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前立腺がんの原因は何?~遺伝やホルモン、生活習慣などが関係している~

前立腺がんの原因は何?~遺伝やホルモン、生活習慣などが関係している~
堀江 重郎 先生

順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学 教授

堀江 重郎 先生

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前立腺とは、精液に含まれる前立腺液をつくる、男性の膀胱の下に存在する臓器です。前立腺がんはここに生じるがんのことで、男性のがんにおいては罹患数がもっとも多く、年齢別の罹患率は40歳代以上から徐々に高まり、60歳代から高齢になるほど高くなります。

症状としては、尿が出にくい、排尿回数が増えるといったことが挙げられ、進行すると血尿や、骨への転移による腰の痛みなどが現れることもありますが、早期の場合は自覚症状がないことが一般的です。また、進行は比較的ゆっくりであり早期に発見できれば治癒が可能とされています。

では、前立腺がんの原因は何があるのでしょうか。また、予防することはできるのでしょうか。

前立腺がんは、前立腺の正常な細胞増殖機能が損なわれ、不規則に自己増殖することで起こるとされています。しかし、その原因は明らかにはなっていません。

一方、リスクを高めると考えられる要因としては、遺伝(家族歴)、男性ホルモン、加齢、肥満、食生活、喫煙などが挙げられています。

前立腺がんでは、特に遺伝(家族歴)が関係しているということは確実だといわれています。なぜなら、近親者に前立腺がん患者がいる場合、罹患リスクが約2.4〜5.6倍に高まることが明らかにいなっているためです。

したがって、前立腺がんと診断された家族がいる場合は、40歳からPSA検査を受けることがすすめられています。

男性ホルモンのテストステロンが5α還元酵素という酵素によってジヒドロテストステロンに変換されることで、前立腺がんの発生につながるといわれています。

前立腺がんに限らず、さまざまながんのリスク要因とされているのが肥満です。BMIが高いほど進行性がん(早期ではないがん)のリスクが高まり、がんの発見率も高まるという報告もあります。さらに、成人後の体重増加率が顕著であるほど発がんリスクが高まるという報告もあります。

高脂肪な食品(特に動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸)や、カルシウムの過剰摂取が前立腺がんのリスクを高めるという研究結果もあります。しかし、カルシウムについては関係ないとする報告もあり、食生活と前立腺がんの関係は明らかになっていません。

前立腺がんに限らず、がんの発症には喫煙が大きく関係していることが知られています。実際に喫煙者の男性29.7%、女性5.0%が喫煙に関与してがんを発症しているといわれています。

また、本人がたばこを吸っていなくても、周囲の喫煙者による副流煙を吸い込むことによって受動喫煙となり、リスクが高まります。

そのほか、前立腺の炎症・感染などもリスク要因とされています。

前立腺がんの発生原因は明確になっていませんが、考えられるリスク要因を踏まえた生活習慣を心がけることで、発症予防や進行を抑えることにつながる可能性があります。ここでは、特に有効性が示唆されている予防法について詳しく解説します。

アジア人の前立腺がんの発症率は欧米人に比べて低いとされていますが、日本では前立腺がんが増加しており、その原因の1つに、食生活の欧米化があると考えられています。

前述のとおり、高脂肪食、特に動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は男性ホルモンを増加させ、前立腺がんのリスクを高めるといわれています。そのため、高脂肪食や動物性脂肪が過剰にならないような食事を心がけるとよいでしょう。

そのほか、有効性について結論が出ているわけではありませんが、大豆(イソフラボン)や緑茶(カテキン)、トマト(リコピン)などが前立腺がんの発症予防につながるのではないかと注目されています。

前立腺がんに限らず、BMIが高いとがんのリスクが高まるとされているため、がん予防のためには肥満の解消が重要です。

一般的に、肥満の解消のためには適正なエネルギーの摂取や適度な運動が必要とされています。前立腺がんのリスクを高める高脂肪食や動物性脂肪の過剰摂取も肥満につながるため、こういった食事を避け、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラル、脂質、糖質をバランスよく摂取するとよいでしょう。

喫煙本数が多く喫煙期間が長い男性の前立腺がんリスクの上昇が報告されているため、禁煙することが前立腺がん予防につながると考えられます。さらに、1日に25本以上の喫煙をするヘビースモーカーの場合、前立腺がんによる死亡リスクも高まるとされているため注意が必要です。

前立腺がんの原因は明確になっていませんが、遺伝的要因や肥満、食生活、喫煙などが発症リスクを高めると考えられています。また、予防についても研究途上ではありますが、食生活の改善や肥満の解消、禁煙など、生活習慣を改善することで予防につながるとされています。そのため、原因やリスクを正しく理解したうえで、前述の予防法を心がけてみるとよいでしょう。

なお、尿が出にくい、排尿回数が増えるなど、気になる症状があった場合は早めに受診を検討するようにしましょう。

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