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むつうぶんべん

無痛分娩

※この用語は、医学的には病名ではない場合、もしくは病名として認められつつある段階である場合があります。また、医療や身体にまつわる一般的な用語を掲載している場合があります。

最終更新日
2020年09月11日
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2020/09/11
更新しました
2020/09/11
更新しました
2020/08/26
掲載しました。

概要

無痛分娩とは、主に“硬膜外麻酔”を用いて陣痛や胎児を娩出(ばんしゅつ)する際の産道と会陰(えいん)の痛みを和らげながら行う経腟分娩のことです。

硬膜外麻酔とは、子宮や産道の痛みを脳に伝える脊髄近くの“硬膜外腔”と呼ばれる空間に麻酔薬を注入することで痛みの脳への伝達をストップする麻酔方法です。欧米では主流となっている分娩方法であり、特にアメリカでは経腟分娩の8割が無痛分娩であるとの報告もあります。近年では日本でも無痛分娩を取り入れる医療機関が増えており、2016年には5万人(6.1%)の妊婦の人が無痛分娩を選択しているとされています。

硬膜外麻酔を行うタイミングは医療機関によって異なり、陣痛が生じてから行うケースもあれば、陣痛が生じる前に硬膜外麻酔を行い、子宮口を柔らかくして開いたり、陣痛促進剤(子宮収縮薬)を用いて人為的に分娩を開始させたりするケースもあります。それぞれの処置には多少なりとも痛みを伴うため、分娩の始まりから終わりまでの全ての痛みを取り除くことができるわけでありません。

分娩とは、娩出力(母体がいきむ力と子宮収縮)によって胎児と胎盤などの付属物が産道を経て母体外に排出される現象のことです。通常は10分間隔、または1時間に6回以上の定期的な陣痛が生じると“分娩の始まり”とされ、分娩が終了するまでの所要時間は初産婦では11~15時間、経産婦では6~8時間ほどかかることが一般的です。この間、母体は陣痛の痛みや胎児が産道を押し広げて娩出される痛み、会陰の痛みなどを感じることとなります。

無痛分娩はこのような痛みを麻酔の力で取り除いたり和らげたりすることで、母体の体力消耗を軽減することが可能となり、産後の回復が早くなるとされています。

一方で、無痛分娩で行われる硬膜外麻酔にはさまざまなリスクもあり、無痛分娩を選択するか否かはメリットとデメリットをよく考えたうえで判断することが大切です。

目的

先にも述べたとおり、無痛分娩は分娩中に生じる陣痛、胎児が娩出される際に押し広げられる産道の痛み、会陰の裂傷などの痛みを取り除いたり和らげたりすることを目的として、硬膜外麻酔を用いながら分娩を進めていく分娩方法です。

痛みの程度や痛みが続く時間は、それぞれ妊婦の人によって大きな個人差があるとされていますが、多くのケースでは、陣痛が始まり子宮口が全開大になるまでの“分娩第1期”の段階で非常に強く耐え難い腹痛や腰痛を感じます。一般的な分娩第1期の所要時間は初産婦で10~12時間、経産婦で5~6時間であり、母体はこの間痛みに耐える必要があります。また、実際に“いきみ”をして胎児を娩出する“分娩第2期”では、狭い骨盤や産道の中を胎児が通り抜けるため、陣痛とともにさらなる強い痛みが生じるとされています。分娩第2期の一般的な所要時間は初産婦で1~2時間、経産婦で30分~1時間です。

このように、分娩は母体に強い苦痛を与えるものです。そのため、分娩後に母体の体力が回復するまでには時間がかかり、胎児が誕生する感動的な瞬間を心身の余裕をもって迎えられないケースも少なくありません。

無痛分娩の導入は、分娩中の苦痛を医学的に取り除いたり和らげたりすることで、これらの問題を改善することが主な目的となります。また、そのほかにパニック障害心疾患など分娩中の痛みに耐えられないと考えられる心身の症状がある場合に選択されるケースもあります。

検査・診断

無痛分娩でも通常の経腟分娩と同様に、分娩の進行状況や胎児と母体の状態を把握するため次のような検査が行われます。

内診

腟から子宮口に向かって指を挿入し、子宮口の硬さや開き方、胎児の位置、胎児の頭の向きなどを評価する検査です。分娩の進行を知るために重要な検査であり、分娩中は医師や助産師による内診が必要に応じて実施されることが一般的です。

分娩監視装置

胎児の心拍と子宮収縮の状態を感知することができるセンサーを腹部に取り付け、胎児の状態や子宮収縮の強さ、間隔を評価するための検査です。胎児の心拍低下などの変調に速やかに対応するため、通常は分娩の開始時から分娩終了後まで装着を続けます。

特に無痛分娩では陣痛の痛みを感じないため、“いきむ”タイミングを母体自身がつかむことができません。子宮収縮の状態を見ながら医師や助産師が“いきむ”タイミングを指導していく必要があるので、分娩の正しい進行のためにも不可欠な検査となります。

注意点

無痛分娩では、子宮口が全開大し胎児を娩出する“分娩第2期”の所要時間が長くなる傾向にあります。これは、先にも述べたとおり、“いきむ”タイミングがつかめないため子宮収縮といきむタイミングがずれて通常の娩出力が得られないことや、麻酔によって子宮収縮の力自体が弱まってしまっていることなどが大きな原因と考えられています。

このため、無痛分娩では適切な子宮収縮を促すために子宮収縮薬を使用したり、場合によっては鉗子(かんし)分娩や吸引分娩が必要になったりすることもあります。

合併症

無痛分娩で行われる硬膜外麻酔は、腰椎の中を走行する脊髄の近くの空間である硬膜外腔に細いチューブ(カテーテル)を挿入し、そこから定期的に麻酔薬を注入する麻酔方法です。

痛みに合わせて麻酔薬の量を調整することが可能であり、分娩中の苦痛を強力に和らげることができるため、そのメリットのみが注目されがちですが、次のような合併症が生じることがあります。合併症を予防するためにも麻酔管理に精通した医師が治療を行うことが大切です。

局所麻酔薬中毒

局所麻酔薬中毒とは、血液中の局所麻酔薬の濃度が高くなることによって耳鳴りや舌のしびれ、けいれんや不整脈などの症状が現れる状態です。

局所麻酔薬が血管内に誤って入ってしまったり、局所麻酔薬の投与量が多すぎたりする場合に生じ、場合によっては命に関わることもあります。

カテーテルの誤挿入

まれな合併症の1つですが、硬膜外腔にカテーテルを挿入する際、脊髄を包むくも膜下腔や血管内にカテーテルが誤挿入することがあります。その状態で麻酔薬を注入すると麻酔の作用が上半身にまで及び、呼吸困難や意識消失などを引き起こすことがあります。

また、麻酔が効きすぎてしびれやけいれんを生じることもあり、場合によっては死に至るケースも報告されています。

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