概要
稽留流産とは、何らかの原因により妊娠22週未満で胎芽や胎児が子宮内で死亡してから、特に症状がなく子宮内にとどまっている状態で“流産”の分類の1つです。自覚症状がないため、超音波検査などの検査がきっかけで診断されます。
稽留流産は、一定の期間がたてば月経と同じように、出血とともに子宮内容物が排出される完全流産に移行することがほとんどです。稽留流産が明らかである場合には、手術によって子宮内容物を取り出す治療か、超音波検査で子宮内の状態を確かめながら完全流産を待つ方法のどちらかが選択されます。
原因
稽留流産を含め、流産の原因は主に胎児側の要因と母体側の要因に分けられます。
妊娠12週未満で起こる流産は早期流産、12週以降22週未満で起こる流産は後期流産と呼びます。早期流産では胎児側の要因(特に染色体異常)によることが多く、後期流産では母体側の要因によることが多いとされていますが、原因が分からないことも少なくありません。
胎児側の要因としては受精卵の異常、染色体異常、胎盤、臍帯、卵膜の異常などがあります。一方、母体側の要因としては子宮の異常(子宮奇形、子宮発育不全、子宮筋腫、頸管無力症)、自己免疫疾患、感染症、心疾患や腎疾患などの合併症、生活環境、薬物、被曝、外傷などが挙げられます。
症状
稽留流産の自覚症状はほとんどありませんが、軽い腹部の張りや茶褐色のおりものがみられることがあります。ただし、正常な経過の妊娠でもみられることがあるため、同様の症状がみられたからといって必ずしも流産とは結びつきません。
稽留流産の多くは時間の経過とともに進行流産となり、出血や腹痛を伴って子宮内容物が排出されます。
検査・診断
稽留流産の診断は、超音波検査によって行われます。
超音波検査で子宮内に妊娠8週相当の大きさの胎児(胎芽)が確認できているにもかかわらず、胎児心拍が確認できない場合や、一度は確認できた胎児心拍がその後の検査でみられなくなった場合に稽留流産と診断されます。
なお、胎児心拍は通常妊娠5週の終わり頃からみられ始め、週数が経過するにつれて確認できる割合が増え、妊娠8週には全てみられます。
妊娠週数の推定には最終月経からの週数が用いられますが、必ずしも正しい週数であるとは限りません。胎児のサイズが小さい場合は、1度目の検査で心拍の確認が認められなくても、2週間後などに再検査を行い診断することが一般的です。
治療
稽留流産は、時間経過とともに完全流産(子宮内容物が全て排出した状態)に移行します。
稽留流産と診断されてからの治療は、経過観察によって子宮内容物の自然な排出を待つ方法(待機的療法)と、手術によってより早期に子宮内容物を摘出する方法があります。
待機的療法
診断時の妊娠週数が13週未満で、母体の感染がなく、バイタルサインが安定している場合に選択します。自然な回復が期待でき、手術によるトラブルを回避することが可能ですが、流産の進行に伴って大量の出血や強い腹痛が起こることもあります。
子宮内容物は2週間程度で排出されることが多く、最大で4週間程度の待機を行いますが、それ以上経過しても子宮内容物の排出がみられない場合は、手術による摘出を行います。
待機的療法を行っている間でも、出血量が多い場合や子宮内容物の感染が疑われる場合は速やかに手術を行います。そのため、待機中は常に医療機関との連絡が取れる状態でいる必要があります。
手術
子宮内容物を摘出する治療で、鉗子を用いて子宮内容物を掻き出す方法や吸引する方法などがあります。早期に流産を解決できるため、日常生活への復帰がしやすいメリットがありますが、手術を受けることに対する不安感や合併症が生じるリスクがあります。
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