概要
子宮破裂とは、「主として分娩時に起こる子宮体部ないしは子宮下部の裂傷である」と定義されています。完全と不全とに分類されており、完全子宮破裂とは子宮壁が全部裂けるもので、不全子宮破裂とは子宮の外側は裂けずに残っているものとされます。
原因
原因として外傷性と自然に起こるものとに分類されます。
検査・診断
完全子宮破裂は、異常な腹痛、過強陣痛、不穏(行動が過剰で落ち着かないこと)、胎児機能不全などといった症状を起こします。NST(ノンストレステスト)と呼ばれる胎児心拍数陣痛モニターで異常心拍パターンを認めることが多いとされ、症状やモニターから診断します。超音波検査により、子宮表面や子宮内、子宮の外側(腹腔内)に血腫や血液貯留がみられこともあります。
治療
完全子宮破裂を起こした場合、胎児死亡率は高いことが知られており、速やかに帝王切開を行い、救命を目指します。母体は出血多量になり、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの血液凝固異常(出血が続く状態)を合併することが多いので、輸血など必要な治療を行いながら帝王切開を施行します。同時に裂傷を縫い合わせますが、出血が止まらず母体の命が危険な場合は子宮全摘術を行うこともあります。
不全子宮破裂は、定型的な症状をきたしにくく、分娩後に診断されることもあります。分娩後のお母さんと赤ちゃんの経過は比較的よいとされています。ただし、無症状のまま裂傷を起こし血腫がどんどん広がり出血多量になる場合もあり、産後の状態の変化に注意してみていく必要があります。分娩後に出血が止まらない場合は、子宮全摘や裂傷の縫合などに手術が必要になることもあります。
なお、近年は子宮動脈塞栓術といって、子宮につながる動脈を一時的に遮断することにより、子宮の温存(残すこと)が可能となる治療も増えており、施設の状況によって検討されます。
子宮破裂はお母さん、赤ちゃんともに緊急治療が必要な状態です。状況によっては最善を尽くしても救命できない場合もあります。
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