経血量が多いことを不安に思う方もいますが、ナプキンが1時間ともたないほどに経血量が多い、経血にレバー状の血の塊があるといった場合は、過多月経の可能性があります。過多月経の原因はさまざまですが、原因によっては早めに適切な治療を行う必要があるので注意が必要です。
本記事では過多月経の定義や原因、治療について詳しく解説します。
過多月経とは、月経時の出血が多いことで健康が損なわれている状態を指し、一般的に経血量が140ml以上の場合(標準値は20~140ml程度)に診断されることがあります。ただし、経血量を正確に測定することは難しいため、経血量による診断は血中の鉄分量などによって判断されることが一般的です。また、必要に応じて経血にレバー状の血の塊が含まれている、ナプキンの交換回数が多いといった主観的な指標も参考にされることもあります。
なお、過多月経に伴う特徴的な症状としては経血量が多いことによる貧血、動悸、立ちくらみなどが挙げられます。
過多月経の原因は主に子宮の病気、内分泌系の病気、血液の病気の3つのうちいずれかが関与しているといわれています。具体的には以下のとおりです。
過多月経の原因となる子宮の異常には主に、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、悪性腫瘍(がん)などが挙げられます。特に子宮筋腫では子宮の内側が変形することで、過多月経の症状が現れることが一般的です。これらの病気の好発年齢は30歳代以降とされており、過多月経以外に不正出血や強い生理痛などの症状が見られることもあります。
子宮の病気が疑われる場合、医療機関では内診、超音波検査などによって診断を行います。
*器質性疾患……臓器そのものにがんが発症している病気の総称
ホルモン分泌に異常がある場合に過多月経につながることがあります。主には黄体機能不全(ホルモン分泌に関与する黄体がはたらかない状態)や無排卵性周期症(ホルモン分泌が不十分であるために排卵が伴わない月経〈生理〉がある状態)が挙げられ、いずれも初経や閉経の時期のホルモン分泌が乱れやすいとされる、10〜20歳代の比較的若い方や40歳代の方に多いといわれています。
この場合、医療機関では問診と基礎体温、ホルモン検査などによって診断を行うことが一般的です。
*機能性疾患……直接的な異常は見られないが、何らかの症状が生じる病気の総称
そのほか、血液を凝固させる機能などに異常がある可能性も考えられます。血液に異常が生じる病気(白血病など)を発症している場合、出血を止めたり血を固めたりする機能にも異常が生じ、結果として過多月経につながることがあります。
この場合は内診、超音波検査などの過多月経の検査に加えて血液検査を行うことによって、血液疾患が見つかることがあります。
*内科的疾患……主に内科で診療が行われる病気の総称
過多月経の治療は、原因によってさまざまな選択肢があります。まず、子宮筋腫や子宮腺筋症といった子宮の病気の場合は、それぞれの病気に合わせた薬物療法が検討されます。主に処方される治療薬は子宮内膜の増殖を抑える低用量ピルや黄体ホルモン製剤、一時的に閉経状態にするGnRHアナログなどが挙げられます。しかし、薬物療法で効果が現れない、症状が強い、患者の希望があるといった場合には、手術で子宮や卵巣を摘出することもあるほか、子宮体がんの場合は一般的に最初から手術が検討されます。ただし、妊娠の希望がある場合は保存的治療(妊娠するための機能を残す治療)が可能な場合もあるため、あらかじめ医師に相談するとよいでしょう。
ホルモンの異常が原因の場合は、ホルモン補充が行われたり、排卵が起きていない場合には排卵誘発剤が用いられたりすることもあります。なお、年齢によっては一時的なホルモン分泌の乱れである可能性も考慮して経過観察で様子を見ることもあります。
血液疾患などが原因の場合は、その病気に合わせた適切な治療が行われます。
経血量が多いと感じても、長期間続くと慣れてしまい気に留めなくなることもあります。しかし、過多月経はその原因が何らかの病気である場合、放置すると病気の進行や不妊につながる可能性のある状態といえます。そのため、経血の量が多くナプキンが1時間ともたない、経血にレバー状の血の塊がある、月経過多に伴った貧血などの症状があるといった場合は、放置せずに早めに婦人科を受診しましょう。
国際医療福祉大学三田病院 婦人科部長、国際医療福祉大学 産婦人科学教授
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