概要
低出生体重児とは、2,500g未満で出生した児のことです。
近年では早産児や多胎児が増えていること、低出生体重児の救命率が向上したことなどの影響により、低出生体重児の割合は増加傾向にあります。しかし、医学の進歩により低出生体重児の死亡率は激減しているのが現状です。
低出生体重児は、各臓器の機能が十分に成熟しておらず子宮外での生活に適応できる能力が低いことも多いため、呼吸や哺乳などの補助を要することも少なくありません。また、出生前や出生後にさまざまな病気を合併しやすいため、適切な治療を行っていく必要があります。
原因
低出生体重児は、出生体重が2,500g未満の児のことを指します。
低出生体重児が生まれる原因はさまざまですが、早産と子宮内発育不全に大きく分けられます。
低出生体重児か否かは出生体重のみで判定されるため、在胎週数は判定基準になりませんが、妊娠22週0日~36週6日までの間に出生に至る早産の場合は低出生体重児が生まれやすいとされています。早産の原因としては、妊娠中の子宮内の感染症や子宮頸管無力症などが代表的です。
一方、胎児の子宮内発育不全にはさまざまな原因が考えられており、若年出産や高齢出産、低栄養や喫煙歴、妊娠高血圧症候群など妊娠時の病気といった“母親側の原因”、胎盤の大きさや位置の異常、多胎妊娠(双子や三つ子など)といった“胎盤やへその緒の原因”、染色体疾患や子宮内での感染症など“胎児側の原因”が挙げられます。
症状
低出生体重児は各臓器が十分に成熟していない状態で誕生することが多く、出生体重が少ないほど重篤な障害を起こしやすいとされています。
肺を膨らませる物質が不足しているなど呼吸障害がみられることが多いです。腸の未熟性や流れる血液の不足などにより、腸に穴が開きやすくなっています。また、血圧の変動が大きいと脳出血が起こりやすくなります。
そのほか、免疫力が不十分でないため重症の感染症に罹患しやすい、嚥下機能が未熟であるため哺乳ができない、網膜血管が未熟なため未熟児網膜症を発症し場合によっては失明する、などさまざまな症状がみられます。
また、心臓やお腹の手術が必要な病気や染色体疾患などを持って生まれてくる低出生体重児もいます。
検査・診断
低出生体重児はさまざまな症状を引き起こしやすいため、疑われる症状によって次のような検査を行っていく必要があります。
血液検査
低出生体重児は低血糖や黄疸、貧血などになりやすいため、全身の状態を評価する目的で血液検査を行う必要があります。また、感染症にかかるリスクも高いため、炎症の有無を調べるために元気がない、消化が悪いなどの症状がみられるときは血液検査が必要になります。
画像検査
低出生体重児は、呼吸障害や消化管の異常、脳出血などを起こすリスクが高い一方で症状が分かりにくいため、疑われる病気に対しては比較的積極的に、胸部X線検査、頭部超音波検査、腹部超音波検査などの画像検査を行うことがあります。
また、先天性心疾患が疑われるときは心臓超音波検査を行います。
治療
低出生体重児は、自力での呼吸が可能で合併症がない場合は特別な治療が必要ないことも少なくありません。しかし体が未熟な状態で出生するため、各臓器の成熟が子宮外生活に適応できない場合は十分な管理を行っていく必要があります。
まず、自力で十分な呼吸ができない場合は人工呼吸器管理や酸素吸入などが必要であり、多くは温度や湿度などを細かく調節できる保育器での管理が必要になります。また、人工呼吸器管理でも酸素濃度が低い場合は、肺の機能を維持するためのサーファクタントと呼ばれる物質の肺への投与が行われます。十分に哺乳ができないときは、鼻や口から胃に管を通して搾乳した母乳やミルクを注入する治療が行われます。
そのほか、低出生体重児は臓器の未熟さによってさまざまな症状を引き起こすため、それぞれの症状に合わせた治療が必要です。具体的には、重症な先天性心疾患などの生まれつきの病気に対する手術、網膜症に対するレーザー治療などが挙げられます。
予防
必ずしも全ての原因を予防することはできませんが、母が心身ともに健康な状態を保つことは重要です。そのために、定期的に妊婦健診を受けて、胎児の発育遅延や妊娠経過の異常を指摘されたときは医師の指示に従った対処や治療を受けるようにしましょう。
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