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肺がん治療の不安を解消し、希望につなげる――個別化医療における多職種連携の重要性

肺がん治療の不安を解消し、希望につなげる――個別化医療における多職種連携の重要性
野口 智史 先生

NTT東日本関東病院 呼吸器内科 医長

野口 智史 先生

目次
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肺がん治療は日進月歩の勢いで進歩しており、患者さんそれぞれの体質やがんの性質に合わせて治療を行う“個別化医療”がスタンダードになりつつあります。それに伴い、医師だけではなく多職種が連携して患者さんを支える“チーム医療”の重要性も高まっています。今回は、肺がん治療の進め方について、NTT東日本関東病院 呼吸器内科 医長 野口 智史(のぐち さとし)先生に詳しくお話を伺いました。

肺がんの診断は、CT検査や腫瘍(しゅよう)マーカーだけでは確定できません。確定診断を付けるうえで重要なのは、顕微鏡で組織や細胞を調べる病理検査です。この検査を行うためには以下のいずれかの方法で肺の組織や細胞を採取する必要があります。

  • 気管支鏡検査……気管支鏡(気管や肺などをみる内視鏡)を使い、肺の組織や細胞を採取する検査
  • CTガイド下肺生検……CT画像を見ながら、体の外から細い針を刺して組織を採取する検査
  • 手術……がんと思われる病変を外科的に切除する方法で、診断と同時に治療も兼ねて行われることが多い

確定診断後は治療方針を決めるためにも、がんがどのくらい広がっているかを調べるための検査を行います。転移の有無を確かめるために頭部のMRIや、全身の状態を調べるCT、PET-CT検査などを行い、がんの進行度(ステージ)を確認します 。

特に薬物療法を行うときに確認しておきたいのが、以下の2つの検査です。

がん遺伝子検査

がん遺伝子検査は、がん細胞に特定の遺伝子異常(ドライバー遺伝子変異)がないかを調べる検査です。もしドライバー遺伝子変異が見つかれば、その遺伝子変異によって生じるタンパク質のみを標的とする分子標的薬(後述)が治療の選択肢となります。

なお、標準治療が終了した(あるいは終了が見込まれる)場合には、包括的がんゲノムプロファイリング検査(CGP)と呼ばれる、数百種類のがん関連遺伝子を一度に調べる検査を行うこともあります。CGPは、より多くの遺伝子情報を得ることで、新たな治療の可能性を探る目的で行われます。

PD-L1検査

PD-L1検査は、がん細胞の表面に存在するタンパク質(PD-L1)の量を調べる検査です。PD-L1は、免疫細胞にブレーキをかける役割を持っており、PD-L1が多く見つかった場合には後述する免疫チェックポイント阻害薬を使った治療の効果が特に期待できます。

これらの検査結果は、患者さん一人ひとりの状態に合わせた、より適切な治療法を選ぶために不可欠な情報です。

検査結果をもとに、治療法を決定していきます。肺がんの治療選択肢は大きく分けて3つです。がんの進行度合いや発生している部位によっても適した治療は異なるうえに、これらの治療が単独で行われることもあれば、より高い治療効果を得るために組み合わせて行われることもあります(集学的治療)。

がんを取り除くことで、完治を目指す治療法です。早期の肺がんに適用されることが多いですが、進行している場合でも、薬物療法や放射線治療を行って腫瘍が小さくなった場合には手術が行えるケースもあります(コンバージョン手術)。

放射線をがんに当てて、がん細胞を攻撃する治療法です。手術が難しい場合や、骨や脳に転移したがんによる痛みや症状を和らげる目的でも行われます。

薬を使ってがんを直接攻撃する治療で、がんの進行を抑えたり、症状を和らげたりすることを目的に行われます。“抗がん薬(抗がん剤)”という薬を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、従来から使用されている抗がん薬以外にも新しい薬が登場しており、治療の選択肢が広がっています。

分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞の増殖や生存に関わる特定の分子(分子標的)を狙い撃ちして、そのはたらきを抑える薬です。がん遺伝子検査で見つかった特定の遺伝子異常(ドライバー遺伝子変異)に対応する薬が使用されます。

名前のとおり標的とする分子が特定できているため効果が高く、一般的な抗がん薬と比較して副作用が少ないという特徴があります。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、患者さん自身の免疫を活性化させることで、がん細胞を攻撃する力を高める薬です。がん細胞は、免疫細胞にブレーキをかける仕組み(免疫チェックポイント)を使って、免疫からの攻撃を逃れようとします。この薬は、そのブレーキを外すことで、免疫細胞ががんを認識して攻撃できるようにします。PD-L1検査によってPD-L1の量を評価し、治療薬の選択に役立てます。

検査や治療の進歩に伴って、肺がん治療では患者さん一人ひとりに適した治療を提供できるようになってきました。これを“個別化医療”と呼びます。

個別化医療には2つの側面があると考えています。1つは“がん自体の個別化”です。がん遺伝子検査などによって、がん細胞が持つ遺伝子異常や、PD-L1というタンパク質がどのくらいあるかといった情報を詳しく調べられるようになりました。これにより分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害薬など、個人の体質やそれぞれのがんの性状をみて、効果が期待できる薬を選べるようになってきました。

もう1つは“患者さんの個別化”です。薬物療法を行う場合、数週間~数年ほどの期間で治療が行われる場合もあります。そのため、患者さんの年齢や持病、体力といった身体的な状態はもちろん、お仕事や趣味といった自分らしい生活、ご家族との関係、そして患者さんご自身の治療に対する価値観や人生観など、あらゆることを考慮して決定していくことが非常に重要です。

写真:PIXTA
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複合的な要素を十分に検討したうえで治療方針を決めていく必要があるため、主治医が一方的に治療法を決めることは難しいでしょう。患者さんのお話をお伺いすることはもちろん、複数の診療科の医師や看護師、薬剤師やメディカルソーシャルワーカーなど、医療チームが対話を重ね、患者さん一人ひとりにふさわしい治療法を一緒に見つけていく必要があります。

ここまでお伝えしてきたように、肺がん治療は複雑で多様化しています。1人の医師だけで治療方針を決め、治療を進めていくことは難しいため、肺がん診療では多職種連携が不可欠です 。

呼吸器内科医・外科医だけでなく、病理医や放射線診断医・治療医などが密に連携して、それぞれの専門的な知見を結集させることで、正確性の高い診断やスムーズな治療が可能になります。

写真:PIXTA
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治療を受ける患者さんの中には、医師に直接聞きづらい、あるいは相談しづらいと感じる方もいらっしゃるでしょう。このような場面では、看護師が患者さんに寄り添い、医師と患者さんの橋渡し役となり、治療での不安の解消にあたります。病院によっては、がん看護専門看護師やがん化学療法看護認定看護師など、がん治療に関する専門知識を持つ看護師が在籍している場合もあります。また、抗がん薬などの副作用管理は薬剤師がサポートし、精神的な不安は心理士が専門的なケアを担います。

仕事との両立や経済的な不安に関しては、メディカルソーシャルワーカーが介入し患者さんを公的サービスにつなぐなど、社会的なサポートを行います。

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