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生理の量が多い原因には何があるの?~子宮や血液の病気、ホルモン分泌機能の異常によって生じている可能性がある~

生理の量が多い原因には何があるの?~子宮や血液の病気、ホルモン分泌機能の異常によって生じている可能性がある~
上田 和 先生

国際医療福祉大学三田病院 婦人科部長、国際医療福祉大学 産婦人科学教授

上田 和 先生

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一般的に生理の量(経血量)は20~140mlが標準だといわれており、140ml以上の場合は過多月経といいます。この場合、生理の量の多さに伴ってさまざまな悪い影響をもたらします。たとえば、貧血や動悸、立ちくらみなどの症状が引き起こされることがあるほか、衣服や寝具が汚れたり仕事に支障をきたしたりするなど、健康や生活の質を損なうこともあります。そのため、まずは原因を知り、適切な対策や治療につなげることが大切です。

生理の量が多い原因には、臓器そのものにがんが発症する器質的疾患の可能性が挙げられます。主に子宮筋腫子宮腺筋症、子宮がん(子宮(けい)がん、子宮体がん)などの子宮の病気が関与しているといわれています。検査や診断は、いずれも内診、超音波などによって行うことが一般的です。

子宮筋層にできる良性の腫瘍(しゅよう)のことです。症状は発生する部位や腫瘍の大きさによって異なりますが、主に生理の量が増えるほか、骨盤痛や圧迫感を伴うこともあります。

子宮内膜に似た組織が何らかの原因で子宮筋層内にでき、増殖する病気です。症状には生理の量が多くなるほか、子宮が大きくなるといったものがあります。

子宮がんには子宮頸部(しきゅうけいぶ)にがんが生じる“子宮頸がん”と、子宮体部にがんが生じる“子宮体がん”があります。初期には不正出血が現れるといった特徴的な症状があり、生理の量が多くなったと感じることもあるといわれています。

黄体機能不全(ホルモン分泌に関与する黄体がはたらかない状態)や無排卵性周期症(ホルモン分泌が不十分であるために排卵が伴わない生理〈月経〉がある状態)などのホルモン分泌機能に異常をきたすことによって、生理の量が多くなることがあります。なお、黄体機能不全や無排卵性周期症はストレスや年齢に伴って一時的に生じることもあり、好発年齢は思春期である10〜20歳代や閉経間近の40歳代後半以降に見られることが多いとされています。この場合の診断は、問診、基礎体温のチェック、ホルモン検査などによって行われます。

血液の病気によって生理の量が多くなることもあり、主に先天性血液疾患、血小板機能異常症、血液凝固障害などが挙げられます。

血小板機能異常症は、血が固まるのを助けるはたらきをする血小板が機能しないために血が固まりづらくなり、過剰に出血することがあります。

血小板機能異常症は、遺伝性と後天性のものがあり、肝硬変や腎疾患が原因となることもあります。また、脳卒中や心臓発作を予防する薬が血小板機能に影響を与えることもあるとされています。

血液凝固障害は、血が固まるのを助けるのに必要なたんぱく質が十分に作れない場合に生じるとされています。このたんぱく質は肝臓で作られるため、肝硬変や肝炎などの重度の肝疾患によって血液凝固障害が引き起こされるほか、血友病やビタミンK欠乏症なども原因となることがあります。

この場合は内診、超音波検査などの過多月経の検査に加えて血液検査を行うことによって、血液疾患が見つかることがあります。

生理の量が多い場合の治療法は、原因によって異なります。子宮筋腫子宮腺筋症などの子宮の病気が原因の場合は、まず薬物療法が行われ、症状が緩和されない場合は外科治療(手術)も検討されます。また、子宮がんの場合は最初から手術が検討されることが一般的ですが、手術の方法によっては妊娠するための機能が失われる可能性があるため、妊娠を希望する場合は事前に医師と相談する必要があります。

一方、ホルモンの異常に対してはホルモンの補充(主にピルの服用)などが検討されます。また、血液の病気に対しては原因となる病気に合わせた適切な治療が検討されます。

生理の量が多い場合はまず原因を明らかにするため、婦人科で適切な診断、治療を行う必要があります。特に子宮や血液に関する病気が原因の場合は、放置すると症状が悪化したりすることもあるため注意が必要です。ナプキンが1時間ももたないほど経血の量が多い、経血に血の塊が混じる、経血の量が多く健康や生活の質が損なわれているといった場合は、早めの受診を検討するとよいでしょう。

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