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微弱陣痛の原因は母体・胎児どちらにもある~診断基準と対処方法~

微弱陣痛の原因は母体・胎児どちらにもある~診断基準と対処方法~
牧野 真太郎 先生

順天堂大学大学院医学研究科 産婦人科学教授、順天堂大学医学部附属浦安病院 産婦人科科長

牧野 真太郎 先生

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陣痛が弱い(微弱陣痛)と分娩に悪影響を与える可能性があることをご存知でしょうか。ここでは微弱陣痛とはどのような状態なのか、微弱陣痛の原因、微弱陣痛が生じた場合の分娩方法についてご紹介します。

微弱陣痛とは、通常よりも陣痛が弱かったり、間隔が長かったりする状態のことです。微弱陣痛は遷延分娩(せんえんぶんべん)(分娩が遅くなること)の原因になることもあります。

陣痛というと赤ちゃんが出てくるときの痛みと認識されがちですが、本来は分娩時に子宮が赤ちゃんを体外へ押し出そうとして収縮すること自体を指しています。

分娩の最初の陣痛は短くて痛みも少なく、陣痛周期(陣痛が生じる間隔)が長いことがあります。時間が経つにつれ下腹部の収縮(痛み)は強く長引くようになり、陣痛周期も短くなっていきます。

日本産科婦人科学会では、陣痛の程度は子宮内圧によって判断すると定義されています。しかし実際には、陣痛周期と陣痛持続時間を参考にすることが一般的です。なぜなら、子宮内圧を測定するためには、子宮内に特別な機器を挿入しなければならないからです。そのため、大多数の分娩施設では子宮内圧の測定は行っていません。

子宮口の開き具合により、6分30秒以上(4~6cm)、6分以上(7~8cm)、4分以上(9~10cm)が陣痛周期の目安とされています。子宮口が完全に開いてから(分娩第2期)は、初産婦では4分以上、経産婦では3分30秒以上が微弱陣痛の目安となります。つまり、正常であればこれらの間隔よりも頻繁に陣痛を生じるということです。

子宮口の開き具合により、40秒以内(4~8cm)、30秒以内(9cm~第2期*)とされています。つまり、正常な陣痛であればこれらの時間よりも長く持続するということです。

*第2期:分娩第2期のこと。子宮口が全開してから赤ちゃんが出てくるまでの期間を指す。

微弱陣痛の原因は、原発性微弱陣痛か続発性微弱陣痛によって違うと考えられています。

原発性微弱陣痛とは、分娩が始まったときから陣痛が弱い状態です。原因としては、

器質異常:子宮の形に何かしらの異常がある状態です。子宮奇形や子宮発育不全など先天性(生まれつき)の問題や、子宮筋腫などの病気が考えられます。

過伸展:通常の妊娠よりも子宮が引き伸ばされた状態です。原因としては、多胎妊娠(双子、三つ子)や羊水過多などが考えられます。

ほかにも母親が体力を消耗しやすい病気になっていたり、逆子などの胎位異常、肥満、精神的な不安などの問題を抱えていたりすると、それらの影響により原発性微弱陣痛になることがあります。

途中から陣痛が弱くなると、続発性微弱陣痛と診断されます。続発性微弱陣痛の原因としては、

産道異常:赤ちゃんの通り道のトラブルで、狭骨盤(きょうこつばん)軟産道強靱(なんさんどうきょうじん)(産道が固くて赤ちゃんがうまく通れない)などがあります。

娩出物異常:娩出物とは分娩によって体外に出されるもの、つまり赤ちゃん自身のことを指します。主に巨大児が該当します。

その他の原因としては、胎位(子宮頸管に対する赤ちゃんの頭、顔の向き)や胎勢(赤ちゃんの体勢)異常、回旋異常など赤ちゃん側の問題や、子宮筋や母親の疲労、麻酔による影響など母親側の問題が考えられます。

原発性、続発性微弱陣痛ともに、分娩が長引く場合には子宮収縮薬を使用することがあります。一般的には点滴による持続投与を行い、陣痛を徐々に強めていく方法です。担当医からメリットと注意点の説明があるので、よく説明を聞いてから開始してもらうようにしましょう。

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  • 順天堂大学大学院医学研究科 産婦人科学教授、順天堂大学医学部附属浦安病院 産婦人科科長

    牧野 真太郎 先生

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