検査・診断
前置胎盤や低置胎盤の診断は妊娠20週以降に、経腟超音波によって行います。低置胎盤の診断は、内子宮口とそれに最も近い胎盤の端との距離が2 cm以内の状態を目安とします。ただし、妊娠後期に子宮が伸展するとこの距離は長くなるので、臨床診断は最も近い健診時の所見で行います。胎盤の状態や施設によっては、胎盤の癒着の程度や詳しい位置を調べるため、妊娠中にMRI検査を行なうこともあります。
治療
妊娠36~37週時になっても低置胎盤の状態が解消されない場合には、一般的に経腟分娩にくらべ帝王切開の出血量は多いとされていますが、分娩時の出血コントロールを行うために予定帝王切開を選択することがあります。
また、低置胎盤で経腟分娩を行う場合でも、分娩中の出血量がコントロールできないと判断した場合は緊急帝王切開に切り替わることがあります。分娩が始まり子宮口が開いてくると出血が起きることが多いですが、分娩が進んで胎児の頭が下がってくると、出血部位が圧迫され止血することがあります。この場合は経腟分娩で生まれることを期待できます。
前置胎盤や低置胎盤は、胎盤が出た後に出血が多くなることがあります。分娩後の子宮は収縮することで止血します。子宮の上の方(子宮体部)は収縮する力が強いのですが、子宮の下の方(子宮下節)は収縮する力が弱いといわれています。低置胎盤は子宮下節に付着しているため剥離面の子宮収縮が弱くなりやすく、通常の止血機能が十分にはたらかず出血量が多くなりやすくなります。そのため、分娩前後の出血に備えてあらかじめ自己血を貯血しておくこともあります。
また、子宮収縮が不良時は子宮収縮薬を使用しますが、出血コントロールが悪い場合は、子宮の中にバルーン(風船)を入れ、膨らませて子宮の内側から圧迫したり、子宮動脈塞栓術(子宮を栄養する血管を一時的に遮断する)を行ったりすることがあります。それでも上手く行かないときは、母体救命のため手術で子宮摘出を行います。
低置胎盤の分娩方針については、施設によって異なります。緊急時に対応可能な施設では、出血などのリスクを説明したうえで経腟分娩を行うこともあります。実際、適切な管理をすることで、経腟分娩に成功している方もいます。担当医と十分に話し合い、分娩方針を決定してください。
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