ようすいかたしょう

羊水過多症

監修:

概要

羊水過多症とは、妊娠時に子宮内を満たしている“羊水”と呼ばれる液体の産生と吸収のバランスが崩れ、子宮内の羊水の量が多くなってしまう状態を指します。具体的には羊水の量が800mLを超え(羊水過多)、母親に呼吸困難や吐き気、嘔吐、むくみ、切迫早産の兆候などの症状がみられた場合に羊水過多症と診断されます。

羊水の量は妊娠34週までに徐々に増えて、その後減少していきます。産生と吸収のバランスを保つことによって一定量に保たれ、妊娠後期になると1日およそ1Lの羊水が入れ替わるといわれています。

羊水過多症の原因は多岐にわたりますが、胎児の先天異常、多胎妊娠、母体の健康状態などが羊水過多を引き起こす要因となります。

治療は、症状の重症度や原因に応じて異なります。軽度の場合、自然に軽快することもあるため安静に過ごします。定期的に超音波検査を行い、自覚症状や羊水量の変化を観察します。羊水量が多く母体の症状が重い場合には子宮に針を刺す羊水穿刺(ようすいせんし)を行い、過剰な羊水を抜く治療が行われます。

PIXTA
図:子宮内の胎児
イラスト:PIXTA

 

原因

羊水過多症は、羊水の産生と吸収のバランスが崩れることによって引き起こされます。軽症の場合には原因が分からないこともあります。自然に軽快して出産後も母親や赤ちゃんに問題がないことも少なくありません。このような原因の分からない羊水過多症は特発性と呼ばれ、羊水過多症全体のおよそ60%を占めるといわれています。

一方、重症の場合には母体あるいは胎児に何らかの異常があると考えられます。羊水の産生増加によって羊水過多を引き起こす原因としては、母体糖尿病や胎児の内分泌疾患、胎盤血管腫などが挙げられます。また、無脳症や髄膜瘤(ずいまくりゅう)、腹壁破裂などによって胎児から何らかの液体が漏れ出る病気の可能性も考えられます。また、胎児の消化管の閉塞や胎児の嚥下障害(飲み込む力が弱くなる)などで羊水の吸収が不十分となる場合も羊水過多を引き起こします。

症状

羊水過多症では、子宮の中の羊水が増加することによって、母親にさまざまな症状が現れます。呼吸困難や吐き気、嘔吐、むくみが生じることがあり、足の血管に拡張が起こる静脈瘤を発症することがあります。子宮の内部に水分が多くたまることで子宮が引き伸ばされ、腹囲が大きくなることもあります。

また、子宮が過剰に伸展することになるためお腹の張りが増え、子宮口が開いてきて、切迫早産と診断されることもあります。さらに、頻度は高くはないですが、破水が起こることもあります。

検査・診断

羊水過多症の診断では、まず母親の診察を行います。腹囲や体重の変化のほか、呼吸困難や吐き気、嘔吐、体のむくみ、静脈瘤などの症状の有無を確認します。同時に切迫早産の兆候や胎動の状態なども詳しく観察します。

羊水の量を推定するためには、超音波検査が実施されます。超音波検査による羊水過多の診断には、主に以下の方法が用いられます。

羊水ポケット

羊水腔内の羊水で満たされた円の最大径を測定して羊水の量を確認する方法です。この円の最大径は羊水ポケット(AP)と呼ばれ、8cm以上の場合に羊水過多と判断されます。

羊水インデックス

母親の腹壁から子宮までの部位を4分割し、羊水腔のもっとも深い場所を4か所それぞれで測定して合計する方法です。この合計値は羊水インデックス(AFI)と呼ばれ、25cm以上の場合に羊水過多と判断されます。

羊水最大深度

床に垂直になるように超音波検査の器具(プロープ)を当て、子宮内のもっとも深い部分を測定する検査方法です。この測定値は、羊水最大深度(MVP)と呼ばれ、8cmを超える場合に羊水過多と判断されます。

治療

羊水過多症が生じた場合、早産予防のためにまず母親の安静が検討されます。妊娠糖尿病などのほかの病気が原因の場合は病気の治療を優先して行います。

羊水過多の状態が続き、症状が重い場合には、子宮に針を刺して適度なスピードで羊水を抜き出す羊水穿刺が行われます。しかしながら、羊水穿刺は羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)などほかの病気のリスクにもなり得るため、頻回の実施は避ける必要があります。そのため、胎児の成熟度合いに応じて分娩を誘発し、出産に移行することもあります。

また、羊水過多症では切迫早産の兆候を示す方も少なくないため、これらの症状がみられた場合には速やかに入院して管理を行います。切迫早産の兆候がみられる場合も、状況に応じて羊水穿刺を検討するほか、場合によっては緊急帝王切開が必要となることもあります。

最終更新日:
2025年06月02日
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2025/06/02
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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