近年、流産のリスクを調べる血液検査は、欧米を中心に、より一般的になってきました。
この検査では、被検査者が「血栓形成傾向」にあるかが判明します。その傾向がある場合には、流産のリスクや妊娠中のほかの問題の可能性が高まることになります。
なお、「血栓形成傾向」を調べるには、ほかにもたくさんの検査があることをご存知でしたか? 医師は、妊婦さんのなかでも流産・妊娠中の急激な血圧上昇(妊娠中毒症)・また胎児の発育異常を経験している方々にこれらの検査を行うことがあります。
しかし、たとえ妊娠中の問題を抱えていたとしても、一部を除いてほとんどの場合がこれらの検査は必要ではありません。それはなぜでしょうか? 逆に、どのような方は検査を受けるべきなのでしょうか?流産のリスクを調べる血液検査について詳しく説明します。
前述したように、ほとんどの場合検査が必要ではありません。なぜなら、あなたも医師も検査結果だけをみて、どのようにケアしていくかを決めているわけではないからです。
特定の遺伝子を探す検査を例にあげてみましょう。ある遺伝子を持っていると、血栓のリスクを高めます。しかし、この遺伝子があるからといって、流産のリスクを高め、妊娠中のほかの問題をひきおこすことはありません。
そもそも「血栓形成傾向」とは穏やかな症状で、大きな問題を引き起こす可能性は低いものです。そればかりか多くの女性が、この遺伝子をもっていても健康な赤ちゃんを出産しています。
検査の結果「血栓形成傾向」にあると分かった場合、医師は妊婦さんに「ヘパリン」という血栓予防効果のある薬を注入します。ところが、この薬が本当に流産やほかの問題をおこすリスクを下げるかどうかは、はっきりわかっていないのです。またヘパリンを注入することによって、大量出血やアレルギー反応などの副作用を引き起こすことがあります。もし副作用だけをこうむってしまった場合、被検者は無駄なリスクを負うだけになってしまいます。
流産のリスクを知る血液検査には保険適用外の検査項目が多く、女性一人が受けるだけでも、染色体検査を含めて50,000円以上の費用がかかります。
また、プラスアルファで余計な支払が必要になることもあります。前述したヘパリンを例にとっても、1回の注入に10,000円以上かかります。
過去に流産や妊娠合併症の経験があるからといって、検査を受けなければならないということはありません。これらのリスクを軽減する方法は他にもたくさんあります。詳しくは、後述するアドバイス・コラムをご参照ください。
この場合には、「血栓形成傾向」の一種である「抗リン脂質抗体症候群」の検査を受けることを検討しましょう。「抗リン脂質抗体症候群」は、流産・胎児の発育不全・早産のリスクを高めます。「抗リン脂質抗体症候群」の治療には、アスピリンやヘパリンが用いられます。こうしたケースでは、検査や治療が高い効果を発揮します。つまり、誰しも検査が不必要というわけではなく、しっかりとこの検査には意味があるということです。
なんといっても禁煙です。喫煙は、妊娠時期に関わらず流産リスクを著しく高めます。
以前に流産したことがある場合は、1週間分のプロゲステロン(黄体ホルモン)を処方してもらえます。これにより流産の危険性が1/3低くなります。
早産の兆しがある場合、医師は「コルテコステロイド(副腎ステロイド)」を処方します。
たとえば、緊張性頭痛がある場合、マッサージや瞑想、散歩などをためしてみましょう。また風邪をひいたら、体を休め、水分を補給しましょう。温かいスープがお勧めです。
とはいえ、前述したように、むやみに市販薬を服薬するのはお勧めできません。どのような薬も、まず医療従事者と相談をしてからとりましょう。
たとえば、鼻づまりの薬などは血管収縮剤が入っていることがあります。
カフェイン摂取量の制限は、確実に役立ちます。なお、濃い目のコーヒーには、200㎎のカフェインが含まれているので、特に注意しましょう。
毎日の適度な運動は様々な効果がありますが、特に以下3つは有益であると言えるでしょう。
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。今回の翻訳元記事は、 “Blood Tests for Miscarriage Risk” です
監修:小林裕貴、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長
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