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未熟児網膜症とは~赤ちゃんの視力低下や失明の原因になる~

未熟児網膜症とは~赤ちゃんの視力低下や失明の原因になる~
岡﨑 薫 先生

東京都立小児総合医療センター 新生児科 部長

岡﨑 薫 先生

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赤ちゃんは約10か月もの間、お母さんのおなかの中で成長します。そのスピードは目覚ましいもので、小さな細胞だった受精卵が“ヒト”として生きられるよう成長していくのです。しかし、予定よりも早く産まれてしまった赤ちゃんは体の機能が十分に成熟しておらず、さまざまな病気や症状を引き起こすことがあります。未熟児網膜症もそのうちのひとつです。

ここでは、未熟児網膜症とはどのような病気なのか、原因、症状、治療方法や治療できる診療科をご紹介します。

ものを見るために必要な網膜の血管に異常が生じることで、視力低下や失明を引き起こす可能性のある病気です。

早産との関連が強く、多くが26週以下で出生した新生児にみられます。

眼球内にある網膜(見たものを映し出す部位)には、酸素や血液を届けるための網膜血管が張り巡らされています。この血管は妊娠36週頃に完成するものです。しかし、それ以前に産まれてしまうと、網膜血管が異常増殖したり異常な方向に張り巡らされてしまったり、うまく発達することができなくなることがあります。その結果、薄く脆い構造の網膜が引っ張られ、網膜にダメージを与えることで視力の異常を引き起こすことがあるのです。

未熟児網膜症は、産まれた週数が早いほど発症率や重症度が高くなるといわれています。一般的に、出生時体重が1,800g以下、もしくは在胎週数(姙娠週数)34週以下で産まれると未熟児網膜症の発症リスクが高くなり、出生時体重1,500g未満では約60%、在胎週数28週未満では100%近くなるといわれています。

未熟児網膜症は、症状の進行スピードによってⅠ型とⅡ型に分けることができます。

Ⅰ型未熟児網膜症:比較的ゆっくり進行するタイプの未熟児網膜症です。

Ⅱ型未熟児網膜症:激症型(症状の進行スピードが速いタイプ)のため、失明する危険性が高いものです。超低出生体重児(出生体重1,000g未満)に起こりやすいとされています。

未熟児の赤ちゃんは、未熟児網膜症以外にも近視乱視斜視といった眼のトラブルを抱えていることが多く、これらを合併しているケースもあります。

上でも述べたように、Ⅱ型は急激に症状が進行していきますが、Ⅰ型の場合はゆっくりと次のような段階で少しずつ進行していきます。

第1段階

網膜血管先端部分と無血管野(網膜血管が伸びていない部分)の間に、境界線がつくられます。

第2段階

第1段階でできた境界線が厚くなります。

第3段階

境界部に網膜血管の異常増殖が起こり、硝子体(しょうしたい)(水晶体後方にあるゼリー状の組織)へ向かって異常血管が伸びていきます。

第45段階

血管など増殖した組織が網膜を引っ張るようになり、やがて網膜が破れて網膜剥離を起こすことがあります。

Ⅰ型は症状の進行が遅く、自然に治ることもあることから、第Ⅱ段階までであれば経過観察をします。第Ⅲ段階まで進み自然に治る可能性が低いと判断されれば、治療を視野に入れます。

Ⅱ型は症状の進行が速いことから、診断がついたらすぐに治療を開始します。

未熟児網膜症はレーザーを当てて網膜血管の異常増殖を抑える治療を行います。レーザーを当てても症状が進行する場合には、強膜輪状締結術や硝子体手術などを行うことがあります。レーザー以外に、血管内皮増殖因子(VEGF)を抑える抗VEGF抗体の眼内(硝子体内)注射が新たな治療法として注目されています。

一般的に、未熟児網膜症を起こしうる早産時には、小児科や眼科での厳重な検査とフォローアップが行われます。もともと新生児は視力が発達しておらず、網膜剥離に進行したとしても自覚症状はありません。

このため、医師による検査のみで網膜症の状態や視力障害の有無を判断しなければならないので、定期的に検査を繰り返すことが非常に重要です。未熟児網膜症の発症の危険性や注意点、今後の検査の予定などは、担当医から詳しく説明されることが多いです。赤ちゃんの視力を守るためにも、指示通りに検査や治療を受けるのがよいでしょう。

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