前置胎盤に癒着胎盤を合併している場合、分娩後に母体の生命を左右するほどの大量出血が予想されます。出血のリスクは前置胎盤よりも高く、子宮全摘出術を行わねば救命できないケースがほとんどです。また、子宮摘出の処置中にも大量出血を起こす危険性は極めて高いため、医療従事者は安全かつ迅速に手術を行うための技術導入に力を注いでいます。本記事では、出血量を減少させる方法として近年注目されている「動脈バルーンカテーテル」について、順天堂大学医学部婦人科講座准教授の牧野真太郎先生にご説明いただきました。
バルーンカテーテルとは、バルーン(医療用の水風船)がついた細い管状の医療機器(カテーテル)のことを指し、手術中、一時的に血流を遮断するために使用されます。具体的には、血管内にカテーテルを挿入して適切な位置にバルーンを留置し、これを膨らませることにより血流を遮断します。
前置癒着胎盤の手術では、腹部大動脈、総腸骨動脈、内腸骨動脈のいずれかにバルーンを留置します。
バルーンを留置する部位は、前項で挙げた3か所であれば基本的にどこでも構いません。近年では、総腸骨動脈バルーンを行う施設が増えていますが、当院では、多くの場合最も迅速にバルーンを留置でき、止血効果も高い腹部大動脈を選択しています。
前置癒着胎盤が強く疑われる症例では、帝王切開術を行う前にあらかじめ動脈にバルーンカテーテルを挿入しておき、胎盤が剥がれて出血したときや、出血をきたしやすい膀胱を剥離する前に、このバルーンを膨らませて血流を遮断します。
近年、総腸骨動脈へのバルーン留置が増えている理由は、前置癒着胎盤の際に血流が増加する外腸骨動脈系の血流も遮断できるためです。しかし、総腸骨動脈バルーンカテーテルには、固定が難しいというデメリットがあります。総腸骨動脈は、本来下肢へと血液を供給している太い動脈です。患者さんの足が動いてしまうなどしてバルーンが下方へずれてしまうと、かえって子宮への血流が増加してしまうというリスクもあるのです。
母体の命を守るために、最も重要なことは癒着胎盤かどうかを事前にMRIや超音波検査で見極めることです。「術前の事前診断は難しい」というのが癒着胎盤の一般論ですが、検査の精度も上がり、「強く疑う」ことは可能な時代になっています。
また、これは私の考えですが、たとえ術前に癒着胎盤だと強く疑えないケースでも、帝王切開の既往(経験)がある前置胎盤の方など、癒着胎盤のリスク因子がある方の帝王切開は、全例においてバルーンを留置してから臨んだほうがよいのではないかと考えます。開腹後に癒着を起こしていないとわかれば、バルーンを使用しなければいいだけのことです。今現在も前置癒着胎盤で亡くなられる方がいるのですから、最も回避すべきリスクへの対応を徹底するべきであると考えます。
順天堂大学大学院医学研究科 産婦人科学教授、順天堂大学医学部附属浦安病院 産婦人科科長
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