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男女双方に性交時の不満を招くED(勃起障害)とは? ~原因別のタイプと、様々な治療法~

男女双方に性交時の不満を招くED(勃起障害)とは? ~原因別のタイプと、様々な治療法~
木村 将貴 先生

杉山産婦人科新宿 男性外来担当、帝京大学医学部附属病院 泌尿器科 非常勤講師

木村 将貴 先生

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ED(勃起障害)とは、性交時に十分な勃起が得られなかったり、勃起を維持できなかったりして満足な性交が行えない状態のことです。

男性の多くに起こり得る病気で、日本では成人男性の4人に1人がEDに悩んでいるといわれています。しかし、デリケートな問題であるために、日常生活でEDの情報が得られる機会は多くありません。

それでは、EDとはどのような病気で、どのような原因、治療方法があるのでしょうか。

ED(Erectile Dysfunction)とは、日本語では“勃起障害”や“勃起不全”と呼ばれています。定義としては“陰茎が勃起しないというだけではなく、性交を行うのに十分なだけの勃起がおきない、または十分に勃起状態を維持できないため、満足な性交が行えない状態”とされており、このような状態が少なくとも3か月以上続くことが診断の条件となります。

そのため、勃起が達成できない状態に限らず、勃起に時間がかかる、勃起してもその状態が維持できない、硬度が十分ではないなど、性交の不満につながるさまざまな状態が含まれます。

勃起は、刺激を伝える神経系と陰茎の血流をコントロールする血管系が相互に関連し合うことで起こります。

男性が性的刺激を受けると脳の勃起中枢が興奮し、脊髄(せきずい)神経を通して(介して)末梢(まっしょう)の副交感神経の作用で陰茎部の海綿体平滑筋が弛緩(しかん)して血液を取り込みます。陰茎部の陰茎海綿体と呼ばれる部分はスポンジのように膨らむ性質があり、血液を吸い込むことで陰茎部が膨張して硬くなります。

しかし、何らかの原因で一連のメカニズムのどこかに障害が起きると、正常な勃起が得られなくなります。

EDは、医師によって診断を受け、適切な治療を受けることで改善することができます。

診断では、まず問診によって、これまでの病歴や健康状態を聞き取りながら、性欲、勃起、性交、射精の状態を確認します。問診に加えて、血液検査で糖尿病などEDのリスクとなる病気の有無や、男性ホルモンの分泌状態なども調べます。

大半はED治療薬を使用することによって、診断的治療を行いますがED治療薬の効果がない場合はEDの原因を詳しく精査するために、生理的勃起機能や陰茎部の血流の状態などを調べる検査も行うことがあります。

生理的勃起機能は、夜間睡眠時勃起(NPT:睡眠時に3〜6回起こる性的刺激を伴わない勃起)を調べることで分かります。NPTの計測には、リジスキャンやエレクトメーターといった検査を用います。この検査でNPTが生じない場合は、勃起機能の異常によるEDが疑われます。

陰茎部の血流の状態を調べるためには、血管を拡張させる作用のある物質(アルプロスタジル)を陰茎海綿体に注射し、勃起の程度を確認します。同時に、動脈性の血流障害や静脈性の閉鎖不全を見極めるために、カラードップラー超音波検査も行います。

血流障害によるEDが疑われた場合には、カテーテルを使った血管造影によって、血流障害が生じている部位を確認することもあります。

EDは、原因によって器質性、心因性、混合性の3つのタイプに分けられます。

神経系や血管系など、体の機能に何かしらの異常があるタイプのEDです。たとえば、加齢によって神経や血管のはたらきが低下している場合や、生活習慣病によって神経や血管が障害されている場合に起こるEDが当てはまります。

体の機能には異常がなく、ストレスなどの精神的、心理的な問題が原因となっているタイプのEDです。精神的ストレスの内容としては性行為への不安や恐れ、うつ状態、パートナーとの不仲、性に関する情報の誤りなどさまざまなものがあります。

器質性と心因性の双方の原因が混ざっているタイプのEDです。ほとんどのEDで、原因が混合していることが多いといわれています。そのため、治療のためには器質性、心因性のうち、どちらが主な原因となっているかを見極めることが大切です。

EDの治療法は、原因や重症度、患者さんやそのパートナーの希望に応じて選択されます。

病院で受けられるED治療の中心となるのが薬物治療です。ホスホジエステラーゼ5阻害薬と呼ばれるグループの薬が用いられます。この薬剤は陰茎海綿体平滑筋の弛緩作用により、勃起を促進する効果があります。日本では、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルの3つの薬が使用可能です。ED治療薬は保険適用外ですが、購入する際には医師の処方箋が必要です。

精神的な要因がある心因性EDの場合は、精神面へのケアが重要になります。心理療法では、患者さんの問題や悩みなどに向き合うカウンセリングや、ものの受け取り方や考え方を改善する認知行動療法などが行われます。

心因性EDでは、心理療法とED治療薬を組み合わせることで高い治療満足度が得られるといわれています。特に重度の心因性EDではカップルカウンセリングや認知行動療法が必要な場合もあり、専門性が要求されるのでセックスカウンセラーやセックスセラピストに相談するのが望ましいでしょう。

肥満や喫煙習慣はEDのリスク因子となるため、肥満者や喫煙者に対しては減量指導や禁煙指導を行うことがあります。特に、禁煙指導は若く、軽症であるほどEDの改善効果が高いといわれています。

テストステロンは男性ホルモンの一種であり、性反応を促進する作用があります。テストステロンが低下している場合はED治療薬とともにテストステロン補充療法を行うことで、勃起機能を改善する効果が高くなるといわれています。(ED治療として単独の効果は高くありません)

ED治療薬の効果がない場合、欧米では標準治療として陰茎海綿体に勃起誘発薬剤を直接注入する方法があります。日本では陰茎海綿体注射として勃起障害の診断のために使用されており、治療としては陰茎海綿体自己注射(ICI治療)として臨床試験が行われています。

体の機能に問題がある器質性EDで、手術が行われることもあります。陰茎が曲がって性交が難しい場合に行われる陰茎形成術や、陰茎の血流に異常がある場合に行われる血管手術、陰茎に人工物を留置する陰茎プロステーシス手術などがあります。

EDは男性なら誰しも起こり得る身近な病気ですが、デリケートな問題のため、病院を受診する人は多くありません。神経や血管などの器質的な原因がある場合は、自然に治らないばかりか、放置することで悪化することもあります。また心理的な問題がある場合は、内服治療やカウンセリングを受けることをおすすめします。

決して恥ずかしい問題ではないため、男性自身やパートナーがストレスを感じている場合は、泌尿器科やEDを専門としている病院で一度相談してみるとよいでしょう。

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