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肺がんの手術。術式や適応の基準について
肺がんのステージ(病期)は、がんの大きさや転移の程度によって大きく4つのステージに分類されます。ステージ1や2はがん細胞が肺のなかにとどまっている状態で、手術などによって治療できる可能性が高い一...
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肺がんの手術。術式や適応の基準について

公開日 2017 年 07 月 30 日 | 更新日 2017 年 08 月 02 日

肺がんの手術。術式や適応の基準について
櫻井 裕幸 先生

日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野主任教授/日本大学医学部附属板橋病院呼吸器外科部長

櫻井 裕幸 先生

目次

肺がんのステージ(病期)は、がんの大きさや転移の程度によって大きく4つのステージに分類されます。ステージ1や2はがん細胞が肺のなかにとどまっている状態で、手術などによって治療できる可能性が高い一方で、特徴的な症状が現れにくいです。しかし、ステージ3以降になるとリンパ節や全身に転移がみられ、手術ができない場合もあります。肺がんが肺胞を破壊せず、肺胞上皮を置換するように発育する早期段階では、「すりガラス濃度」という特徴的なCT画像がみられます。肺がんのステージごとの特徴や定義、症状、早期発見の重要性について、日本大学医学部附属板橋病院 呼吸器外科部長の櫻井裕幸先生にお話しいただきます。

肺がんのステージとは-特徴と定義、根治治療の可能性

 

肺がんのステージ分類
肺がんのステージ (櫻井裕幸先生ご提供)

肺がんのステージ(病期)は0期、Ⅰ期(ⅠA1~ⅠA3、ⅠB)、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期に分類されます。

T因子:原発腫瘍げんぱつしゅよう primary Tumor。がんの大きさと浸潤のこと。

N因子:所属リンパ節 regional lymph Nodes。リンパ節転移のこと。

M因子:遠隔転移 distant Metastasis。遠隔転移のこと。

肺がんのステージ1

がん細胞が肺のなかにとどまっていて、リンパ節に転移がない状態を指します。

肺がんのステージ2

がんの転移が肺門のリンパ節に及んでおり、そのリンパ節にとどまっている状態です。

肺がんのステージ3

肺と肺の間にある縦隔(じゅうかく)のリンパ節に転移を起こしている状態、または肋骨など肺と連続する臓器にがんが浸潤している状態です。

肺がんのステージ4

血管やリンパ液を介してがん細胞が肺を飛び出し、全身に広がっている状態です。

がんが肺のなかに留まっていればステージは比較的早期であり、局所治療が望めます。しかし、ステージ4に進行すればがんは全身に広がっているため、抗がん剤を含めた全身的な治療が必要になってきます。

肺がんの「大きさ」による分類の変化

肺がんのステージは「大きさ(T)」、「リンパ節転移(N)」および「遠隔転移(M)」の組み合わせによって判断できます。肺がんの大きさは「TNM分類」のうちT因子にあたり、肺がんのステージを判断するための重要な基準のひとつです。

このTNM分類は2017年より改訂され、第8版として報告されました。第8版の特徴の1つは、第7版以前に比べてT因子が細分化されていることです。第7版までは、2cm以下の腫瘍はすべて「T1a」として分類されていましたが、2cmに満たない腫瘍であっても、その大きさに応じて予後に影響することがわかったのです。そこで第8版では、腫瘍の大きさを1cm単位で細かく分類しています。

腫瘍の大きさからみたT因子
Solid component:充実成分(櫻井裕幸先生ご提供)

肺がんのステージは「大きさ」と「転移」を組み合わせて判断する

肺がんのステージの決定には、腫瘍の大きさだけでなく、転移の有無もかかわります。

たとえば、がんの大きさが同じ1㎝であっても、転移がなければIAですが、リンパ節転移があればⅡB、つまりステージ2に分類されることがあるため、がんの大きさだけでは肺がんの進行度を判断できません。また、生存率は基本的にステージが進行するほど悪くなりますが、腫瘍の大きさだけで生存率は判断できません。

肺がんのステージごとの症状は?

肺腺がんの場合は症状が出にくく、扁平上皮がんは咳や血痰が生じることも

肺がんは発生する部位によって、気管支の近くにできる中枢型(肺門型)と、肺の奥のほうにできる末梢型(肺野型)の2種類に分類できます。

中枢型(肺門型)の肺がんの場合、がんが気管支の太い部分に発生して気管支を刺激するので、血痰や咳などの症状が出やすいことが特徴です。扁平上皮がんや小細胞がんが中枢型の肺がんにあたり、このタイプの肺がんは喫煙者に発生するため、近年の禁煙の啓蒙による喫煙者数の減少とともに減少傾向にあります。

近年増加傾向にある肺腺がんは末梢型の肺がんで、喫煙の有無にかかわらず発生する恐れがあります。末梢型(肺野型)の肺がんの場合、細い気管支や肺胞にがんが生じますが、それらの部位には痛みなどの症状を引き起こす神経がないので症状が目立ちません。これが肺がん治療における大きな問題であり、症状が出た段階になると、すでに手術できないほどがんが進行してしまっていることが多いのです。つまり、症状が出てから治療を開始したのでは根治が難しいといえます。

早期段階で肺がんを発見できたケースとしては、検診などの際にレントゲン検査を行ったところ偶然みつかったという場合がほとんどです。ですから肺がんにおいては、定期的にCT検診を受けることが非常に重要です。

肺がんの原因―タバコや公害物質がリスク因子になる

肺がんのリスクを高める原因としては、タバコ(喫煙)、遺伝、大気汚染物質などが挙げられます。大気汚染物質についてはまだはっきりとしたエビデンスがありませんが、今後研究が進むにつれて肺がんとの関連がはっきりしてくると考えています。

タバコは肺がん発症のリスクを5倍高める

タバコを吸わない方の肺がん発症リスクを1とした場合、習慣的にタバコを吸う喫煙者の肺がん発症リスクは男性で4.5、女性で4.3と、5倍近くに上昇します。

また、受動喫煙による肺がんのリスクも指摘されており、家族に喫煙する人がいる場合、喫煙者がいない家庭に比べて肺がん発症リスクが1.3倍になるといわれています。このように、タバコは肺がんのリスクになることが医学的に証明されているのです。

喫煙の有無による肺の違い
タバコを吸った肺と吸っていない肺の違い(櫻井裕幸先生ご提供)

ステージごとの肺がんの生存率はどう決まる?

がんが小さくても予後が悪い場合がある

先ほど、肺がんの大きさは転移とともに肺がんのステージ決定に関わり、一般的にがんが大きいほど生存率は低くなる傾向にあることをご説明しました。

しかし、最近我々が報告した調査で、腫瘍の大きさが1cm以下と小さな肺がんであっても、「充実成分」から成る場合、生命予後が悪くなるケースがあることが判明しました。

早期肺がんのct画像
早期肺がんのCT画像(櫻井裕幸先生ご提供)

上図は早期肺がんの患者さんのCT画像です。

よくみると、画像のなかに淡い影がみえます(白くて濃く写っている部分は血管です)。この淡い影状の範囲を「すりガラス濃度」といって、早期肺がんを表しています。この「すりガラス濃度」はレントゲンでは写らず、CT検査によってはじめて発見が可能となった所見です。

腫瘍の磨りガラス濃度
櫻井裕幸先生ご提供

また、腫瘍径1㎝以下の肺癌のCT画像を、すりガラス濃度を含む割合によって4つのタイプに分類した場合、すりガラス濃度が0%に近いType4の肺がんにおいては、たとえがんの大きさが1cm以下であっても5年生存率が88%にとどまり、さらにリンパ節への転移の可能性も10%程度あることがわかりました。

このような画像診断技術の進歩に伴い、かつてレントゲンだけではわからなかった影がCTによって発見できるようになってきたとともに、画像の鮮明度においても、現在のCTでは1mm間隔で手に取るようにはっきりと病変を確認することが可能になりました。

肺がんのすりガラス濃度が濃くなる要因は?

すりガラス濃度が最初のうち淡い原因は、そこに空気(肺胞)が含まれているからです。

CTによって白く写っているものの正体は肺胞であり、がんが肺胞の上皮を裏打ちして肺胞の壁が厚くなることで映し出されているのです。

ただしこのとき、壁は厚くなっていても肺胞の構築は崩れていません。つまり肺胞の細胞が壊されていないため、すりガラス濃度の高いうちは非浸潤がん、すなわち早期がんということができます。

肺がんのすりガラス濃度
すりガラス濃度と病理所見の対比(櫻井裕幸先生ご提供)

 

(櫻井裕幸先生ご提供)

また、この画像はとあるGGN(すりガラス濃度)の患者さんのCT画像の変化であり、肺腺がんの進展の過程を示しています。

2011年から2016年までの約6年にかけて、この患者さんでは徐々に淡いすりガラス濃度の中に濃い充実部分が拡大していき、淡い部分がなくなっていきました。濃度が濃くなったということはそこに空気が含まれなくなった証拠であり、徐々にがんが肺胞の構築を崩して破壊し、他の組織や臓器に浸潤していきます。

淡いすりガラス濃度の段階であれば、早期肺がんの段階であり、リンパ節に転移していることはまずありません。ですからこの段階で治療をすれば根治が見込めます。術式においても、早期肺がんに対しては一般的に行われる肺葉切除に比べて侵襲性(患者さんの肉体的負担)の低い縮小手術を現在積極的に適応しており、患者さんの負担も少なくすることができます。(詳細は記事2『肺がんの手術―術式や適応基準、術後の生存率は?』

肺がんの早期発見のために―CT検診の重要性

繰り返しになりますが、肺がんにおけるすりガラス濃度はレントゲンでは写らない所見であり、診断にあたってはCT検査が必要不可欠です。

そのため私は年に1回程度のペースで定期的にCT検査を受けることをお勧めしています。

しかし、特に喫煙者に対してのCT検診の有用性は臨床試験によって示されてきましたが、非喫煙者に対する定期CT検査の導入の効果については、医学的根拠がはっきりしておらず、自治体としての検診システムには組み込まれていません。今後、公的な制度としてCT検診を導入することが望まれます。

 

日本大学医学部呼吸器外科HPはこちら

肺がん(櫻井裕幸先生)の連載記事

山梨医科大学(現山梨大学)を卒業後、国立がんセンター(現国立がん研究センター)でのレジデント時代に627例の手術を経験。現在までに通算2,000例以上の手術を経験し、2016年より日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野 主任教授に赴任し、後進の育成に力を注ぐ。国立がんセンター時代に描いた手術記録は全国的に高く評価されており、その絵は静岡がんセンターの電子カルテや肺癌取扱い規約などにも使用されている。

日本大学医学部呼吸器外科HPはこちら(http://nichidai-kokyukigeka.com/

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