カポジ肉腫とは、皮膚や粘膜、リンパ節、内臓などの至るところに発生するがんのことです。好発部位は皮膚で、色のついた皮疹がみられることが一般的です。発症には、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)の感染が深く関与しているといわれています。HHV-8は8番目に発見されたヒトヘルペスウイルスで、“カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)”とも呼ばれます。
本記事では、カポジ肉腫の原因ウイルスの特徴として人から人へうつる可能性やうつった後の経過、発症しやすい人の特徴などについて解説します。
カポジ肉腫の原因となるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は、ほかのヘルペスウイルス同様、人から人へうつることがあります。ウイルスは唾液や粘膜分泌液の中に含まれるため、主な感染経路としては経口感染、性感染、あるいは母子感染などが挙げられます。
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスに感染しても、全員がカポジ肉腫などの病気にかかるわけではありません。むしろ、無症状に経過します。
ただし、ウイルスが体から消滅したわけではなく、自分は無症状のままでも他人にうつす可能性はあります。この状態を“潜伏感染”といいます。日本国内のカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスの潜伏感染者割合は、4%程度と考えられています。
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスはカポジ肉腫だけの原因となるわけではありません。カポジ肉腫以外にも以下のようなさまざまな病気の発症に関与するウイルスといわれています。
など
前述のとおり、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスに感染しても、健康な人の場合はカポジ肉腫などの病気を発症することはなく、無症状で経過することが一般的です。
しかし、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している人や、臓器移植後で免疫抑制剤を服用していて免疫系の機能が下がっている人では、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスに感染するとカポジ肉腫を発症する可能性が高いといわれています。
カポジ肉腫は、悪性リンパ腫に次いでヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者に発症しやすいがんであるといわれています。
ヒト免疫不全ウイルスとは、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因となるウイルスです。潜伏期間が数週間〜十数年と幅広く、すぐに症状が現れるわけではありません。しかし潜伏期間後、初期症状としてインフルエンザのような症状が数週間続くことがあるほか、数年かけてほかの病気への抵抗力が低下していき、健常者ではかかりにくい感染症やがんを発症しやすくなります。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の主な感染経路として性感染が挙げられます。
カポジ肉腫では、紫色・ピンク色・赤色の斑点のような皮疹がみられることがあります。このとき、通常痛みやかゆみはありません。進行すると皮疹が徐々に膨らんだり、離れていた皮疹同士がくっついたりすることもあります。また、皮疹の色がより濃くなることもあり、暗い紫色から褐色へと変化する場合もあります。
さらに進行すると、脚にできた皮疹からリンパ浮腫が発生し、痛みを感じることもあります。皮疹として生じたがんが、皮膚の下にある軟部組織や骨に浸潤することもあります。
カポジ肉腫の好発部位は皮膚ですが、さまざまな臓器にも生じる可能性があります。皮膚以外の場所では、口の中の粘膜や消化管、呼吸器、リンパ節などの発生頻度が高いといわれています。発生場所によって症状が異なるほか、症状が現れないこともあるため発見が遅れることもあります。
カポジ肉腫はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者や、臓器移植後で免疫抑制剤を服用している方などに生じやすいことが分かっています。そのため、該当する方はこまめに医療機関を受診し、気になる症状があれば医師に相談することを心がけましょう。
聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授
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