「双子を妊娠したときの膜性診断―卵性診断との違いとは」では、双胎妊娠(双子の妊娠)の場合に知っておくべき「膜性」についてご説明しました。これを理解することにより、ご自身のケースがどのタイプの双胎妊娠であるのかを知ることができます。この記事では、このケースごとに異なるリスクについて詳しくご説明します。引き続き、成育医療研究センター・周産期母性診療センター医長の和田誠司先生に伺いました。
DD双胎は、双胎妊娠の中では最もリスクが低いです。これは同じ子宮の中にたまたま別個のふたりがいるだけで、ふたご同士で影響し合うことがないためです。
このため、DD双胎をみていく上で大切なのは以下の2点です。
単胎妊娠と注意する点が大きく変わりませんが、冒頭に書いたようにリスクが高いことに注意してください。
MD双胎は、DD双胎に比べるとリスクが高い妊娠です。これは胎盤をふたりの赤ちゃんが共有しているために、DD双胎でおこりやすい合併症のほかに「MD双胎妊娠特有の合併症」があるからです。ここで注意すべきことは以下の3つです。
いずれもとても大切な知識なので、MD双胎を妊娠されたお母さんは必ず知っておきましょう。以下にそれぞれについてご説明します。
赤ちゃんは胎盤の血流から栄養と酸素をもらって育っていますが、MD双胎では一方の赤ちゃんに血流が行き過ぎ、もう一方の赤ちゃんには血流が少なくなってしまう状態があります。血流が行き過ぎてしまう赤ちゃん側の羊水が増える一方、血流が少なすぎる赤ちゃんは羊水量が減り体重が小さくなります。
悪化すると二人とも子宮内で亡くなってしまったり、また一人は助かっても重篤な後遺症を残すこともあります。予防方法は存在しないため、早期発見と状況によっては治療・管理を行うことがとても大切です。
治療法決定の際、「在胎週数」と「重症度」を考慮します。胎外生活が十分可能な週数であれば、分娩し新生児治療を行います。これが困難なのであれば、胎児治療が選択され、特に26週(28週)未満のTTTSに対しては「胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)」が第一選択となります。これが難しい場合には「積極的羊水除去」が選択される場合があります。TTTSと診断された場合、高度医療提供施設と連携をとりながら管理、治療することが大切です。
FLPは妊娠26週(28週)未満のTTTSに対する第一治療となっています。
TTTS患者さんの中でも以下のような方が適応となります。
母体、胎児ともに十分な麻酔を施行した後、母体のお腹の皮膚を小さく切開し、受血児の羊水腔に胎児鏡を挿入し、吻合血管をレーザーで凝固し、血流を遮断します。全ての吻合血管の処理が終わった後、羊水を除去して終了となります。
レーザー凝固術
TTTSは急に症状が進むことがあるため、重症な方では妊婦健診の間に悪化して、気がついたら重症もしくはひとりが亡くなっているということもあり得る病気です。
そのため、妊婦健診の合間には注意して欲しいことが2つあります。「お腹の大きさ」と「胎動」です。
双胎間輸血症候群は双子のうちの一人の羊水量が増えます。そのため、「急にお腹が大きくなった」と感じることが早期診断のきっかけになることがあります。そもそも双胎妊娠はおなかが大きいのですが、「なにか急に大きくなったな」と思った時には主治医の先生に相談しましょう。
胎動は赤ちゃんの元気さを示すとても大切な指標です。胎動は妊娠20週目ころから感じるようになりますが、胎動が減っている時には何か良くないことが起きていることが多く、MD双胎の場合はそれが双胎間輸血症候群の診断のきっかけになることがあります。二人の胎動を同時に感じるのはなかなか難しいのですが、赤ちゃんを守るためにはお母さんの「気付き」がとても大切なのです。双子の赤ちゃんの胎動を感じるようになってきたら、「ふたりの差」も感じられるようになるという方もいます。
ふたりの間に羊水量の差はなくても、ひとりが明らかに小さい場合のことを言います。状況が悪化すると子宮内胎児死亡を起こすこともあるため、注意深く観察していくことが必要です。管理方針は週数や赤ちゃんの大きさによって一概にはいえないため、主治医とよく相談してください。
残念ながらMD双胎の一児死亡率は高く、3~5%といわれています。これは、先に挙げた双胎間輸血症候群や一児発育遅延の悪化の結果として起こることもありますし、それまで徴候がなかったのにある日突然起きていることもあります。生存している赤ちゃんも後遺症を残すリスクがあります。
MM双胎はMDと比べてもさらにリスクが高い妊娠です。これはMD双胎のリスクに加えて、ふたりの赤ちゃんが同じ空間にいるため、へその緒がからまって突然亡くなってしまうことがあるからです。
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 胎児診療科 医長
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