出産後の産褥期には、お母さんにさまざまなトラブルが起こる可能性があるため注意が必要です。
今回は、戸塚共立レディースクリニックの産婦人科部長である三原 卓志先生に出産後に必要なケアや産褥期における注意点などについてお話を伺いました。
出産後からは、母乳育児の確立を進めていきます。ただし、当院では必ずしも母乳育児をおすすめしているわけではなく、それぞれのお母さんのニーズに合わせて指導を行っています。
授乳をしている間は乳腺炎で悩まれる方もいらっしゃいます。乳腺炎は母乳が乳腺に詰まることで起こる場合と乳管から細菌感染することで起こる場合があります。前者は特に初産婦の方に多くみられる乳腺炎です。
当院がかかりつけとなっている方に関しては、乳腺炎といったトラブルをはじめ、母乳育児に関する悩みについて、母乳外来で随時相談を受け付けています。
出産後、お母さんの体が出産前の状態に戻るまでの期間を“産褥期”といいます。産褥期は一般的に産後6~8週間ほどです。
産褥期は血圧が上がりやすい状態にあるため、しっかりと血圧管理を行う必要があります。血圧が上昇してしまうと、脳内出血などの合併症が起こる危険性もあります。
そのほか、分娩終了から24時間以降、10日以内に、38℃を超える熱が2日以上続くことがあり、これを産褥熱といいます。産褥熱の原因として多いのが、悪露*が子宮内にたまることによって起こる子宮内感染症です。発熱のほか、下腹部痛などが現れることもあります。
*悪露:産褥期に子宮や腟から排泄される分泌物。
産褥期は精神的なトラブルが起こりやすい時期でもあり、実際に精神症状が現れることを、マタニティブルーズといいます。マタニティブルーズは出産後の女性のおよそ30~50%が経験するともいわれています。具体的には、急に涙が出始めて止まらなくなったり、イライラしたり、落ち込んだり、人によりさまざまな症状が現れます。その症状の多くは一時的なもので、産後10日程度で治まっていくため、過度に心配することはありません。
一方で、この状態が長く続くことで“産後うつ”になる可能性もあります。マタニティブルーズの症状が強い方や、出産前に精神科や心療内科に通院されていた方などは注意が必要です。
横浜市では、産後うつをできるだけ早期に発見するための取り組みを行っています。それに伴い、当院でもこれまで退院後の1か月健診のみ行っていたところ、2週間健診も実施するようになりました。これにより、お母さんの精神的なトラブルに対して早期対応が可能な体制となっています。
赤ちゃんと2人きりの時間が長くなることでマタニティブルーズを発症してしまう方もいるため、積極的に外部と交流を持つことも大切です。当院では、マタニティブルーズを防ぐためにも、同時期に出産された方が集まって、赤ちゃんと一緒に参加できるエクササイズ教室を開催しています*。
そのほか、赤ちゃんとのコミュニケーションの一環で行うベビーマッサージ教室や、妊娠中に受けることができるプレママサロン、HAPPY BIRTHクラスなども開催しています**。こうしたマタニティクラスを活用することで、妊娠中から出産後に生じる疑問や不安をうまく解消しながら、赤ちゃんと向き合っていただければと思います。
*2020年8月現在、新型コロナウイルス感染症の影響で次回開催日未定。当院で分娩された場合の参加費は1回500円。
**2020年8月現在、オンラインにて開催。ベビーマッサージ教室は予約制、参加費無料。プレママサロン、HAPPY BIRTHクラスは1回500円。
出産は非常に体力を消耗しますし、体への負担も大きなものです。そのため、病室ではできる限りゆったりと過ごしていただければと考えています。全ての病室も、洗面台、トイレ、シャワーを完備しており、しっかりと出産後の体を癒やしていただけると思います。また、病室は全室個室の母児同室となっていますが、空間的にもゆとりのあるお部屋にしていますので、赤ちゃんとの時間をゆったりと過ごしていただけるのではないでしょうか。
当院では、産後ある程度体力が回復した段階で、お母さんへの労いと赤ちゃんの誕生を記念する意味を込めたお祝い膳をご提供しています。季節の食材を使用しながら、お母さんの健康にも配慮したフランス料理風のメニューとなっています。
妊娠は決して病気ではありません。もちろん、妊娠中に最低限気をつけるべき点などもありますが、妊娠したからといって生活を180°変えなくてはいけない、何をしてはいけない、何をしなくてはいけない、などと過度に心配しないでいただければと思います。
また、現在はさまざまな媒体で、妊娠から出産に関する情報が収集できます。一方で、そうした媒体で得られる情報はあくまでも一般的な総論であって、個々のことは分からない部分も多いと思います。妊娠や出産は、人生のなかで何十回も起こることではありません。そのため、分からないこと、不安なことがあるのは当然です。そのようなときには、ぜひ1人で悩まずに医師や助産師などに相談をしていただければと思います。そして、医師や助産師が適切なアドバイスをするためにも、妊婦健診は定期的に受けていただければと思います。
戸塚共立レディースクリニック 副院長
三原 卓志 先生の所属医療機関
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