胎便吸引症候群の症状や治療方法のほか、胎便吸引症候群による影響などについてご紹介します。
胎便吸引症候群とは、胎便を吸い込んでしまった胎児に現れる呼吸障害のことです。
何らかの原因によって胎児が低酸素状態になると、腸の運動が活発になり、肛門の筋肉に緩みが生じて、羊水内に胎便とよばれる緑色の便を排出することがあります。羊水内に胎便を排出した児の約10%が、反射的にあえぐような動作を始めて、羊水内の胎便を吸い込んでしまい、胎便吸引症候群を発症します。胎児が胎便を吸い込んでしまうと、気道が塞がったり、肺が破れたりつぶれてしまったりするため、産まれてから正常な呼吸ができなくなることがあります。また、重篤な肺炎を起こしやすくなるともいわれています。
胎便吸引症候群は、妊娠36週(妊娠後期)以降に発生します。なぜこの時期に起こしやすいのかというと、排便反射とよばれる腸管の動きと便意を感じるしくみが、妊娠36週以降に確立されるためです。特に、妊娠42週以降の過期産の胎児は子宮内の羊水が減少しているため、胎便が排出された際に濃縮された状態となり、胎便吸引症候群を起こしやすいとされています。
胎便吸引症候群は、陣痛の起きていない時期に発生することはまれです。陣痛が始まった後や分娩時、分娩直後などに胎児や新生児が酸欠状態、仮死状態に陥ることが主な原因です。
胎便が空気の通り道である気道に詰まることで、正常な呼吸ができなくなります。また、完全に呼吸ができない状態にはなっていない場合も、吸い込んだ息を吐きだすことができず、肺が過剰に膨らんで一部が破ける“気胸”を発症することも少なくありません。
胎便の中に含まれている消化液や酵素などが、肺に化学的な炎症をおこし、ときに全身の炎症を引き起こします。
胎児は臍(いわゆるへその緒)から酸素を取り込んでいるため、肺にたくさんの血液が流れる必要はありません。出生して臍を切断されると、呼吸をして自分の肺から酸素をたくさん取り込み、取り込んだ酸素によって肺にたくさんの血液が流れるようになり、取り込んだ酸素を全身に運ぶことができるようになります。しかし、生まれた後に酸素をたくさん取り込むことができないと、胎児のときと同じように肺に血液が流れにくい状態が続き“新生児遷延性肺高血圧症”という状態になります。この状態は肺に血液が流れにくいため、低酸素となり、ときに治りにくく死を招くこともあります。胎便吸引症候群では、新生児仮死で生まれるため呼吸がうまくできないこと、胎便が空気の通り道である気道に詰まること、肺が破れること、などから正常な呼吸ができず、新生児遷延性肺高血圧症をしばしば合併します。
体内の酸素が足りない状態が続くと、唇と手足の先端が青紫色のように変色する“チアノーゼ”を引き起こすことがあります。肺から胎便が吸収されると、一時的に尿が茶褐色になることもあります。また、新生児の皮膚や爪、臍帯(へその緒)に胎便の色がついて黄色や緑色になることがありますが、長期的に残ることは多くありません。
胎便吸引症候群を発症した胎児や新生児は、新生児仮死になることがあり、最悪の場合、新生児死亡(生後4週未満の死亡)の可能性もあります。
必ず胎便が羊水中に排泄されており、生まれた新生児の肺から胎便がでてくる、尿が茶褐色になる、胸部レントゲン写真で肺炎がみられる場合に胎便吸引症候群と診断されます。
ほとんどの場合で呼吸障害があるので、人工呼吸器の装着や酸素を投与します。低酸素が続くときは、人工肺サーファクタントで気道を洗ったり、人工肺サーファクタントを肺の中に入れたりして呼吸状態を改善させます。また炎症を抑えるために胎便を取り除いてその影響を軽くします。
新生児肺高血圧症がみられたら、低酸素から回復するために、高い濃度の酸素や肺血管を広げるために一酸化窒素を吸入します。それでも低酸素が続くときは、体外式膜型人工肺という人工心肺装置を使います。また、新生児の安静が保てずに低酸素が続くときは、鎮静剤や筋弛緩剤で安静を保つことで改善する場合もあります。
低酸素脳症とは、何らかの原因によって脳へ十分な酸素が届かなくなることで生じる、脳細胞の死滅やそれに伴うさまざまな障害のことです。低酸素脳症による障害の程度ですが、ほとんど何も症状が生じないこともある一方で、知能の軽度な低下から、昏睡状態やけいれん、麻痺などの重篤なものまでさまざまです。また、脳性麻痺を引き起こし、将来的に運動障害などを発症するケースもあります。
吸い込まれた胎便はいずれ全てが新生児の体内に吸収されますので、その後に大きな影響はありません。しかし、胎便吸引症候群にかかると、新生児期に胎便により肺に強い炎症が起こるため、乳幼児期に気管支喘息がおこりやすいことがあります。
東京都立小児総合医療センター 新生児科 部長
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