「肺がんの疑いがある」「もしかしたら進行がんかもしれない」と診断されたとき、患者さんやご家族は「とにかく早く治療を始めたい」と思うことでしょう。こうした患者さんの気持ちに寄り添いたい――その思いから、NTT東日本関東病院では、初診から治療開始までをできる限り短期間で進められる体制を整え、専門的な肺がん診療を提供しています。同院がどのようにして、迅速で質の高い肺がん診療を実現しているのか、その強みについて、同院 呼吸器内科 医長 野口 智史先生にお話を伺いました。
肺がんの疑いがあると診断されたり、進行がんを告知されたりしたとき、「とにかく早く治療を始めたい」と思うのは当然のことでしょう。当院は、そのような患者さんの気持ちに寄り添い、初診から治療開始までをできるだけ短期間で進められる体制を整えています。
初診の場合でも、紹介状を持って午前11時までに受付を済ませていただければ、予約がなくてもその日のうちに診察を受けていただけます。
また外来(初診・再診ともに)で診察を担当する医師は全員が呼吸器専門医*の資格を取得しており、がん診療にも力を入れています。
*呼吸器専門医:日本呼吸器学会認定の専門医資格で、一定レベル以上の実力を持っており、信頼されると評価された医師が認定される。なお、NTT東日本関東病院における人員情報は2025年9月時点のもの。
また当院では初診からチームで患者さんをサポートする体制があります。看護師が問診のサポートを行い、メディカルアシスタントが検査の案内や同意書の取得、紹介状の印刷といった事務作業全般を担ってくれるため、医師の負担が減り、その分を患者さんの診療に充てることができています。
さらに、2025年7月には“Web問診”も導入しました。患者さんが事前にWebで入力した情報が電子カルテに自動的に反映されるため、院内で一から問診をする手間が省けて、より診療に集中できるようになりました。患者さんにとっては、待ち時間の短縮につながるほか、ご自宅で落ち着いて症状を入力できるので、気になることを外来で解消しやすい点もメリットになるかと思います。
診断の正確性とスピードを両立させることは、患者さんがよりよい治療を早く開始するためにとても重要です。当院では、診断の精度を上げるための工夫や、他科との密な連携によって、迅速な診断を実現しています。
肺がんの診断に用いられる気管支鏡検査は、胃や大腸の内視鏡と違って病変をカメラで映し出しづらいことも少なくありません。そのため、気管支内のどこからアプローチして組織を採取するかが非常に重要になります。当院では、CT画像から気管支内を3Dで再構成するソフトウェアを導入しており、事前に検査すべき部位を詳細に把握することができます。
さらに、超音波を併用することで、病変の中心に組織を採取するための管(ガイドシース)が到達できているかを確認してから組織を採取することで、より確実な診断に努めています。
気管支鏡検査で採取した組織は、即座に検査部門のスタッフが確認し、がん細胞が採取できているかをその場で判断してくれます(迅速細胞診:ROSE)。これにより、再検査のための調整などが不要になり、確定診断までの時間を早めることができます。
また記事2でお伝えしたように、確定診断のためには気管支鏡検査のほかに、CTガイド下肺生検や手術も選択肢になります。CTガイド下肺生検が必要な場合は、放射線科の医師が迅速に対応しますし、診断と治療を兼ねた手術が必要な場合でも、呼吸器内科と呼吸器外科の医師が日常的に同じ部屋で顔を合わせているため、すぐに連携して対応が可能です。
患者さんによって合う治療は異なりますから、たとえば薬物療法の後に手術、その後さらに薬物療法を行うことなどもあり、診療科を超えた連携のもとで肺がん治療は成り立っています。特に外科との連携は非常に重要です。当院は、呼吸器内科と呼吸器外科が同じフロアで日常的に顔を合わせており、朝昼晩、いつでも相談できる関係にあります。
この関係性のおかげで、当院では非常にスムーズに肺がん治療にあたれています。たとえば、内科で診察した時点で病状が進行しており早急に手術が必要と思われる場合には、患者さんが外科の診察を受けるよりも前に「この患者さんには手術枠を押さえておくよ」と呼吸器外科が先回りして手術の準備を整えてくれることもあります。このように、病状に応じて柔軟に対応できる体制が当院では整っています。
当院は総合病院のため、それぞれの領域を専門とする医師と連携できることも大きな強みです。特に、免疫チェックポイント阻害薬は、あらゆる臓器に副作用が出る可能性があるため、各科との連携が欠かせません。
免疫チェックポイント阻害薬による治療の副作用が心臓に現れる場合があります。その際は、すぐに循環器内科医に相談し、必要に応じてカテーテル検査を行い、適切な治療を迅速に開始します。心臓の病気の管理なども院内で完結できます。
がんが骨に転移した患者さんのために当院には“骨転移ボード”というチームが設置されています。リハビリテーション科、整形外科、放射線科、腫瘍内科など、さまざまな科を専門とする医師が定期的に集まり、骨転移のある患者さんの病状や治療方針について話し合っています。これにより外来の患者さんでも、手術や放射線治療が必要かなど、専門的なアドバイスを受けることができる体制が構築されています。

また肺がんは脳転移を起こすことが多いのですが、当院には“ガンマナイフセンター”があり、脳神経外科の医師が専門的なガンマナイフ治療を行っています。ガンマナイフ治療とは放射線(ガンマ線)を利用して、細いビームをがんに集中的に照射して行う放射線治療のことです。開頭手術を行わずに、かつ周囲の正常な細胞をなるべく傷つけないように治療できることがメリットです。
このように、当院では呼吸器内科医だけでなく、さまざまな領域を専門とする医師が集結・連携して患者さんをサポートする体制が整っています。
“緩和ケア”と聞くと、治療が難しくなった場合に行われるもの、というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし、緩和ケアは心身のつらい症状を取ることが目的ですので、当院では“がんと診断されたときから始められるもの”だと捉えています。当院では医師のほかに、看護師、理学療法士、メディカルソーシャルワーカー、臨床心理士など、多職種がチームで緩和ケアにあたります。
主治医が緩和ケア的な対応をとることもありますが、専門的な対応が必要と判断したときは緩和ケア科の医師と連携して対応を進めます。呼吸器内科での抗がん薬治療と並行して、緩和ケア科の医師に痛み止めの管理を任せることも可能ですし、入院中は毎日回診をしてもらう体制も整っています。
在宅医療においても、一貫して十分な体制を整えています。往診時は、往診医、外来の主治医、緩和ケア科の医師、看護師などがスムーズに連携を取り、患者さんの情報を共有しながらケアにあたります。外部とのやり取りが必要になりますが、“ひかりワンチームSP”というクラウドサービスを導入し、綿密に連携を図っています。高セキュリティなデータセンターで情報管理しており、プライバシーにも細心の注意を払って往診の仕組みづくりができているのは、NTT東日本グループである当院ならではの強みです。

肺がんと診断されたり、その可能性を指摘されたりすると、患者さんご本人やご家族はとても不安に感じると思います。その不安を1人で抱え込まず、私たち医療チームを頼っていただきたいです。
以前と比べて、肺がんの診断や治療は日々進歩しています。遺伝子検査などの登場によって、患者さん一人ひとりに合わせた“個別化医療”ができるようになり、昔は治らないと思われていた進行肺がんでも、根治、あるいはそれに近い状態まで回復するケースも出てきています。
希望を持って治療に取り組めるよう、私たち診療チームが全力でバックアップします。分からないことや不安なことは1つずつ一緒に解消していって、納得のいく治療法を考えていきましょう。
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