夜間、休日の電話相談で最も頻度が多いのが妊娠初期の出血についての相談です。「流産してしまうかも?」と不安になって電話を取られる方が非常に多いのでしょう。ここでは少しでもそんな不安が減らせるよう「妊娠初期の出血=切迫流産」について説明します。引き続き、山王病院産婦人科・副部長の玉田さおり先生にお話をうかがいました。
切迫流産とは、少量の出血を認める一方で、胎児の心拍はしっかりと保たれている状態です。出血は子宮内にも「絨毛膜下血腫」という形で存在することもあります。妊娠初期の出血は20%程度の方に起きるといわれています。症状は下着に付着する程度のものから1週間以上にわたるものまで様々です。
妊娠初期に出血してしまうことは、残念ながら流産のリスクを上昇させます。一般的には、出血量が多く腹痛を伴う場合には流産に進んでしまう可能性が高いです。ただ例外も存在し、出血が長期にわたってもその後の経過が良好な方もいれば、ほとんど出血がなかったにもかかわらず流産してしまう方もいます。
また、日常生活の何気ない習慣(例えば長風呂や便秘薬の使用等)によって切迫流産が引き起こされるのではないか、という心配をされる患者さんがいます。これらの習慣は、いずれも常識の範囲内であれば問題ありません(但し便秘薬は、妊娠と診断されたら医師に相談して処方されたものを使いましょう)。
出血の原因としては、初期の着床出血、充血した子宮頸管からの出血、絨毛膜下血腫からの出血、流産の初期徴候として胎嚢が子宮壁からはがれるときの出血などが挙げられます。絨毛膜下血腫からの出血は超音波で観察することでわかります。ただ、なぜ絨毛膜下血腫が起きるのかについてはよくわかっていません。それ以外の出血は、出血の様子から原因を確定することは困難です。
出血したときの対応は胎嚢が子宮内に確認できているか、そして腹痛の有無によって変わります。
① 胎嚢が子宮内に確認できていない。
この場合に考えられることは3つあります。
この中でもっとも注意が必要なのは、3の異所性妊娠です。そのため、まずは超音波検査で異所性妊娠の所見がないか確認します。明らかな異所性妊娠の所見がなければ、1もしくは2の可能性を考えて経過観察を行います。
② 胎嚢が子宮内に確認できており、腹痛はない。
よくある切迫流産の症状です。出血の程度から今後を予想するのは難しく、また超音波検査でも「現時点で赤ちゃんの心拍があるかないか」しかわかりません。また、もし流産の初期徴候としての出血だとしても、流産の進行を止める治療はありません。このため、通常は経過をみていくほかなく、出血が多量でなければ緊急に病院を受診する必要もありません。
③ 胎嚢が子宮内にあり、腹痛がある
腹痛の程度にもよりますが出血と腹痛がある方は流産の初期徴候である可能性が高いです。この場合も流産の進行を止める治療がないため、様子をみるしかありません。胎嚢が排出された場合は胎嚢を持参して病院を受診してください。胎嚢はジップロックなどに入れ、密封して運ぶと良いでしょう。夜間に排出された場合等は焦らず、翌日病院に持参すると良いでしょう。
ただ、出血量が多い場合や腹痛の程度が非常に強い場合には緊急受診が必要なことがあるため病院へ連絡してください。これは、不全流産で出血が多くなってしまったり、また稀ではありますが子宮内外同時妊娠という緊急手術が必要な病気もあるからです。
・産婦人科研修の必修知識 2013
・産婦人科診療ガイドライン 産科編 2014
・Williams OBSTETRICS 23rd Edition
関連の医療相談が10件あります
妊娠初期の下腹部痛について
ここ最近、ほぼ毎日といっていいほど子宮辺りあたりがキューっと締め付けられるような痛みがあります。 まだ耐えられる痛みです。 悪阻も少し落ち着いてきて下腹部痛もあるとなると流産していないか心配です。 最初の健診に不安で行き過ぎたせいであまり病院にも行けず……。 胸の張りも少し無くなったような気がします。 体のダルさ、寒気、眠気、吐き気などはあります。 この下腹部痛は大丈夫なのでしょうか?
5w位から茶色いおりもの、出血がありました
今7wなのですが、ほぼ毎日出血してます。これは、子宮筋腫とか切迫流産に関係してますか? お腹の痛みはありません。 トイレ行くたんびに、ぐったりします。 病院では、出血に関して何の説明もありません。 安静に…と言われます。 出血が気になります。
お腹が張っている
重い荷物を持つとお腹が張るような症状があるようです。病院にかかった方がいいでしょうか?コロナもあるので出来れば外に出させたくないのですが。
お腹の張り
1〜2週間前から夜になるとお腹が張って苦しく、夜中に目が覚めてしまうことも多いです。何か改善策はありますか、
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「切迫流産」を登録すると、新着の情報をお知らせします