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編集部記事

産褥期はいつまで?~産後の症状、過ごし方と適切な診療科~

産褥期はいつまで?~産後の症状、過ごし方と適切な診療科~
三島 みさ子 先生

河北総合病院 産婦人科 部長

三島 みさ子 先生

目次
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約10か月間の妊娠生活を経て出産が終了すると、今度は産褥(さんじょくき)といわれる期間に入ります。この記事では、産褥期とは具体的にいつまでを指しているのかだけでなく、()()はいつまで続くのか、産後に起こりやすい抜け毛、突然の汗や動悸などの身体的な症状、マタニティーブルーズといった心理的な問題などの対処方法とそれらに対する適切な診療科をご紹介します。

産褥期は一般的に産後6~8週間までの期間を指します。

約10か月にわたって赤ちゃんを育むため、大きく変化していた子宮などの臓器やホルモンバランスが、少しずつ時間をかけて元の状態に戻っていく時期です。

出産が終わった女性の体の中では

(たいとうのう)
  • 子宮復古:子宮が妊娠前の大きさに戻ろうとする収縮のこと
  • 全身の臓器の回復:耐糖能や腎機能の正常化、出産時の出血による貧血の解消など

が始まります。

出産自体が女性の体に与えるダメージは大きく、産褥期は疲れや痛みが続く時期でもあります。授乳やおむつ替えなど最低限のことに努め、なるべく体を休ませるようにしましょう。ただし、アメリカの産婦人科学会では、産後早期からのエクササイズを推奨しています。自身で回復してきたと感じたら、少しずつストレッチなど育児の合間にできるエクササイズで体を動かすことも検討してみましょう。

なお、帝王切開をした方は回復に時間がかかるため、産後の運動に関しては主治医に相談してから開始するようにしましょう。

産後3週間が過ぎた頃には、体が徐々に回復してくる方が増えてきます。個人差もありますが、産後5週間もすれば妊娠、出産でダメージを受けた子宮や会陰部などはほとんど元の状態に戻るといわれています。無理のない範囲で、妊娠、出産によって緩んだ骨盤を引き締めるためのエクササイズを始めていきましょう。産後は母親に対しても1か月健診があるため、体調面などで不安や疑問がある場合は医師に相談するとよいでしょう。

悪露とは、産褥期に子宮から排出される分泌物で、子宮壁や産道からの出血や分泌物などが混じったおりもののことです。悪露は産後1~2か月まで見られるため、その間は産褥パッドや生理用のナプキンを使用します。

悪露は出産後約1か月間続きますが、色や量などは徐々に変化していきます。

赤色悪露

出産直後から4日目頃までは、暗褐色で独特の臭いのする悪露(赤色悪露)が出ます。量も多いため、赤色悪露の時期は産褥パッドをこまめに取り替える必要があります。

褐色悪露

5~14日目頃になると、悪露に混じったヘモグロビンが変色して、茶色い悪露(褐色悪露)が出るようになります。褐色悪露は赤色悪露よりも量は少ないですが、産褥パッドは引続き小まめに取り替えるようにしましょう。

黄色・白色悪露

15日目頃になると、血液成分はさらに減少して白血球が多く含まれるようになるため、黄色っぽい悪露になります。そして、徐々に量が減少していき、最終的に悪露に透明な分泌物が混じった白色悪露がごく少量分泌されるようになります。白色悪露が終わると、悪露の分泌は終了します。

*この記載はあくまでも目安です。悪露が分泌される期間には個人差があります。

赤色悪露や褐色悪露は通常の生理よりも量が多いので、産褥期はなるべく産褥パッドを使うようにしましょう。

産褥パッドは生理用ナプキンよりも大きく厚みがあります。また、吸水性が非常に高くて蒸れにくく、肌への刺激を極力抑えた素材が使用されています。悪露にはさまざまな雑菌が停滞しやすく、蒸れやすいと雑菌が繁殖して腟から子宮内に広がり、子宮内感染の原因になることも少なくありません。

多くの方は出産時に会陰切開をするため、傷口はできるだけ刺激したくないものです。そのためにも、専用の産褥パッドを使用するのがよいでしょう。ただし、悪露の量が減ってきたら、量に合わせて徐々にサイズダウンし、夜用ナプキンなどで代用する方も多いようです。

また、悪露の状態に以下のようなことが見受けられた場合には、医師に相談することを検討しましょう。

<悪露に関するトラブル>

  • 悪露に悪臭がある
  • 鮮血の塊が継続的に出る
  • 悪露がまったく排出されない

など

産褥期は、抜け毛、便秘、尿漏れなどのトラブルに悩んでいる方が多くいます。ここでは産後に生じる代表的な四つのトラブルとその原因、どの診療科を受診したらよいのかご紹介します。

妊娠時は大きくなった子宮が肛門周囲の血管を圧迫して血行が悪くなったり、分娩時は強い力でいきんだりするため、妊娠中から産褥期にかけてに悩んでいる方は非常に多いです。そのため、妊娠中から産褥期は、水分や食物繊維をしっかりと取り、適度な運動をするなど、便秘を予防し、痔の予防・悪化対策に努めましょう。出産し落ち着くと自然に治ることがほとんどですが、治らないケースでは手術が必要になる場合もあります。

痔の症状に悩んだら、まずは出産した産婦人科の医師に相談することを検討しましょう。また、肛門科や消化器外科を受診することも可能です。

妊娠中はエストロゲンとプロゲステロンとよばれる女性ホルモンの分泌量が急激に上昇します。エストロゲンは髪の毛の成長を促して、美しくキープする作用があるため、妊娠中は、本来なら抜けてしまう毛が抜けにくくなります。しかし、産後は急激にエストロゲンの分泌量が減少するため、これまで抜けにくかった毛が一気に抜け落ちてしまうことも少なくありません。

しかし、産褥期の抜け毛は一時的なもので、ヘアサイクルが戻れば髪の毛は自然に生えてくるようになるため、あまり神経質にならないようにしましょう。

産褥期の便秘には、いくつかの原因が考えられます。

便意を我慢することによる便秘

産後は会陰切開の傷が気になり、便意を感じても怖くて排便できないという方も少なくありません。また、赤ちゃんが泣いているタイミングで便意を感じ、トイレに行くことができないという状況も多いでしょう。このように便意を我慢することが何度もあると慢性的な便秘が生じやすくなります。

水分不足

母乳は血液から作られているため、特に母乳育児中は普段より多くの水分が必要になります。そのため、育児に夢中になるあまり、小まめな水分補給ができずに水分不足が生じると、便が硬くなって便秘を引き起こすことがあります。

赤ちゃんの世話など慣れない生活のストレスによる自律神経の乱れ

特に産褥期は睡眠不足になりやすいため、自律神経が乱れやすい時期でもあります。腸の動きは自律神経によって支配されており、ストレスなどで交感神経が過剰に興奮すると腸の運動が低下し、頑固な便秘を引き起こします。

産後の便秘が長期間続いて気になる方は、産婦人科への受診を検討しましょう。たかが便秘と軽く考えていると、その後も便秘になりやすい体質になってしまうことがあるため注意が必要です。

産後、少しお腹に力を入れると尿が漏れてしまう……という症状に悩む方が多くいます。この原因は、妊娠・出産による骨盤底筋の緩みやダメージです。骨盤底筋は子宮や膀胱などを支える筋肉で、この筋肉が妊娠、出産により大きくなった子宮に長期間圧迫されることで緩んでしまうと、尿漏れを起こしやすくなります。

産褥期は体の痛みが緩和してから、少しずつ骨盤底筋を引き締めるスクワットなどのエクササイズを始めることが大切です。徐々に症状は改善していくことがほとんどですが、いつまでも改善しない場合は、かかりつけの産婦人科に相談するとよいでしょう。また、泌尿器科などの専門科でも受診が可能です。

出産後は、睡眠リズムの乱れや生活環境の変化によって、動悸、疲れ、めまいなどが現れる人もいます。これらの症状が強い人の中には、一時的な甲状腺機能の異常が現れていることがあります。

甲状腺機能異常とは、甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じることです。出産後の甲状腺機能異常の場合、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、身体の機能が活発化し、動悸、疲れ、めまいなどが現れることがあります。出産後、甲状腺機能異常が生じるのは、全妊婦のおよそ5%と低確率ですが、気になる症状がある場合は内分泌科・甲状腺専門医のいる病院などの受診を検討しましょう。

産褥期特有の気分の落ち込みはマタニティーブルーズが有名ですが、ほかにも産後うつや産褥期精神病などがあります。

マタニティーブルーズとは、産褥早期(出産後2週間以内)に約30%の人に生じる軽いうつ症状のことです。

代表的な症状として涙もろくなる、気持ちがふさぎがちになる、不安感が強くなる、集中力が低下する、ささいなことで怒りやすくなることなどが知られています。原因は、産後の急激なホルモンバランスの変化によるものと考えられています。

マタニティーブルーズの多くは一過性のものであり、少なくとも産後2週間を過ぎた頃にはよくなります。しかし、なかにはそのまま産後うつへと移行することもあるため、軽く見てはいけない症状ともいえます。

日本では、10~15%の方に産後うつが認められるというデータがあります。多くは産後2~3週間頃に発症しますが、3か月を過ぎた頃に発症することもあるため、産褥期を過ぎたあとも注意が必要です。産後うつの症状は、マタニティーブルーズと重なるものが多いですが、特に、以下のものが多いといわれています。

不眠:赤ちゃんが寝ている間なのに眠れないなど

自責:赤ちゃんや家族に対して愛情が湧かない、母親としての責任を果たせないことを責めてしまうなど

産後うつの症状が重いと、ほとんど何もできなくなるという方もいます。そのままにしていると自然に完治することは難しく、さらに悪化してしまう恐れもあるため、医療機関への早期の相談が重要です。

発症率は全妊婦の0.1~0.2%と低いですが、産褥期に幻聴、幻覚、幻視などの症状が現れ、錯乱状態などに陥る深刻な精神疾患です。自分自身や赤ちゃんに危害を加える可能性もあるため、入院治療が必要になることも少なくありません。

まとまりのない話が増えたり、突然興奮したりすることが目立つ場合は、早期の受診が必要な場合もあります。

出産後しばらくしても気持ちが晴れない、不安になりやすい、眠りたいのに眠れないことが増えた場合、まずは産婦人科へ相談し、必要があれば専門的な治療を受けられる心療内科や精神科などの病院を紹介してもらうのもひとつの方法です。

「こんなのは母親失格だ」「私だけなのではないか」などネガティブになったときは、気軽に周囲の家族や友人、医療機関などに相談するようにしましょう。

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