目指して
中村 元一 先生

福岡山王病院 名誉病院長

中村 元一 先生

この記事の最終更新は2016年02月27日です。

女性の社会進出や晩婚化、さらには高年齢での出産など、女性を取り巻く環境は大きく変わりました。それに伴い子宮筋腫子宮内膜症など婦人科疾患も増加傾向にあるようです。医療技術の進歩でからだに負担の少ない手術法が普及しています。とはいっても、重要なことは患者さんが安心して受けられるということです。

2009年の開院から2015年8月には腹腔鏡手術の症例数が5,000例を突破した福岡山王病院 名誉病院長の中村元一先生に、患者さんにとって安心できる腹腔鏡手術についてお話を伺いました。

子宮筋腫子宮内膜症、卵巣のう腫は、婦人科疾患の中でももっとも多くみられます。筋腫はできた位置や個数などによって症状が異なりますので、必ずしも全て治療が必要というわけではありません。

手術が必要かどうかは、症状によって判断します。筋腫が大きくても、子宮の外側にできる漿膜外筋腫はほとんど症状がないので、手術をする必要はありません。一方、月経の時の出血量が多くて貧血がひどいとか、生理痛が非常に重いなどで日常生活に困っているような時には手術を勧めます。そして、治療法の選択で決め手となるのは、これから子どもがほしいかどうかということです。

既にお子さんが何人もいて、子どもはいらないという方の場合、私は子宮の全摘を勧めます。その方が、症状が100%消失しますし、再発もありません。子宮頸がんや体がんの可能性もゼロになります。(頸部を残す術式を行っているし施設では頸がんの可能性が残りますが、福岡山王病院では全摘しますので、このような可能性はゼロになります。)さらに、更年期障害に行うホルモン補充療法も非常に楽に行うことができるなどのメリットが大きいと考えるからです。

一方、治療の後に子どもを希望される方には子宮を残す手術を行います。子どもがほしいのに他の施設で全摘を勧められたという方もたくさん来られます。中には筋腫が100個以上ある方もおられます。そんな場合でも、患者さんが子宮を残したいというのであれば、希望に応じて残す治療を行います。

福岡山王病院では、おなかをできるだけ切らない、からだにやさしい手術として腹腔鏡下手術を多く行っています。2009年に開院してから今年2015年の8月までに手術の症例数およそ5.000例を超えました。

腹腔鏡手術とは、おなかに0,5~1.5センチほどの穴を3~4か所あけ、そこから内視鏡を挿入して行う手術です。当院では通常、おなかの傷はおへそのくぼみに1か所と左右の下腹部に2か所のトータル3か所で行います。

内視鏡を挿入する位置

傷が小さいので、痛みが少なく、入院期間も短いため社会復帰が早いなどの利点があります。

基本的に、確認できる筋腫はすべて摘出しますが、10ミリ未満の小さなものは確認することが難しいため、摘出できない場合もあります。また逆に、筋腫の大きさが10センチ以上もあるようなものについては、腹腔鏡手術は行いません。ただし、10センチ以上の筋腫でも、手術の前にGn-RHアゴニストというホルモン剤を使用することで筋腫が小さくなることがありますので、最終的な筋腫の大きさが10センチであれば行います。

その他、筋腫の数が多い場合にも腹腔鏡手術の適応にはなりません。これまで最高で筋腫の数が144個という方がおられましたが、このように多数の筋腫がある場合は開腹手術を行います。また、癒着といって子宮と周辺の組織などがくっついて剥がすのが大変な場合なども、腹腔鏡手術の適応にはなりません。

これまで何千という多くの腹腔鏡手術を行ってきましたので、例えばたくさんの筋腫があっても取ることができるという自信はあります。しかし、無理に腹腔鏡手術を行うことはありません。患者さんにとって一番いい手術、患者さんにとって安全な手術が一番だと考えるからです。

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