編集部記事

流産の症状と原因 ~注意すべき兆候と検査を受けるタイミング~

流産の症状と原因 ~注意すべき兆候と検査を受けるタイミング~
和田 誠司 先生

国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 胎児診療科 医長

和田 誠司 先生

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ようやく赤ちゃんを授かったのに対面することなく流産してしまった……。こんな経験はできれば避けたいものですが、実は全妊娠の10~15%は流産することが分かっています。また、母体の年齢が上がるほど流産するリスクは高くなるとされています。昨今の晩婚化などの影響で出産年齢が上がっていることにより、流産率は高くなる傾向にあります。

この記事では流産とはどのような状態を指すのか、流産の兆候として現れる症状、流産を繰り返すときに考えられる原因についてお伝えします。

正常な妊娠は37~41週目まで続きますが、流産とはこのうち22週未満で終了してしまった状態のことを指します。また、22~37週未満で出産を迎える場合は“早産” として流産とは区別されます。

流産は全妊娠のうち10~15%で発生するため、実はそれほど珍しいことではありません。そして流産する確率は、年齢とともに上昇します。

一般的に、流産の兆候としておなかの張りや腹痛、出血などの症状が見られるとされています。ただし流産のタイプや個人差によって、症状がほとんどない場合もあります。

子宮は筋肉でできていて、胎児の成長とともに少しずつ伸びていきます。何かのきっかけで子宮の筋肉が緊張してしまうと、おなかが張っていると感じたり生理痛のような腹痛を感じたりするようになります。

妊娠中の出血は、多くの方が経験している比較的発生頻度の高いトラブルです。妊娠初期の出血の多くは、胎盤が作られる過程で子宮内膜の血管がささいなダメージを受けるためと考えられており、この時期の出血が流産に結び付くことは少ないとされています。しかし、真っ赤な出血が止まらない、腹痛を伴うなどの場合には流産による出血であることも否定できません。

おなかの張り・腹痛・出血などの症状があり、普段と様子が違う、症状の程度が強い、複数の症状が現れるなどの場合には、かかりつけの産婦人科への相談を検討しましょう。症状の程度が明らかに異常な場合には、流産の可能性を念頭において早めの受診を心がけましょう。

流産の大半は妊娠初期と呼ばれる12週目までに発生します。妊娠初期の流産は染色体異常や遺伝子の病気など、胎児側の問題で生じるものが大半で防ぐことは困難といわれています。

しかし流産を繰り返す場合には、生まれつき子宮が変形している子宮奇形や、ホルモンの分泌機能、免疫機能の異常など母体側の問題も考える必要があります。

一般的には、流産を3回以上繰り返す場合には母体側に原因がある可能性を考え、検査が行われることが多いとされています。

人工流産(人工中絶)でない流産を2回することを反復流産、3回繰り返すことを習慣流産、流産・早産を繰り返すことを不育症と呼びます。

ただし、最近では妊娠年齢が上昇していることも踏まえて、日本産科婦人科学会では反復流産、つまり連続2回の流産を経験された方も不育症を疑う旨の見解を述べています。

染色体異常とは、両親から受け継いだ染色体の数が多いもしくは少ないなど、染色体自体に異常がある状態を指します。染色体は精子や卵子の成長過程などさまざまな段階で変異を起こすことがあるため、両親の染色体が正常でも発症します。

染色体異常には、大きく分けて構造異常と数的異常の2種類があります。

構造異常

染色体の構造そのものが変化した状態です。

数的異常

トリソミー(本来ペアになっているはずの染色体が3本ある)、モノソミー(本来ペアになっているはずの染色体が1本しかない)といわれる状態です。23組46本ある染色体のうち、そのほとんどのトリソミー(13、18、21以外)はほぼ100%流産し、13と18トリソミーは誕生できるケースもありますが生後間もない時期に多くが死亡するといわれています。21トリソミーはいわゆるダウン症と呼ばれるものです。

遺伝子異常は、遺伝子が変異している数によって、2つの病気に分けられます。

単一遺伝子疾患:1つの遺伝子が変異して生じた病気

多因子遺伝子疾患:複数の遺伝子に生じた異常によって発生する病気

黄体機能不全とは、プロゲステロン分泌量が減少することをいいます。プロゲステロン(黄体ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンは、受精卵を着床しやすくするだけでなく、妊娠を継続させるのに欠かせません。

そのため、黄体機能不全になると受精卵が着床しにくく、流産しやすくなります。

抗リン脂質抗体症候群とは、抗リン脂質抗体が原因の自己免疫疾患で、全国で約4万人の方がかかっていると考えられています。

抗リン脂質抗体症候群は血栓症を起こしやすいという特徴がありますが、胎盤形成後の流産だけでなく、胎盤発育不全や胎児発育不全などを起こすリスクも高い病気です。そのため、流産を繰り返す方には抗リン脂質抗体の有無を調べる検査が実施されることがあります。

子宮奇形は、卵管や子宮などのもとになるミュラー管と呼ばれる管が胎児のときにうまく癒合しなかったことによって生じます。子宮奇形の方でも妊娠出産が問題なく行える場合も珍しくありませんが、奇形の程度や形によっては流早産や難産の原因になることもあります。

子宮奇形はとくに症状がなく、偶然発見されることも少なくありません。また妊娠初期健診で発見されることもあります。

喉ぼとけの下にある甲状腺という臓器からは甲状腺ホルモンが分泌されています。人体の維持に大変重要な役割を果たすホルモンですが、この甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても流産のリスクが高まることが分かっています。

明確なメカニズムは解明されていませんが、甲状腺ホルモンが妊娠を維持するのに必要な黄体の機能を促し、胎児の成長にも関与すると考えられています。

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    和田 誠司 先生

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