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低出生体重児とは? ~定義とリスク、サポート体制~

低出生体重児とは? ~定義とリスク、サポート体制~
岡﨑 薫 先生

東京都立小児総合医療センター 新生児科 部長

岡﨑 薫 先生

目次
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低出生体重児とは、2,500g未満の体重で生まれてきた赤ちゃんのことで、全出生数における割合は約10%です。妊娠週数によらず出生時の体重のみで分けられる定義ですが、体の機能が未熟なまま生まれ、さまざまな問題を抱えることもあります。ここでは、低出生体重児の定義、低出生体重児になる原因、リスク、サポート制度などをご紹介します。

低体重児かどうかは、生まれたときの体重で判断します。2,500g未満で生まれた新生児(赤ちゃん)を低出生体重児としますが、以下のようにさらに三つの段階に分類されます。

  • 超低出生体重児:生まれてきたときの体重が1,000g未満
  • 極低出生体重児:生まれてきたときの体重が1,500g未満
  • 低出生体重児:生まれてきたときの体重が2,500g未満

出生体重が低いほど、心臓や目の障害が起こるリスクは高くなり、健康な状態で成長できる可能性も低くなる傾向にあります。

一方、体重は重ければ重いほどよいわけではありません。4,000g以上で生まれた新生児は"巨大児"とされ難産になりやすく、子どもが低血糖になりやすいなど母子共にリスクがあると考えられています。 標準範囲とされるのは2,500g以上4,000g未満で、この範囲内の体重で生まれた新生児は"正出生体重児"と呼ばれます。

低出生体重児として生まれてくる原因には“早産”と“胎児発育不全”の二つが考えられます。早産とは、妊娠22週~36週6日目までの出産のことをいい、生まれた時期が早ければ早いほど低出生体重児として生まれてくる確率が高く、将来の発達にも影響を及ぼします。

また、母親のお腹の中で胎児が十分に成長することができない胎児発育不全という状態の場合、妊娠週数に見合った体重よりも小さく生まれます。そのため、正期産の時期(妊娠37週以降)になっても標準とされる2,500gを超えない、もしくは妊娠30週になっても1000gを超えないケースもあります。このように、妊娠週数に比べて小さく生まれた新生児は、“不当軽量児”とされ、将来の発達や成長、成人病のリスクがあると考えられています。

低出生体重児、つまり2,500g未満で生まれた新生児は、全身の器官が十分に成熟する前に生まれることも多く、以下のようなさまざまなリスクを抱えています。

出生時の体重が少なければ少ないほど、肺や心臓など生きていくための重要な器官の機能が未熟であるため、新生児の死亡率は高くなります。ある調査で、低出生体重児と診断されてNICU(新生児集中治療室)に入った新生児の出生時体重と死亡率の関係を調べてみたところ、1,000g以下では8.4%、750g未満では21.1%、500g未満になると50%に及ぶという結果が出ました。

低出生体重児は出産時に何らかのトラブルがあったり、肺が未熟なまま生まれたりすることがあります。それらによって、生まれてすぐに呼吸をすることができず低酸素脳症になったり、脳にダメージを受けたりしてしまう可能性が高くなります。そのため、運動機能障害や筋肉のこわばりを引き起こす脳性麻痺の発症率が高い傾向にあります。また、目や心臓などの器官も未熟なまま生まれることで視力障害や心臓の病気を生じることも少なくありません。また、身体的な障害だけでなく低体重、特に極低出生体重児で生まれた新生児は知的発達も遅れることがあるとされています。

これらの障害は生まれてすぐに顕著に分かる場合もあれば、ある程度成長してから徐々に症状が現れるものもあります。特に、脳性麻痺は生まれてすぐに症状が現れると思われがちですが、ある程度成長した後に首が座らない、お座りできないなど発達の遅れによって気づかれることも少なくないのです。ただし、早産による低出生体重児の場合、生後3歳頃までは、予定日から数えた修正月齢が発達や離乳食の指標として用いられています。生まれた日から数えた暦月齢とは異なりますので注意しましょう。たとえば、一般的に首が座るのは生後4か月といわれています。しかし、予定日が8月にもかかわらず、5月に出生した早産の低出生体重児の場合、首が座るのは5月から数えて4か月後の9月ではなく、予定日である8月から4か月後の12月頃という見込みになります。

また、知的な発達の遅れも、学童期に入ってから授業中に座っていられない、成績が極端に悪いといったことから発見されることもあります。このため、低出生体重児は成長する過程でも慎重に長い間経過を見ていく必要があるのです。

低出生体重児が生まれると、母親や家族の心の中には子どもが産まれてきた喜びと、将来に対する不安がひろがります。

医療や福祉の支援が必要な低出生体重児であった場合、どのようなサポートを受けられるのでしょうか。

保健師とは、病院や保健所、市町村などに在籍し、患者や住民の健康や病気に関する悩みの相談に乗ってくれる人のことです。看護師の資格も持っているので、当然ながら医学的な知識もあります。看護師の視点から保健指導や療養指導ができるため、子どもを育てるうえで困ったことがあった際の心強い味方といえるでしょう。

子どもによっては、自宅で高度な処置が必要になることがあります。訪問看護ステーションを利用すれば、看護師の資格を持ったスタッフが訪問して必要なケアを提供してくれます。

自治体や医療機関で開催される療育相談などの支援プログラムは、子どもだけでなく家族同士にとっても交流や情報交換の場になります。療育や訓練などが必要な場合には、地域の通院施設やリハビリ施設を紹介してもらうことも可能です。

低体重児の予防接種には不安があるかもしれませんが、日本のワクチンでは今のところ低体重児と副作用の関連性は認められていません。一般の乳児と同じように、生まれた日から数えた“暦月齢”でかかりつけ医師と相談し、予防接種を確実に開始していくことが望ましいとされています。

自治体などの公的機関では、さまざまな経済的、人的支援を受けることができます。

たとえば、人工呼吸器管理など自宅で高度な医療が必要となった場合は、看護師の資格を持ったスタッフによる訪問ケアを実施する制度が整っています。そのため、ご家族が24時間付きっきりで看病をする必要はありません。

また、障害の程度によっては身体障害者手帳や療育手帳の交付を受けることができます。医療費などの助成を受けることも可能なので、長期療養による経済的な負担を軽減することができるでしょう。さらに、重度な脳性麻痺を発症しているケースでは条件によって補償金を申請することもできます。

これらの支援を受けるには、さまざまな要件があるので、まずは担当医や医療機関のソーシャルワーカーなどに相談するとよいでしょう。

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