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MRSA

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概要

MRSAとは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA: methicillin-resistant Staphylococcus aureus)と呼ばれる細菌のことを指します。黄色ブドウ球菌自体は、健康な人間の皮膚を中心に広く生息する細菌であり、伝染性痂疹や肺炎を引き起こすなど一般的な臨床現場においてもとてもありふれた病原体のひとつです。そんな黄色ブドウ球菌のひとつであるMRSAは、ある種の抗生物質に対して効きが悪くなっており(耐性と呼びます)、治療に難渋することがあります。 1940年代に発明された抗生物質である「ペニシリン」を皮切りに、現在までのところ数多くの抗生物質が臨床現場で使用することが可能な状態なっており、治療予後の改善に大きく貢献しています。しかしその一方で、抗生物質に対して耐性を示す細菌が増加の一途をたどっており、医療現場における深刻な問題のひとつと考えられています。MRSAも1980年代に日本における医療現場で問題として提起されて以降、増加の一途をたどり、医療現場で同定される黄色ブドウ球菌のうち半数以上がMRSA、すなわち抗生物質に耐性なものであると報告されています。 こうした耐性を抑制することの重要性に加えて、MRSAにどのように対応して治療し、拡大を予防するかが非常に重要です。

原因

MRSAは、多くの抗生物質に耐性を示すようになった黄色ブドウ球菌を指します。黄色ブドウ球菌の表面には、ひとの細胞には存在しない「細胞壁」と呼ばれる部分があります。細胞壁は、細菌の内部のものを外部から守るはたらききをしています。ペニシリンを始めとした一部の抗生物質はこの細胞壁にはたらきかけ、適切な細胞壁が構築されないようにさせます。その結果、細胞壁を持つ黄色ブドウ球菌は、適切な生命活動を送ることができなくなり殺菌されることになります。 MRSAでは、「ペニシリン結合タンパク」と呼ばれるタンパク質を産生するようになっています。ペニシリン結合タンパクは、その名前が示すとおり抗生物質の一種類であるペニシンにくっつきます。ペニシリンの立場から見ると、このタンパク質にくっついてしまうため、細胞壁を阻害するはたらきを発揮することができなくなります。その結果、MRSAは抗生物質に対して耐性を示すようになります。実際のところは、MRSAはペニシリン以外の抗生物質にも耐性を示すことが知られています。

症状

MRSAを含む黄色ブドウ球菌は、健康な人の皮膚や鼻の中などに常在しています。細菌に汚染されたものに接触したり(接触感染と呼びます)、つばに含まれる細菌を接触すること(飛沫感染と呼びます)で細菌は広がります。しかし、MRSAを含む黄色ブドウ球菌は必ずしも病原性が高い訳ではなく、細菌に接触しただけでは病気になることは多くはありません。感染症を発症する場合も、伝染性痂疹や膿など、皮膚の軽度の感染症で終わることも多いです。しかし、入院患者さんをみると、免疫力が低下している、手術後で人工的なデバイスを入れている(弁置換や股関節など)、人工呼吸器管理になっているなど、感染症が重症化しやすい要素が揃っています。こうした状況においては、MRSAも多大な病原性を発揮することになり、現在、院内感染症の最も主要な原因菌のひとつとなっています。感染性心内膜炎や中枢神経感染症、尿路感染症、消化管感染症など各種臓器に症状を引き起こし得ます。 また内科系、外科系の区分のみならず、NICUを含む小児科領域でも状況は同様です。MRSA では、「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」や「新生児TSS様発疹症」を引き起こす毒素を産生することも多いと言われています。 近年は、「市中感染型MRSA」と呼ばれるタイプのMRSAも問題になっています。これは入院とは関係なく健康なお子さんで見られるタイプのMRSAであり、主に小児の皮膚感染症を引き起こします。

そのほか、こちらの記事も参照ください。 https://medicalnote.jp/contents/160812-008-TY

検査・診断

MRSAの検出のためには、①培養検査にともなう感受性検査、②PCR法、の2つの方法がとられます。 通常、黄色ブドウ球菌は「オキサシリン」や「セフォキシチン」と呼ばれる抗生物質に対して効果を示し、これらの抗生物質が存在する条件では細菌がうまく繁殖することは出来ません。しかしMRSAや市中感染型MRSAの場合、これらの抗生物質に対して抵抗性を示し増殖することが可能です。患者さんの痰や尿などから培養された細菌が黄色ブドウ球菌であることを確認後、こうした抗生物質が存在していても増殖できる場合にはMRSAであると考えられます。 またMRSAは「ペニシリン結合タンパク」が存在することが抗生物質抵抗性を示すに際して重要です。このタンパク質は「mecA遺伝子」と呼ばれる遺伝子が産生に関係しており、MRSAはこの遺伝子を持つことが知られています。したがって、PCR法と呼ばれる検査を用いてmecA遺伝子が検出された場合には、MRSAであると考えられます。

治療

MRSAの治療のためには、抗MRSA薬と呼ばれる抗生物質が使用されます。このなかには、グリコペプチド系(バンコマイシン塩酸塩、テイコプラニン)、アミノグリコシド系(アルベカシン硫酸塩)、オキサゾリジノン系(リネゾリド)、環状リポペプチド系(ダプトマイシン)などが含まれています。このほかにもMRSAに対して効果を発揮する抗生物質は存在しますが、保険適応との関係性から第一選択としては使用されることは少ないです。MRSAは全身各種臓器に感染症を引き起こします。感染している臓器に応じて、上記したようなMRSA用の抗生物質を適切に選択する必要があります。抗生物質の選択方法には、患者さんがもつ臓器障害にも注意を払う必要があります。MRSAが感染症の原因ではないと考えられる場合には、抗生物質に対しての不用意な耐性を引き起こす危険性があります。そのため適切な抗生物質選択はとても重要なことです。

そのほか、こちらの記事を参照ください。 https://medicalnote.jp/contents/170317-001-JG

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