概要
胎児機能不全とは、お腹の中にいる赤ちゃんが、「子宮の中で元気な状態(酸素不足になっていない」といい切れない場合を指します。胎児機能不全はもともと英語でNRFS(Non Reassuring Fetal Status)という言葉を日本語に変換した用語で、かつて日本では「胎児仮死」という言葉が使用されていました。しかし、これは適切ではないと考えられたため、胎児機能不全という言葉が使われるようになりました。
胎児機能不全は「子宮の中で元気な状態である」といい切れない場合に用いられますが、これは「実際には苦しい状態ではなく元気だった」という可能性を含んでいます。
通常、胎児の状態は分娩監視装置という機器を用いて、連続的に胎児の心拍数と子宮収縮を記録することにより判断します(胎児心拍数陣痛図、CTG)。陣痛がないときの検査はノンストレステスト(NST)と呼ばれます。胎児心拍数の波形を見ることにより、「ほぼ確実に元気」といえる場合と、「かなりの確率で非常に具合が悪い」といえる場合は、明確に判断ができます。
しかし、その両極端な状態の間は、心拍のリズムだけでは判断が非常に難しく、そのような状態はすべて「胎児機能不全:NRFS」あるいは「胎児機能不全の疑い」とされます。専門的には日本産科婦人科学会が胎児心拍数波形のレベル分類(レベル1から5)を策定しており、レベル3以上を胎児機能不全とします。
原因
胎児機能不全の原因は、主に赤ちゃんの酸素不足と考えられています。赤ちゃんは子宮の中にいる間、自分で呼吸をして酸素を取り込むことはできませんので、お母さんの血液を通して酸素をもらいます。つまり、血液の流れが悪くなると、酸素不足となってしまいます。
たとえば、胎盤か臍帯に異常がある場合(常位胎盤早期剥離、胎盤機能不全、臍帯圧迫、臍帯脱出など)、陣痛が強すぎる場合(過強陣痛)に加え、子宮内の感染なども原因となりえます。臍帯脱出(赤ちゃんより先にへその緒が子宮外へ出てきてしまうこと)や臍帯圧迫(へその緒が子宮の中で圧迫されること)、過強陣痛は分娩の最中に多く発生しますが、胎盤機能不全や常位胎盤早期剥離は分娩前の妊娠中に多く発生します。これらのなかでも、常位胎盤早期剥離は予知が難しく、脳性麻痺のもっとも大きな原因であるため、どうにか早期発見や予測ができないかと世界中で研究がされていますが、2018年現在、まだ予防法などは確立されていません。
症状
胎児機能不全は、お腹の赤ちゃんが、子宮の中で元気な状態といい切れない場合を指します。お腹の赤ちゃんの状態を示す言葉であるため、通常、お母さん自身には特別な症状が現れません。
しかし、胎児機能不全の状態がある程度の時間続いてしまうと、赤ちゃんが子宮の中であまり動かなくなってしまいます。そのため、胎動が減少していると感じることはあります。
検査・診断
主に赤ちゃんの心拍数が不安定になることで診断されるため、分娩監視装置という機器を用いて、連続的に胎児の心拍数と子宮収縮を記録することにより判断します。超音波検査で、何かしらの胎児機能不全を疑うサインがみつかったときにはこのようにして心拍確認が行われますし、逆に心拍確認で異常なリズムが認められた場合には、超音波検査で詳しく赤ちゃんの状態をみることもあります。
治療
胎児機能不全と診断されたら、そのときの妊娠週数や、胎児の発育の程度を総合的に判断し、すぐにお腹の中から出してあげたほうがいいのかを判断します。たとえば、未熟児の時期であれば、入院管理として慎重に経過観察を行うこともありますが、必要であれば緊急帝王切開術が実施されます。もし分娩中に診断された場合で、短時間のうちに経腟分娩ができると判断されるようであれば吸引や鉗子による経腟分娩を試みますが、多くの場合は緊急帝王切開術が行われます。
原因が常位胎盤早期剥離だった場合、母体の血液の凝固障害から大量出血が起こって出血性ショック状態に陥ることがあります。その場合、お母さんの生命を助けるために、輸液や輸血などの治療も必要になります。
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