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ダビンチによる前立腺がんロボット手術① 前立腺がんとは?原因・検査・診断・ステージと「PSA検診」の最新トピックス

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  • 公開日:2016/08/02
  • 更新日:2017/01/11
ダビンチによる前立腺がんロボット手術① 前立腺がんとは?原因・検査・診断・ステージと「PSA検診」の最新トピックス

目次

前立腺がんとは?

前立腺は男性だけに存在する、生殖にかかわる臓器のひとつです。前立腺で作られる前立腺液は精液の一部として精子に栄養を与え、精子を保護する役割を持っています。

前立腺は膀胱の出口近く、恥骨の裏側に位置しています。大きさは栗の実程度であり、中には尿道が通っています。この前立腺の細胞ががん化して異常増殖するのが前立腺がんです。

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前立腺がんの疫学

部位別がんの人口
部位別がんの人口(国立研究開発法人 国立がん研究センターより引用)

 

前立腺がんの患者さんは年々増加しています。最新の統計では、がんにかかる患者さんの数(罹患数)を部位別に集計した結果、男性では2015年に前立腺がんが胃がんを上回り第1位となりました。

前立腺がんは高齢者に多く発症するため、人口における高齢者の占める割合が高くなるほど患者さんも増加します。また、血液中の前立腺特異抗原(PSA)の値を調べるPSA検診が普及したことも要因のひとつであると考えられます。

全世界での前立腺がん罹患数は、2008年のデータによれば年間約90万人と報告されています。男性におけるすべてのがんの中で2番目に多く、13.7%を占めています。年間死亡数は約26万人で6番目に多く、6%を占めています。

世界人口を基準とした年齢調整罹患率は28.5であり、全世界では2番目に多いがんです。ただし、地域によるばらつきが大きく、先進国では62.0とがんの中で最多であるのに対し、発展途上国では12.0で5番目となっており、5倍以上の差があります。

年齢調整死亡率は7.5であり、全世界で6番目に高いがんとなっています。先進国では10.6で3番目の高さですが、発展途上国では5.6で6番目となっています。米国では1990~1992年をピークに死亡率の減少が続いており、2007年には39%低下しています。

前立腺がんの罹患率の国際比較においては、がん症例登録の精度やスクリーニング(ふるい分け)の普及の度合いが異なるため正確に比較することはできません。2002年のデータではアメリカが119.9であり、ヨーロッパが61.6であるのに対して日本は12.6と報告されていますが、最新の研究では日本とヨーロッパの罹患率の差は2倍程度しかないと予測されています。

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前立腺がんの原因・リスクファクターとは?こんな人は要注意

前立腺がんのリスクファクター

 

前立腺がんの原因として決定的なリスクファクター(危険因子)は特定されていませんが、遺伝的要因が重要であることがわかっています。父親や兄弟など、いわゆる第一度近親者の中に前立腺がんになったことがある人がいるとがん発症のリスクが高く、またその人ががんと診断された年齢が若いほど発症リスクは高いとされています。

たとえば第一度近親者に1人の前立腺がん患者がいた場合,前立腺がんの罹患率は2倍になり、2人以上いた場合は前立腺がんの罹患危険率が5~11倍に増加します。

また、父親が60歳以上で前立腺がんの診断を受けている場合は1.5倍、兄弟が60歳以上で前立腺がんと診断された場合は2倍、父親が60歳未満で前立腺がんと診断された場合は2.5倍、兄弟が60歳未満で前立腺がんと診断された場合には3倍リスクが増加します。

さらに祖父・叔父・甥・異父母の兄弟などの第二度近親者を含む親族の中に前立腺がんにかかったことのある人が2人いる場合は4倍、3人以上の場合は5倍リスクが増加します。

 

このほか、最近では細胞増殖に関係しているタンパク質の一種であるIGF-1によって前立腺がんのリスクが高くなる可能性が指摘されています。

また、明確なエビデンス(科学的根拠)はないものの、環境要因としては食生活の欧米化にともなう動物性脂肪の摂取量増加が、前立腺がんの発症リスクにかかわっているとの指摘があります。食品・栄養素では砂糖・乳製品・肉類・油脂類が前立腺がんの罹患率を高くする一方、豆類・穀物・コーヒー・魚・野菜の摂取は前立腺がんの罹患率を下げるものと考えられています。

日本では前立腺がんが男性がんの1位になったとはいえ、それでもアジアの国々は欧米と比較して前立腺がんの発症率が低いといえます。酸化ストレスやそれによって引き起こされる炎症は、前立腺がんを含む多くのがんの発症に深くかかわっていると考えられており、アジアの伝統的な食生活で多く摂取されてきた豆類などのポリフェノール類が前立腺がんの予防につながるのではないかと注目されています。

特に大豆イソフラボン・イクオール・茶カテキン・リコピン・セレニウム・ビタミンE などの機能性食品に前立腺がんの予防効果があるかどうかが研究されていますが、有効性を証明するにはさらなる研究が期待されるところです。

前立腺肥大症と前立腺がんはいずれも年齢とともに患者さんが増え、男性ホルモンであるアンドロゲンが関係しているなど、いくつかの共通点があります。しかし、それぞれの病気の発症に関して相互にどのような影響があるのかはわかっていません。

尿が出にくい・切れが悪い、あるいは頻尿や尿失禁などの前立腺肥大症の症状は、前立腺がんにも共通するものであるため、このような症状がある場合には鑑別診断が必要です。

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前立腺がんの検診「PSA」とは?検診をうける適切なタイミング


PSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)は、前立腺で作られるタンパクの一種で、前立腺がんがあるとその分泌量が増加します。PSA検診は血液中のPSAの値を測定する検査であり、まだ症状が現れないうちにがんを見つけることができます。ただし、PSA検査によって命にかかわる危険のないがんも発見される可能性があります。

症状がないうちに発見できれば、がんが前立腺の外に広がっている可能性は低いですが、何らかの症状が出てくると、がんが前立腺の外に広がり始めている可能性が高くなります。

前立腺がんがある場合、そのうちの80〜90%にPSA値の上昇がみられますが、前立腺がんでもPSA値が上昇しない場合もあります。また、前立腺肥大症や前立腺の炎症でもPSAが高い値を示すことがあります。

一般的に多くの検診で用いられるPSAの基準値は、4.0 ng/mL 以下が正常とされています。このほか、年齢階層別PSA基準値として、50~64歳:0.0~3.0 ng/mL、65~69歳:0.0~3.5 ng/mL、70歳以上:0.0~4.0 ng/mLとする検診も行われています。

PSA検診を含む前立腺がんの検診は、多くの自治体で50歳以上の方を対象に実施されています。しかし、50歳未満の時点でのPSAの基礎値が将来の前立腺がん発症リスクの予測因子となることが報告されており、検査を希望される方が人間ドックなどで40歳代のうちにPSA検診を受診することが望ましいとされています。

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前立腺がんの症状。一般的な症状は?

 

前立腺がんの症状

 

早期の前立腺がんには特徴的な症状はみられません。しかし、同時に発症していることの多い前立腺肥大症による症状-尿が出にくい、尿の切れが悪い、排尿後すっきりしない、夜間にトイレに立つ回数が多い、トイレまで我慢できずに尿が漏れてしまう尿失禁などの症状がみられる場合があります。

前立腺がんが進行すると、このような排尿の症状に加えて、血尿や骨への転移による腰痛などがみられることがあります。腰痛のために骨の検査を受けたことから前立腺がんが見つかったり、肺転移がきっかけとなって前立腺がんが見つかったりすることもあります。

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前立腺がんの検査と診断。ステージ分類はどうなっている?

前立腺がんのステージ

前立腺がんの検査・診断は先に述べたPSA検査によるスクリーニング(ふるい分け)に始まり、下図のような流れで行われます。

前立腺がん診断のアルゴリズム

 

PSA検査で基準を超える高い値が出た場合は泌尿器科専門医の診察を受け、その結果、前立腺がんが疑われる場合には、前立腺の組織を採取してがん細胞の有無を調べる前立腺生検を行います。

前立腺生検では超音波(エコー)で前立腺を見ながら、直腸から細い針を刺して前立腺の組織を採取します。その際、直腸からの出血や血尿がみられることがありますが、重い合併症はほとんどありません。

前立腺生検でがん細胞が見つからなかった場合でも、がんの疑いが完全にないというわけではありませんので、定期的に泌尿器科専門医の診察を受け、経過観察を継続します。

 

前立腺生検でがん細胞が見つかった場合は、画像診断などさらに詳しい検査を行い、がんの病期(ステージ)を診断します。画像診断では骨シンチグラフィーに加えてCT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)やMRI(Magnetic Resonance Image:核磁気共鳴画像)のほか、必要に応じて胸部エックス線撮影を行う場合もあります。

がんが前立腺の中にとどまっているものを「限局性がん」といい、低リスク群・中間リスク群・高リスク群の3つに分類されます。がんが前立腺の被膜を破って外側へ広がっている場合は「局所進行がん」といい、超高リスク群と分類されます。

がんがさらに進行すると、前立腺に隣接する膀胱や直腸に浸潤(しんじゅん・がんが拡がること)し、骨盤内のリンパ節への転移、さらには離れた臓器への転移(遠隔転移)がみられるようになります。

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前立腺がんの治療。ステージごとにどうなっている?

前立腺がん初期治療のアルゴリズム

 

限局性がんの低リスク群に対しては、PSA監視療法のほか手術療法・放射線療法・ホルモン療法など、さまざまな多岐にわたる治療のオプションがあります。

限局性がんの中間リスク群および高リスク群に対しては、手術療法と放射線療法が中心となります。ただし、放射線療法を行う場合、放射線療法単独よりもホルモン療法を併用した方が生化学的再発率や遠隔転移発症率が低いとされているため、これらのリスク群の患者さんにおいては各治療を組み合わせることも必要になってきます。

局所進行がんでは今のところ放射線療法とホルモン療法の併用療法が標準的な治療法とされています。しかし、症例によっては局所進行がんでも手術療法が選択肢のひとつとなりえます。

骨盤内のリンパ節への転移がみられる症例では、単独の治療手段では進行を抑えることが難しく、複数の治療法を組み合わせた集学的治療が必要となります。

離れた臓器への遠隔転移がある場合は、ホルモン治療が標準的な初期治療となります。前立腺がんの進行はアンドロゲンという男性ホルモンの影響を受けています。ホルモン療法は精巣や副腎からのアンドロゲンの分泌を抑え、その働きを妨げることによって、前立腺がんの増殖を抑える治療法です。

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前立腺がんにまつわる最新トピックス-横須賀市におけるPSA検診の意義と今後の課題

 

日本では前立腺がんを早期のうちに見つけるためにPSA検診を実施してきました。横須賀市でも2001年からPSA検診を導入しており、現在も多くの自治体でPSA検診を含む前立腺がん検診を行っています。

横須賀市におけるPSA検診の意義を検証するため、市の PSA 検診を受けたことから前立腺がんと診断された患者さんと、それ以外をきっかけに診断された患者さんの 2 群を比較した研究が行われ、統計学的に明らかな有意差があったことが報告されています。このことから、横須賀市ではPSA検診が前立腺がん死亡率の低下に役立っているといえます。

しかしながら、検診の受診率が10%に満たないという問題があり、本当の意味での有効性についてはまだわからないという面もあります。また、治療の対象とならない方がPSA検査によって見つかってしまい、不必要な治療につながる可能性も否定できません。

前立腺がんとして治療の対象とすべき方たちなのか、それとも治療しなくても余命に対して問題がない方たちなのか、それは現在私たちが持っている手段では100%診断することができませんし、その点が前立腺がん診療の難しいところでもあります。

しかし、PSA検診の結果、早期がんだけではなく、がんが進行してしまった状態で見つかる方が相当数いることも事実です。そういった患者さんたちをどのように救済していくかということが、実は一番問題なのです。

ですから、PSA検診のあり方や有効性については議論の分かれるところがありますが、泌尿器科学会としてはPSA検診を推進する立場をとっていますし、私自身もそうすべきであると考えています。

 

私たち泌尿器科医としては、前立腺がんが進行した状態で寿命が短くなってしまうということをなんとか食い止めたいと考えています。今は良い治療薬も出てきていますし、手術の適応にならない患者さんに対しても、さまざまな治療法をうまく組み合わせることで治療効果を上げることができるようになりました。

しかし、できることならば、かなり進行してしまった超高リスクの状態でがんが見つかる患者さんをその前の段階で見つけ、なんとかしてそこで食い止めたいという思いがあります。それがこれからの前立腺がん診療の課題であり、検診をどのように役立てていくのかという意味でも重要なポイントであると考えています。

 

黄 英茂

黄 英茂先生

横須賀市立うわまち病院 泌尿器科部長

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