にゅうせんえん

乳腺炎

最終更新日
2021年12月23日
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2021/12/23
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

乳腺炎とは乳腺に炎症が起こり、乳房の一部に圧痛、熱感、腫れなどの病変がみられる病気です。乳房の症状以外にも、38.5℃以上の発熱や悪寒、インフルエンザ様の体の痛みなどの全身症状がみられることもあります。

乳腺炎は授乳中の女性であれば誰にでも起こる症状です。発生頻度には幅があり、約2~33%程度といわれています。産後6週間以内に起こることが多く、特に産後2~3週間にもっとも起こりやすいといわれていますが、授乳中のどの期間にもみられることがあります。

原因

乳腺炎は主に乳汁(母乳)のうっ滞と感染によって起こります。乳腺炎は乳腺の炎症ですが、必ずしも感染を伴うとは限りません。

乳腺炎が起こるきっかけとしては、以下のようなものがあります。

  • 乳頭に傷がある
  • 授乳回数が少ない
  • 授乳の間隔が開いている
  • 赤ちゃんが上手く飲めていない(吸いつきが弱い、うまく吸えていないなど)
  • 母親や赤ちゃんに病気がある
  • 乳汁の分泌が多い
  • 授乳を急にやめた
  • ブラジャーなどで乳房が圧迫されている
  • 乳頭に白斑がある、乳管口や乳管の詰まりがある
  • 母親のストレス、疲労

症状

乳腺炎にはさまざま症状があり、症状や乳房の状態などによって複数の分類があります。

主に用いられる分類の1つにうっ滞性乳腺炎と感染性乳腺炎があり、それぞれ以下の症状があります。

うっ滞性乳腺炎

乳管の閉塞(へいそく)や乳汁のうっ滞が長引くことで起こる乳腺炎で、細菌感染は認められません。

片側の乳房の一部が赤くなったり、しこり、腫れ、圧痛、熱感などが認められたりします。軽い発熱がみられることもあります。

感染性乳腺炎

うっ滞性乳腺炎の症状がみられて12~24時間経過しても状態が改善しない場合に疑われる乳腺炎で、細菌感染を伴ったものです。うっ滞性乳腺炎と同様の乳房の症状に加えて、発熱や悪寒、体の痛みなどの全身症状がみられます。また、乳汁中のナトリウム濃度が上昇するため乳汁がしょっぱくなり、赤ちゃんが母乳を嫌がることもあります。

検査・診断

乳腺炎の診断は、主に問診、視診、触診によって行われます。問診(自覚症状、授乳の様子、家族や生活の様子など)、視診(母親の全身状態や乳房の状態など、授乳の仕方など)、触診(乳房の張りの状態や乳汁うっ滞の様子など)から乳腺炎の有無を評価します。また、赤ちゃんの状態(健康状態や月例など)が評価に有用であることもあります。

乳腺炎のケアは助産師が中心となることが多いため、母親が乳房の痛みなどを自覚して助産所を訪れることが多いです。

感染性乳腺炎への移行が疑われた場合は乳腺外科医による診察が必要になることもあります。

治療

乳腺炎は時間の経過とともに状態が変化し、状態によって処置が異なります。うっ滞性乳腺炎の段階ではセルフケア(効果的な授乳)と助産師によるケアで症状が改善することが多いですが、感染性乳腺炎や、それに続く(のうよう)の形成がみられる場合には、専門医による投薬治療や外科的処置が必要になることもあります。

セルフケア

うっ滞した乳汁を排出するために、頻繁に授乳を行います。また、適切な授乳方法(姿勢やくわえ方など)ができているかを確認することも大切です。必要に応じて、助産師からの指導を受けます。

助産師によるケア

乳頭に傷があるなどで直接授乳ができない場合や、直接授乳で十分に乳汁が飲み取られない場合などは、助産師による搾乳が必要になることがあります。

また、助産師は母親の日常生活の様子を聞き取り、十分な休息が取れるように支援を行うこともあります。

専門医による治療

乳腺炎の症状が現れてから24時間以上継続しても症状が改善しない場合は、医師による治療が必要になることがあります。

医師による治療では、治療薬(解熱鎮痛薬や抗菌薬)の処方や、膿瘍が形成されている場合は切開による排膿処置が行われます。

予防

乳腺炎の再発を防ぐため、乳房が張りすぎないように助産師の支援を受けながら適切な授乳や搾乳(乳管閉塞などがみられる場合)を行うことが大切です。また、しこり、痛み、発赤などの乳汁うっ滞の徴候がみられた場合は、休息を十分に取り、授乳回数を増やす、いろいろな方向から飲ませるなどの工夫を行うようにします。疲労が乳腺炎を引き起こすこともあるため、家族や民間サービスなどの支援を受けながら十分な休息を心がけるとよいでしょう。

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