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インタビュー

患者さんにとっての低侵襲は医師にとっては高リスク——婦人科疾患の腹腔鏡手術

患者さんにとっての低侵襲は医師にとっては高リスク——婦人科疾患の腹腔鏡手術
中村 元一 先生

福岡山王病院 名誉病院長

中村 元一 先生

かつては子宮を摘出するか、残すかの選択肢しかなかった婦人科疾患。最近では、摘出するにしても温存するにしても、開腹術かおなかを開けない腹腔鏡手術かと選択肢は広がりました。さまざまな選択肢があるとはいっても、一番求められることはやはり安全であることに変わりありません。

からだにやさしく、しかも安心で安全な腹腔鏡下手術への取り組みについて福岡山王病院 名誉病院長の中村元一先生にお話を伺いました。

子宮筋腫子宮内膜症など、婦人科疾患で治療が必要となるのは、症状によってどの程度、日常生活に支障を来しているかというところがポイントになります。

筋腫は小さくても、できた場所によっては重い症状がでる場合もありますし、逆に大きな筋腫でも症状がないということもあります。患者さんの困り具合によって、手術などの治療の必要有無を判断します。また、治療が必要となった場合には、ご希望に沿った治療を行います。

福岡山王病院では、からだに負担の少ない腹腔鏡下手術を多数行っています。2009年に開院して以来、今年2015年の8月には症例数が5,000例を超えました。1週間に30例ほどの手術を行っていますが、これまで命にかかわるような重篤な合併症を起こしたことは1例もありません。患者さんにとっていい治療であり、なおかつ安全な治療を一番に考えて行っているからだと思います。

腹腔鏡手術は患者さんにとっては低侵襲で、からだに負担の少ないものですが、施術する医師にとっては、非常にリスクの高い手術です。いまでは手術時間も1時間程度ですみますが、腹腔鏡手術が始まったばかりの頃は、同じ手術でも3~4時間はかかっていました。当時は、腹腔鏡手術の途中で出血などを起こして開腹手術に切り替わることも少なくありませんでした。

子宮周辺の骨盤内には大腸や小腸、膀胱や尿管といった、からだにとって重要な機能に携わる臓器があり、手術中に損傷を与えると術後に機能障害を起こしてしまいます。また、特有な合併症で、子宮に穴があく子宮穿孔(せんこう)などを起こすこともゼロではありません。

福岡山王病院では外科や泌尿器科との連携を強化して、万が一何か起きた時には駆けつけてもらえる協力体制をとっています。もちろん、だからといって、何か起きてはいけませんし、極力、そうならないよう願っていますが、手術を行う上での安心感にはつながります。

腹腔鏡手術は、一部、妊娠中の方などを除いて、基本的には全身麻酔で行います。多い日には1日に10例ということもありますが、すべて麻酔科との連携の中で行います。福岡山王病院の病床数は199床しかありませんが、麻酔科の医師が10人在席しているという恵まれた環境にあります。麻酔科をはじめ手術室とも仲良く、連携もとれているからこそスムーズに手術ができるのです。

福岡山王病院には、他院から腹腔鏡手術の勉強にこられる先生もおられます。技術の習得には、数をこなす以外に方法はありません。現在、当院には日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医が6名いますが、いずれもベテランばかりです。

いまでこそ、周辺に腹腔鏡手術が可能な病院が増えてきましたが、以前はできる施設がそれほどありませんでしたので、当院に集中していました。福岡山王病院は総合病院ですが、福岡市のように病院がたくさんあるような地域では、全てを網羅しなくても専門に特化した技術の集約を行ってもいいのだと思います。

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