概要
カポジ肉腫とは、エイズを代表とする免疫抑制状態において発症する血管由来の腫瘍のことを指します。男性における同性愛エイズ患者で見ることがほとんどであり、日本国内におけるエイズ治療において看過することはできない病気です。
カポジ肉腫はヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)と呼ばれるウイルスに関連して発症する腫瘍です。HHV-8は悪性腫瘍を引き起こす癌ウイルスであると考えられていますが、通常は感染する機会はありません。仮にHHV-8に感染した場合であっても、免疫力が正常な状態であれば、がんを発症することはありません。しかし、エイズを発症した場合には、カポジ肉腫を代表とする腫瘍性病変を引き起こします。
カポジ肉腫の治療を考える際には、エイズのコントロールについても着目することが重要になります。化学療法、放射線療法を行いつつ、エイズの原因ウイルスであるHIVに対しての抗ウイルス療法を行い、HIV量をコントロールすることが必須となります。
原因
カポジ肉腫は、男性における同性愛エイズ患者において発症することが多い腫瘍性病変を指します。腫瘍の発生に関しては、HHV-8と呼ばれるヘルペスウイルスが根本的に関与していると考えられています。
HHV-8は唾液や粘膜などを介して感染し、白血球の中でも「B細胞」と呼ばれるリンパ球の一種に潜伏感染します。国によって感染率は異なりますが、日本においてはそもそもHHV-8に感染している人が少ないと考えられています。また、仮に健常人がHHV-8に感染した場合であっても、明らかな臨床症状を呈することはほとんどありません。
しかしながら、エイズを代表とする免疫抑制状態になると、B細胞に潜伏感染をしているHHV-8が増殖することになります。HHV-8に感染したB細胞は、血管を裏打ちする血管内皮細胞と接触する機会も多く、B細胞から血管へとHHV-8がうつることになります。血管内皮細胞へと移行したHHV-8は、血管内皮細胞の遺伝子形態を変化させがん細胞へと方向付けることになります。以上のような経路を介して、カポジ肉腫は発生すると考えられています。
症状
カポジ肉腫は、血管内皮細胞由来の腫瘍性病変です。血管内皮は全身に存在していますが、カポジ肉腫の発生部位は皮膚がもっとも多く、消化管、口腔内、肺なども発生頻度が高いです。
カポジ肉腫における皮膚病変は、頭や体幹、四肢などに紫紅色から黒褐の皮疹として現れます。病状の進行と共に大きさは拡大し、隆起性病変へと見た目も変化します。カポジ肉腫による皮膚病変は痛みを伴うこともあります。
消化管や口腔内、肺などにも腫瘍性病変が生じることがあります。消化管のそれは、出血や腹痛などを来すことなく無症状で経過することもあります。また、口腔内や肺に出現したものでは、発症した部位や数によっては呼吸障害をきたすこともあり、生命の危機に瀕することもあります。
検査・診断
カポジ肉腫はエイズの発症に関連して認めることが多く、特徴的な皮膚所見から病気が疑われることになります。皮膚や消化管、口腔内の病変部位の生検を行い、顕微鏡的に組織を評価し、カポジ肉腫に特徴的な形態学的変化を確認することから診断されることになります。
カポジ肉腫は、外表からわかる皮膚や口腔内以外にも発症することが知られています。そのため、こうした各種内臓器病変を評価するために、便潜血、消化管内視鏡検査、胸部単純レントゲン写真、胸部CT、気管支鏡、ガリウムスキャンなどの検査が行われます。
カポジ肉腫は腫瘍の広がり具合や、エイズ発症に重要なCD4細胞と呼ばれるリンパ球数(免疫機能)、その他の全身の病気の有無を考慮して病型分類がなされます。そのため、血液検査(CD4細胞数の検索)やそのほかの全身状態の評価を行うことも重要になります。
治療
エイズに関連したカポジ肉腫の発生については、HIVのウイルス量が重要であり、免疫状態をいかに正常状態に近い形で保つかが重要です。また、軽症のカポジ肉腫であれば、HIVに対しての治療のみでも治癒も期待できるため、抗HIV療法(ART)がとても重要になります。皮膚症状が限局している場合には、放射線療法が使用されることもあります。
一方、皮膚病変が全身に広がっている場合や広い範囲で内臓病変を見る場合などにおいては、化学療法が適応となります。使用される薬剤としては、リポソーマルドキソルビシンが第一選択です。また、リポソーマルドキソルビシンが無効な場合にはパクリタキセルなどの薬剤が使用されます。
カポジ肉腫はエイズ発症時に見る病気であり、その他のエイズ関連疾患として、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症などの病気を併発していることもあります。こうした他疾患に対しての治療アプローチを考慮しつつ、カポジ肉腫の治療方針を決定することが重要です。
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