「子宮頸がん検診(細胞診)で異常が発見されたので、組織診をしましょう」と医師に言われた時、その意味するところをすぐに理解することは難しいのではないでしょうか。細胞診と組織診。似ているふたつの単語ですが、大きな違いがあります。今回は組織診とはなにか、なぜ痛みや出血があるのか、また細胞診との違いはなにか、ご紹介します。
組織診と言う時の組織とは、細胞のかたまりのことです。そして組織診とは、名前の通り「細胞のかたまり」をとってきてみる検査のことです。
検査の仕方にも若干の違いがあります。細胞診は小さな細胞が採取できればよいため、こするような検査が多いです。一方で、組織診はかたまりを採取しないといけないため、けずるような検査が多いです。そのため、多少の痛みを伴ったり、少し出血することもあります。
検診で、なぜ細胞診と組織診が両方必要なのかと疑問に思う方は多く、実際に外来でもよく聞かれます。特に婦人科の場合、もともと診察が大変なうえに、組織診は細胞診に比べて痛みが強いので、そうした疑問が生まれるのも当然かもしれません。
しかし実は、がんや前がん状態の診断は全て「組織診」で行います。それは、組織(細胞のかたまり)と細胞の形ががんや前がん状態の診断の決め手になるからです。
がんや前がん状態診断の際は、組織診によって組織全体を見て、進展の度合いや悪性度の印象を把握し、さらに細かい部分を拡大して見て、個々の細胞を観察しながら行います。結果として手術が必要であれば、診断に応じた術式が選択されます。経過観察ができるものであれば診断に応じた経過観察期間をあけて再度検査を行います。
「それなら、なんのために細胞診があるの?」と思った方もいるでしょう。
最初から組織診を行わない理由は、以下のふたつの点から、組織診が検診には適さないからなのです。
細胞診は該当する場所をこするだけですみますが、組織診の場合は病気が疑わしい場所を探してけずらないといけません。そのため、検査には時間がかかります。
細胞診がこする検査であるのにくらべて、組織診はけずる必要があるため、痛みが生じます。また少量とはいえ出血することも多く、止血処置にかかる負担があるのも組織診の特徴といえるでしょう。
組織診のこうした特徴から、検診のようなスクリーニング検査で「なるべく多くの方からがんを負担なく効率よく診断する」ためには細胞診のほうが適しているのです。細胞診を行った結果、異常な細胞がみつかった方は、異常な細胞のかたまり、すなわち「異常な組織」が存在する可能性があるために、組織診を行うことになるのです。
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山王病院(東京都) 名誉病院長
堤 治 先生の所属医療機関
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