概要
キャッスルマン病とは、リンパ節の細胞が異常増殖を引き起こす病気のひとつです。単一のリンパ節のみに発症する“単中心性キャッスルマン病”、いくつかのリンパ節に同時に発症する“多中心性キャッスルマン病”の二つのタイプに分けられますが、日本では圧倒的に後者のほうが多いとされています。
キャッスルマン病は小児から高齢者まで全ての年代で発症する可能性があり、リンパ節の腫れとともに発熱、倦怠感、皮疹などの症状が現れます。一般的な風邪などでも起こりうる症状であるため、発見が遅れることも少なくありません。しかし、キャッスルマン病は適切な治療や経過観察を行わないと貧血などの症状が慢性化して生活の質が低下するだけでなく、時には命に関わることもあるため注意が必要です。
原因
キャッスルマン病の明確な発症メカニズムは解明されていません。
欧米では、キャッスルマン病のひとつのタイプである“多中心性キャッスルマン病”はHIVやHHV-8の感染者に合併しやすいとの報告があり、これらのウイルス感染が発症に関与していると考えられています。多中心性キャッスルマン病の中でもHIVやHHV-8と合併している場合には、更に細かく分類し、“HHV-8関連多中心性キャッスルマン病”と呼ぶことがあります。しかし、日本では、これらのウイルスの感染を伴う患者は多くありません。多中心性キャッスルマン病の中でもHIVやHHV-8を伴わないものは、”HHV-8陰性多中心性キャッスルマン病”や”特発性多中心性キャッスルマン病”と呼ばれます。
また、多中心性キャッスルマン病にかかっている人は、体内の炎症を引き起こす“IL-6”という物質が多く産生されているケースが多いとされています。そのため、キャッスルマン病の発症には、IL-6の過剰産生を引き起こす何らかの仕組みとの関連が考えられています。
症状
キャッスルマン病は、リンパ節の腫れとともに発熱や倦怠感、関節痛、発汗など、さまざまな症状が引き起こされます。
リンパ節の腫れは、リンパ節内の細胞が異常増殖することによるものです。一方、全身に生じるさまざまな症状は、上で述べたIL-6が増加することによるものと考えられています。IL-6は血管の増殖と血小板(血液を固めるための細胞)の増加を促す作用が知られており、体内で産生量が増加すると炎症を引き起こします。このため、発熱や倦怠感といった一般的な風邪とよく似た症状が引き起こされるのです。そのほかにも、体重減少、貧血、皮疹、むくみ、肝臓・脾臓の腫れ、腎機能障害、間質性肺炎という特殊な肺炎などを引き起こすことも多く、血小板が増加することで血栓(血液の細かい塊)ができやすくなるため、脳梗塞などを合併する可能性もあります。これらの症状は急激に進行することは珍しく、数年にわたって慢性的にゆっくり進行していくのが特徴のひとつです。
検査・診断
リンパ節の腫れや、ほかの自覚症状などからキャッスルマン病が疑われるときは、次のような検査が行われます。
血液検査
キャッスルマン病の診断では、炎症の程度を評価したり、炎症の原因を探ったりするための血液検査が行われます。
多くは炎症反応によるCRP上昇、貧血、血小板増加などが見られます。また、特殊な検査にはなりますが、血中IL-6値上昇の有無を調べるのも診断の手がかりとして有用です。
そのほか、慢性的な炎症の原因となる膠原病などとの鑑別を目的として、自己抗体(自分自身の体を攻撃するたんぱく質)の有無やウイルス感染の有無を調べる検査が行われることがあります。
画像検査
リンパ節の腫れの程度や他臓器の病変の有無を調べるため、CTなどの画像検査が行われます。多くは、血管が描出しやすくなる造影剤という薬剤を注入しながら画像撮影を行う“造影CT検査”を行います。
病理検査
腫れたリンパ節の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。キャッスルマン病の確定診断に必須の検査となっています。
キャッスルマン病の確定診断の際は、がんやリンパ腫などの悪性腫瘍と鑑別するため、十分な組織の量を採取する必要があります。組織の採取方法は通常、局所麻酔にて体表面に近いリンパ節を丸ごと摘出する生検が実施されます。しかし、体表面に近いリンパ節が見当たらず、体の奥深くにしかリンパ節が見当たらない場合は、全身麻酔をかけて針生検や開胸・開腹といった手段でリンパ節を摘出することもあります。
治療
キャッスルマン病は症状が軽いケースでは治療を行わず、定期的な検査を行って経過を見るケースも少なくありません。発熱などの症状が強いときは、体内の炎症反応を抑えるためにステロイドの投与が行われてきました。
強い症状や炎症所見があるときは、IL-6のはたらきを抑制する“トシリズマブ”などの薬剤が投与されることがあります。トシリズマブによる治療は通常であれば高額医療となりますが、“特発性多中心性キャッスルマン病”は厚生労働省の指定難病であり、難病に認定されれば医療費の助成を受けることができます。
また、HIVやHHV-8感染が発症原因と考えられるケースでは、抗HIV薬などを併用すると、生命予後が長くなることも報告されています。
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