概要
勃起障害(Erectile Dysfunction:ED)とは、性行為において十分な勃起が得られない、または維持できないために満足な性行為を行えない状態のことです。以前はインポテンスと呼ばれましたが、差別的であることから勃起障害(ED)と呼ばれるようになりました。
日本での勃起障害患者数は約1,000万人以上いると推計されており、約30%の夫婦において「勃起障害(ED)の経験がある」と回答しています。また勃起障害(ED)が男性不妊の1つであることも判明してきました。
原因
勃起障害(ED)は大きく分けて、下記3つに分けられます。
- 心因性:心理状態によって勃起できるときと勃起できないときがあるもの
- 器質性:何らかの病気が原因となって勃起できなくなるもの
- 混合性:上記2つの特徴を合わせ持つもの
心因性勃起障害
自慰行為における勃起は可能であっても、性行為のパートナーとなる女性との関係がうまく作れないような場合、また極度の緊張に陥ってしまうために勃起不全となるようなケースです。この障害に陥る原因としては、過去に性行為において失敗した経験がトラウマとなって性交に対する不安が生じたり、パートナーとのトラブルが生じたり、妊娠と子作りのためにかかるプレッシャーが生じたり、といったことが挙げられます。
器質性勃起障害
下記のような勃起に至るまでの一連の流れのどこかに何らかの病気が生じることによる勃起障害です。
- 脳が性的刺激を受けて活発になる
- 脊髄を通る副交感神経を経て陰茎の血管が拡がる
- 陰茎の血流が増えて勃起する
具体的には、脊髄損傷や脳血管障害などの神経の損傷、糖尿病や外傷などによる血管の損傷、包茎や尿道の奇形(陰茎の異常)などが挙げられます。
混合性勃起障害
器質性勃起障害で述べたような何らかの病気が原因となって勃起障害が生じるだけでなく、勃起障害が原因となり性交に関する不安やトラウマが生まれてしまうことで、さらに勃起障害が助長されるようになります。
症状
勃起障害(ED)の症状は、性交の際に常に勃起が起こらない重度のものから、ときどき、または状況に応じて勃起が起こらないものまで、原因や分類に応じてさまざまなものがあります。このような勃起障害は性交を完了することができないため男性不妊の原因になったり、心理的なストレスから抑うつや不安に陥ったりすることもあります。
検査・診断
勃起障害(ED)の診断と原因の特定には、患者さんが経験してきた性交の際の状況、そして性交に対する意識や心理的な問題を問診や質問紙で詳しく伺うことが重要です。そのうえで、器質的な原因として何らかの病気が潜んでいないかどうかを調べるために、血液検査や画像検査、身体診察などを行います。
また特殊検査として、専門医のもと夜間勃起現象の評価を行うため、リジスキャンプラスを行ったり、血管性EDの鑑別のため、プロスタグランジンE1の海綿体注射を行ったりすることがあります。
治療
勃起障害(ED)に対する最初の治療として用いるのは、シルデナフィルクエン酸塩に代表されるED治療薬です。心因性、器質性、および混合性のいずれに対しても一定の効果があることがわかっています。
ほかにも、陰茎が固くなるために重要な陰茎の血管の拡張を促す効果のある、アルプロスタジルという薬を陰茎に注入する方法があります。ただし同薬剤は、診断薬としては保険診療可能ですが治療薬としては認可されておらず、専門医のもと慎重に用いられる必要があります。また、ほかの治療が無効であった場合、プロステーシスという勃起補助器具を陰茎に埋め込む手術を行うこともあります。
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