「ロボット手術」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。現在、横浜労災病院ではアメリカで開発された最新鋭の手術支援ロボット「ダビンチ®」により、年間90人の患者さんに対して前立腺がんの手術を行っています。ダビンチ®による前立腺がんの手術にはどのような特徴があるのでしょうか。また、今後どのようにダビンチ®は広がっていくのでしょうか。横浜労災病院泌尿器科部長の永田真樹先生にお話をお伺いしました。
横浜労災病院では今まで、前立腺がんの患者さんに対して開腹(下腹部に5~6cmの傷を作り、そこから手術をする)により前立腺の全摘(すべてを取り払うこと)手術を行っていました。現在では、その術式が適応になるレベルの患者さんは、基本的に全ての方がロボット支援による手術に移行しています。
ただし、手術の体位は頭低位(頭を低くする体位)により行います。そのため、緑内障と未治療の脳動脈瘤をお持ちの患者さんに対しては禁忌(してはいけないこと)となります。しかし、頭低位に対する影響がどこまであるか、どこまで禁忌にするべきか、という点に対しての議論はまだ決着を迎えていません。
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根治率は今までの手術成績と特に変わりはありません。ただし、手術による合併症は少ないというデータが出始めています。
ダビンチ®は、まず機械のセッティングに時間がかかります。具体的にはセッティングだけで30分くらいかかってしまいます。また、セットアップに慣れていくまでにも時間がかかります。ですから、このセットアップに熟練することも大切です。横浜労災病院ではセットアップの専門チームが組まれ、専門講習を受けました。
実際の手術時間は2時間〜3時間くらいです。今のところ開腹手術と変わらないか、少し長くなることもあります。
ダビンチ®は、2012年の4月に保健収載された後、2013年の9月から本格的に導入をスタートしました。横浜労災病院がダビンチ®を導入したのは、国内認可されてから1年半が経過していたころであったため、そこまで導入が早い方ではありませんでした。
しかし、現在では年間90症例と国内では非常に多い数の手術を行っており、今後さらに手術時間が短くなり開腹手術での手術時間に近付いていくことも十分に考えられます。なお、横浜労災病院では開腹手術を非常に短い時間(2時間弱)で手術をすることができていたため、今後の目標時間として設定できるでしょう。
前立腺は体のとても深いところにあります。かつて前立腺がんは難しい体勢、狭い視野で手術をしなくてはならなかったため、手術そのものが難しいと言われていました。しかし、ダビンチ®では鉗子に関節があり、540度回転できるため細かい作業が次々とできるようになりますし、狭いスペースにも屈することなく入っていけるようになりました。さらには狭いところを超高性能のカメラでみて、拡大をすることもできます。
これらの業績から判断しても、今後、骨盤臓器に関してダビンチ®はもっと有用になっていくと考えられます。ただ、外科・産婦人科では保険収載されるかどうか分かりません。
細かい作業が必要な部分の手術には、ダビンチ®は適しています。そのため、現在は腎臓の部分切除術への導入が進められています。
腎がんの場合、腎臓を全部とってしまうと心臓や血管に不具合が起こる可能性が高くなると言われています。そのため、部分切除できる状況であれば部分切除が勧められるようになりました。特に、腎臓の裏側に切除すべき部分があるケースなどは、ダビンチ®が有効な可能性が十分にあります。これに関しては保険収載の可能性もあると思います。
ダビンチ®の今後の流れとしては、大学病院を中心とした高度先進医療ができる施設で様々な応用術が進められ、安全性が確認されてから保険収載されるでしょう(保険収載は標準術式として安全性が認められるという意味でもあります)。保険収載された後にはさらに広まっていく可能性があります。
しかし、現状の手術でも短い時間でできるものについては、ロボット支援手術はあまり広まらないかもしれません。副腎の手術もダビンチ®で行ったという報告もありますが、副腎の手術は腹腔鏡下手術でも30~60分で行える手術です(横浜労災病院の場合)。つまり、ダビンチ®のセットアップにかかるのとほぼ同じ時間で終わってしまうということです。
横浜労災病院 泌尿器科 部長
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