インタビュー

弛緩出血の治療法とリスク因子―予防はできない?

弛緩出血の治療法とリスク因子―予防はできない?
和田 誠司 先生

国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 胎児診療科 医長

和田 誠司 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年04月26日です。

弛緩出血とは、赤ちゃんが生まれて胎盤が出たあとに子宮から異常出血する状態です。お母さんの命にかかわる恐れがあるほどの弛緩出血が起こるのは、250人に1人ほどの割合です。

今回は、弛緩出血のリスク因子や治療法について、国立成育医療研究センターの和田誠司先生にお話を伺いました。

弛緩出血は、子宮の収縮機能がうまくはたらかないことで、産後の出血量が500ml以上となる状態です。

出産のときは、子宮から血液だけではなく羊水など他の液体も出てきます。正確に出血量を測ることは難しく、概算となってしまいます。

そのため、概算の出血量だけではなく、心拍数と血圧で算出するショックインデックスという指標でも出血量を推測します。お母さんの状態を総合的にみて、治療を行います。

弛緩出血が起きた場合は、治療を行います。子宮から出血しているときは子宮の止血を行い、弛緩出血ではなく産道から出血しているときは、出血箇所を縫うことがあります。

治療法によっては痛みがともないますが、弛緩出血は、命に関わる危険性もあるため、医師を信頼して落ち着いて処置を受けましょう。弛緩出血の治療にあたっては、保険適用されます。

子宮底の輪状マッサージ

赤ちゃんが生まれると子宮の位置が下がります。下がった子宮のある下腹部あたりをマッサージして、子宮を収縮させます。

子宮体部の冷却

保冷剤をお腹の上に乗せて、子宮を収縮させます。

子宮収縮薬

オキシトシン(静脈注射か筋肉注射)やマレイン酸メチルエルゴメトリン(筋肉注射)などの子宮収縮薬を注射します。

双手子宮圧迫法

双手圧迫

双手子宮圧迫法は、上図のように片方の手(こぶし)を膣から入れて、もう片方の手でお腹の上から子宮を挟み込むように圧迫します。無痛分娩ではない場合は、圧迫の際に痛みがともないます。

子宮内バルーンタンポナーデ法

バルーンタンポナーデ法

子宮内に風船のような医療器具を入れて注射器で膨らませます。バルーンが膨らむことで、出血箇所が圧迫され止血することができます。

子宮全摘出

子宮全摘出は、出血が多すぎてお母さんに命の危険があるときのみに行います。何をしても弛緩出血が止まらないというときの最終手段です。

その他

施設によっては、出血を減少させるために静脈塞栓術を行う場合もあります。

子宮内ではなく、産道が損傷したことにより出血している場合は、出血箇所を縫うことがあります。

出血の量やお母さんの状態によっては、輸血を行うことがあります。輸血に使用する血液は、さまざまな成分が厳格に検査されています。基本的に母乳への影響はありません。

弛緩出血の起こりやすさが、遺伝するかは2018年4月現在わかっていません。子宮の筋肉の疲労や、2人目、3人目とお産の回数が増えると弛緩出血のリスクは上がると考えられています。

弛緩出血のリスク因子としては以下が挙げられます。

  • 子宮収縮薬の長時間の使用
  • 多産婦(5回以上出産しているお母さん)
  • 子宮筋腫
  • 2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠している(双子、三つ子など)
  • 絨毛羊膜炎
  • 以前の分娩で弛緩出血が起きたことがある
  • 40歳以上
  • 巨大児
  • 羊水過多症 など

和田先生

弛緩出血は突然起こります。子宮の筋肉が子宮の収縮に関係しますが、事前に鍛えるということもできず、確立された予防法はありません。

弛緩出血は医師でも予測できず、お産しないとわからないところがあります。

しかし、出産する際に、全員に弛緩出血が起こるわけではありません。心配なことがあれば医師に聞き、あまり不安がらずに出産に望みましょう。

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    和田 誠司 先生

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