インタビュー

流産後の対応について――​​待機か手術か

流産後の対応について――​​待機か手術か
玉田 さおり 先生

山王病院(東京都) 産婦人科 副部長

玉田 さおり 先生

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この記事の最終更新は2015年08月28日です。

残念ながら流産と診断されてしまった場合、その後には具体的にどのような対応を行うのでしょうか。引き続き、山王病院産婦人科・副部長の玉田さおり先生にお話をうかがいました。

進行流産稽留流産で異なります。また、この項では初期流産(妊娠12週未満)の対応について説明します。

進行流産の場合、ほとんどの方が院外で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が排出しています。具体的には、出血が増えてきて、腹痛が強くなったと感じたら比較的短時間のうちに胎嚢が排出されます。出血が多くなって困ることは少ないですが、まれに胎嚢が完全に排出しきらずに出血が持続してしまうことがあります。通常の月経時と比べて明らかに多い出血があるのに胎嚢の排出がないときには、病院に一度連絡するとよいでしょう。

胎嚢が排出されたら、その胎嚢を持参して病院を受診しましょう。胎嚢に対しては胞状奇胎などの病気がないか顕微鏡検査を行いますので、排出からなるべく早めの受診をお勧めします。
病院では子宮内に胎嚢の遺残がないかどうかの超音波検査を行います。遺残がなければ完全流産として、子宮内環境が回復し月経が戻るのを待ちます。遺残がある場合には不全流産として、次に説明する稽留流産に準じた医学的管理を行います。

稽留流産とは「赤ちゃんは子宮の中にいるが心拍が確認できない状態」のことです。現在では妊娠初期の超音波検査が普及していることもあり、稽留流産と診断される方が多いです。

稽留流産と診断された後にはふたつの方針が考えられます。①待機的管理、②手術療法です。待機的管理というのは胎嚢が自然に排出するのを待つ方法です。一方、手術療法は器具を用いて胎嚢を排出する方法です。
これまでの報告を総合すると、ふたつの方法には明らかな優劣はつかないとされています。それぞれの方針には特徴がありますので、ご自身の希望に合わせて選択してよいでしょう。以下に詳しくご説明します。

  • 自然排出されたときの身体的・金銭的な負担は手術よりも小さい
  • いつ排出が起きるかわからないため、日常生活に支障をきたす可能性がある
  • 完全な排出がされず(不全流産)、医学的管理が長引くことがある
  • 長期間(施設によっても違いますが2週間程度を目安にしているようです)待機しても排出されない場合、結局手術が必要になることがある
  • 確実な排出を望める。スケジュールに支障をきたしにくい。
  • 手術前の処置に痛みがあるが、自然流産の痛みと大きな差はない
  • 手術合併症のリスクがある(術後感染や子宮穿孔など)
  • 保険適応有・手術代はおおよそ1万円台

診療を行っているなかでの印象では、スケジュールが詰まっていて多忙な日々を過ごしている方や、自宅と病院が離れておりアクセスが難しい方は手術を希望されるケースが多い印象があります。妊娠週数によっても方針が異なることが多く、7週目位までであれば待機的管理を、9週を過ぎると手術療法が行われることが多いです。この他にも病院の方針、子宮の状態等によっても変わってきますので、医師と相談して決めていくのがよいでしょう。

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