病気の診断には画像診断が重要な役割を占めます。その中で超音波検査とは、体の表面から人の耳には聞こえない超音波を当て、体内の組織にぶつかってはね返ってきたエコー(こだま)を画像に映し出す検査で、エコー検査とも呼びます。
超音波検査は痛みもほとんどなく、CT検査のように被ばくを心配する必要もありません。またMRI検査より安価で済み、状況によってはMRIと同等の鮮明な画像を得ることができます。その使い勝手の良さから、産婦人科診療では内診と並んで重要な検査になっています。
超音波で検査できることは次の4つです。
1. 大きさと形
「5cmのつるつるした腫瘍」「7cmのごつごつした腫瘍」といったように、大きさと形を特定し、そこから診断を推定します。
2. 性状(性質と状態)
画面は白黒で構成されていますが、その色合いから腫瘍、出血、水分、脂肪分などの性状を判定します。その結果から、腫瘍が危険なものかどうかを判断します。
3. 血流
超音波の特徴で、「血の流れ」を見ることができます。腫瘍の良い・悪いを判断するときに使うこともありますし、産科超音波では胎児や胎盤の状態を観察します。
4. 動き
リアルタイムな動きを見ることができることも、MRI検査やCT検査にはない超音波検査の特徴です。特に産科の胎児超音波検査では非常に重要です。
産婦人科での超音波検査の方法は、大きく腹部にプローブ(超音波を発し、かつその反射波をキャッチする探触子)をあてる「経腹法」と、膣内にプローブを挿入する「経膣法」の2種類があり、使い分けられています。
お腹の表面にゼリーを塗り、プローブという超音波を送受信する機械を当てて、子宮や卵巣の状態を診る検査です。経腹法は、腹部の上で自由にプローブを動かすことで、さまざまな角度から観察することができます。
経腹法では、広い視野を得ることができるので、10cm以上の大きな対象を観察するのに適しています。具体的には、多発する子宮筋腫の総合的な評価、大きな卵巣腫瘍の性状評価、産科での胎児の発育計測や異常の発見などに用いられます。
経膣法は、細長いプローブを膣の中に挿入して調べる検査です。子宮や卵巣を至近距離で観察することができるので、鮮明な画像が得られるという利点があります。
経膣法は10cm未満の小さな対象の評価に向いていて、排卵予知評価、妊娠初期の評価、小さな卵巣腫瘍や筋腫の診断に用いられます。その一方で、広い視野を観ることができないため、大きな腫瘍の評価には不向きです。また、性交未経験の方の場合には痛みが強く、検査を行うことが難しい場合が多いです。そのため、性交未経験の方でどうしても必要な場合には、経直腸エコーや経会陰エコーが用いられることもあります。
記事1:内診と婦人科の検査について―内診とは? 検査の種類は?
記事2:細胞診とは―婦人科検診では必ず行う検査
記事3:おりもの検査(膣分泌物検査)とは―におい、量、かゆみ…おりものに異常を感じたら
記事4:超音波検査とは―その特徴、メリットは?
記事5:MRI検査とは―CT検査との違いについて
記事6:ホルモン検査とは―婦人科の重要な検査
記事7:組織診とは―痛いのはなぜ?細胞診との違いは?
山王病院(東京都) 名誉病院長
堤 治 先生の所属医療機関
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