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無痛分娩における医療機関の選択のポイント――国立国際医療研究センター病院における無痛分娩の実際

無痛分娩における医療機関の選択のポイント――国立国際医療研究センター病院における無痛分娩の実際
定月 みゆき 先生

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 産婦人科 産科医長

定月 みゆき 先生

目次
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ひとくちに“無痛分娩”といっても、医療機関によって用いる麻酔の種類や対応できる範囲が異なるため、無痛分娩を希望する妊婦さんが医療機関を選ぶ際には迷うことがあるかもしれません。また、バースプランを考えるにあたっては、どのような流れで無痛分娩が行われるかなども知っておきたいところです。そこで今回は、国立国際医療研究センター病院 産婦人科 産科医長 定月(さだつき) みゆき先生に、無痛分娩を希望する患者さんが医療機関を選ぶ際に確認したいポイントや、無痛分娩による出産の流れなどについてお話を伺いました。

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画像:PIXTA

無痛分娩は妊婦さんにとって身近な出産方法となりつつありますが、医療機関の方針や診療体制などにより、無痛分娩の内容には違いがあります。妊婦さんが望む無痛分娩が可能かどうかについては、次のような項目を確認するとよいでしょう。

赤ちゃんが産道を通って生まれてくる経腟分娩には、自然に陣痛が来るのを待って出産する自然分娩と、あらかじめ出産日を決めておき、陣痛促進剤を使って陣痛を起こし出産に至る計画分娩があります。

無痛分娩では麻酔薬を用いることから、安全面を考慮して麻酔科の医師など医療スタッフがそろった環境で実施することが望ましく、日本では日中の時間帯を選んで出産できる計画分娩でのみ無痛分娩を行っている医療機関もあります。

一方で、自然分娩の場合は陣痛の始まる時間をコントロールすることができないため、出産が夜間になることもあります。したがって、無痛分娩を用いた自然分娩を希望する場合には、24時間体制で無痛分娩に対応している医療機関を選択する必要があります。

無痛分娩に用いられる麻酔方法の第一選択は、硬膜外腔にカテーテルを入れて麻酔薬を投与する硬膜外麻酔ですが、医療機関によっては、これ以外の麻酔方法を選択できることがあります。たとえば、硬膜外麻酔のみでは十分に痛みが取れない場合には、脊髄(せきずい)のくも膜下腔と呼ばれる空間に麻酔薬を注入する脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)を併用することができる医療機関や、静脈からの鎮痛薬投与で対応する医療機関もあります。

初産の妊婦さんの場合、陣痛が始まってから出産に至るまでに長い時間がかかる傾向にあり、計画分娩を行ったとしても、医療スタッフのそろった日中の時間帯に出産まで至らない可能性があります。そのため、無痛分娩の対象を出産経験のある妊婦さんのみに限定している医療機関もあります。

無痛分娩を行う際には、事前の検査や麻酔の準備が必要となるため、通常は予約が必要です。いつまでに無痛分娩の予約をしなければならないかは医療機関によって異なりますが、24時間対応で無痛分娩を行う医療機関は数が限られるため、かなり早い段階で予約が埋まってしまうこともあるようです。

当院の無痛分娩は、麻酔科の医師が対応できる平日の日中(2023年2月時点では月・水・木曜日)に、計画分娩で行うことを原則としています。予約は妊娠34週目まで可能で、出産は基本的に妊娠38~40週の間に計画します。また、麻酔については硬膜外麻酔を基本に、必要に応じて脊髄くも膜下麻酔を併用しながら、出産の最終盤まで痛みを緩和する方針です。なお2023年2月時点では、当院での無痛分娩の対象は出産経験のある妊婦さんのみとなっています。

当院における無痛分娩の入院から出産、その後の流れについて紹介します。

【出産前日】

出産予定日の前日に入院します。

入院後は子宮口の熟化(じゅくか)(子宮の出口が柔らかく、開きやすくなっているか)を確認し、熟化が不十分な場合には子宮口にラミナリア(かん)(海藻でできた棒のようなもので、体内の水分を吸収して膨らむ)やメトロイリンテルというバルーンを入れて、一晩かけて徐々に子宮口を開いていきます。最近ではジノプロストンという薬剤を腟内に数時間~12時間留置し、子宮頸管(けいかん)の熟化を促す方法もあります。

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子宮口の熟化処置

【出産当日】

7:00~8:00ごろ

陣痛促進剤の点滴を開始します。

 

9:00ごろ

麻酔科の医師が無痛分娩に使用する硬膜外麻酔のカテーテルを挿入します。処置はベッドに横向きになった状態で行い、数分~10分程度で終わります。挿入が終わったら、麻酔薬が正しく投与できるかをテストします。

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硬膜外麻酔カテーテルの挿入

11:00ごろ~

陣痛の始まりに合わせて、カテーテルから麻酔薬の投与を開始します。麻酔薬は一定の時間ごとに投与されますが、痛みの状況に合わせて、妊婦さん自身が手元のボタンで麻酔薬を追加することもできます。痛みが十分に取れない場合はカテーテルを入れ替えることもあります。

出産の最終盤で痛みが十分に取れない場合には、脊髄くも膜下麻酔も併用します。

 

夕方ごろ

個人差はありますが、多くは夕方までに出産に至ります。

会陰切開を行ったときや、会陰に裂傷がある場合には傷口を縫合しますが、麻酔が効いているとほぼ痛みがなく処置を受けられます。

 

出産から2時間後

経過観察を行い、異常がなければ硬膜外麻酔用のカテーテルを抜いて部屋に戻ります。

悪露(おろ)(出産後に子宮や腟から出る分泌物)の排出などに伴い後陣痛や傷の痛みが出現する場合、その痛みに対しては鎮痛薬の内服などで対応します。

国立国際医療研究センター病院では、無痛分娩を行うと自然分娩の料金に15万円(2023年2月時点)が加算されます*。また、無痛分娩では分娩誘発の前日に入院するため、自然分娩よりも入院費が1日分多くなります。

なお、無痛分娩の費用は医療機関により異なるため、その詳細については出産を予定している医療機関にお問い合わせください。

*当院の自然分娩の費用は66万円~です。このほか、希望により有料個室(11,000~14,300円/日)、ハイリスク分娩管理加算(3割負担の場合で1日9,600円)が別途加算されます。

出産は痛みを含めて個人差の大きな経験であるため、それぞれの妊婦さんが満足のいく出産をかなえるためには、まずは“自分がどのようなお産をしたいか”というイメージを明確にし、それを医師や助産師などと共有しながらバースプランを組み立てていくことが大切です。そのなかで“痛み”というストレスを緩和できる無痛分娩は、妊婦さんにとって心強い選択肢だといえるでしょう。たとえば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下では出産にご家族が立ち会えないなどの制限も多く、妊婦さんにとって不安の大きな時期が続きましたが、その中で「痛みという不安を取り除いて出産に臨みたい」と前向きに無痛分娩を選択した方もいらっしゃいました。

しかしながら、最近は無痛分娩をはじめとした出産に関する情報がインターネット上にあふれているため、それらに振り回されしまうことで“妊婦さん自身がどのようなお産をしたいのか”という1番大切な部分を見失ってしまうこともあるようです。まずは、妊婦さんの思い描く出産をご家族と共有しながら、担当の医師や助産師に相談し、皆さんが納得できるバースプランを一緒に考えていきましょう。

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