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肺がんの手術―術式や適応基準、術後の予後について

公開日 2017 年 07 月 31 日 | 更新日 2018 年 01 月 12 日

肺がんの手術―術式や適応基準、術後の予後について
櫻井 裕幸 先生

日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野主任教授/日本大学医学部附属板橋病院呼吸器外科部長

櫻井 裕幸 先生

目次

肺がんの根治を目指すためには手術でがんを取り除くことが必要です。現在、肺癌の手術では「肺葉切除」という方法が標準的に用いられています。しかし近年ではより切除する範囲を狭めて行われる「縮小手術(部分切除、区域切除)」の適応も広がりつつあります。

手術をするか否かによって肺がんの患者さんの予後は左右され、早期段階であれば手術によって高い治療効果が見込めます。今回は肺がんに対する手術治療について、引き続き日本大学医学部附属板橋病院呼吸器外科部長の櫻井裕幸先生にお話しいただきます。

肺がんの手術―ステージごとの肺がんの治療選択

肺がんの治療方針は総合的評価によって決定される

肺がんの治療を開始するにあたっては、PETやCTなどを用いて病期(ステージ)の評価、心臓・肺の機能や併存疾患などの評価を行い、患者さんの全身状態と病期を総合的に判断したうえでその治療方法を決定します。

たとえば肺の機能が著しく落ちている患者さんに対しては、肺を大きく切除する肺葉切除ではなく、呼吸機能の温存を優先した縮小手術が適応になる場合もあります。

このように肺がんにおいては個々の患者さんに合わせた治療計画を考え、手術や化学療法などの治療を実施していきます。

治療計画には患者さん本人の希望も重要

治療計画を決定するにあたって、患者さんご自身がどの程度積極的に治療を望んでいるかも重要です。

肺がんの手術ができる患者さんの年齢は?

肺がん手術の適応条件

肺がん外科治療の適応の推移(櫻井裕幸先生ご提供)

日本胸部外科学会の全国調査の結果によると、本邦の肺がんの手術治療の適応年齢は年々拡大傾向にあることがわかります。

この表は、外科手術を受けた肺がんの患者さんの年齢を示しています。2014年には、手術を受けた患者さんの50%以上が70歳以上となり、80歳以上の患者さんも13%程度にまで増えてきています。さらに同年は、58人の90歳以上の患者さんが肺がん手術を受けられました。

手術の適応は、患者さんの年齢のみでは決定できません。2015年の厚生労働省による平均余命の年次推移によれば実際、90歳の方の平均余命は約5年あるといわれており、90歳を超える患者さんでも体力が許せば手術治療が実施されることもあります。

しかしご高齢の患者さんに手術を行う場合、退院後急激に体力が落ち、自宅に戻ってから家にこもりがちになってしまう患者さんもいらっしゃいます。そのため高齢の患者さんに肺がん手術を行う場合には、ご家族など周りの人のサポートも重要です。

肺がん手術の術式―部分切除や肺葉切除、肺全摘など

肺がんの手術方法は、切除する範囲によって大きく4つに分類されます。

<肺がんの手術方法>

・肺葉切除

・区域切除*

・部分切除*

・肺全摘

 

区域切除・部分切除……区域切除・部分切除を併せて「縮小手術」と呼ぶこともあります。

標準手術―肺葉切除

肺がんの手術で最も標準的な方法で、右肺で3葉(右上葉、右下葉、右中葉)、左肺で2葉(左上葉、左下葉)にわかれている肺葉を1単位として切除します。

肺区域切除

肺がんの区域切除

上図の通り、右肺は10区域、左肺は8区域にわかれています。この区域を1単位として切除する方法が肺区域切除という術式です。

肺部分切除

腫瘍のある部分のみを切除する方法で、切除範囲が狭い術式です。

肺全摘術

上葉・下葉の間に位置する葉間の部分で大きな腫瘍がある場合や、肺動脈に広範囲に腫瘍の浸潤を認める場合は、片肺をすべて摘出しなければ病変を取り除くことができないことがあるため、肺全摘を検討します。

肺全摘は術後の合併症のリスクが高く、患者さんの負担も大きいため、近年ではできる限り肺全摘を避ける方針で術式が決定されます。しかし、術前には肺葉切除を行う予定であっても、実際に手術室で肺がんの状態を確認し、急きょ肺全摘術に変更とならざるを得ないこともあります。そのため、肺全摘になった場合の対応を手術の前から想定したうえで手術に臨む必要があります。

肺がんに対する胸腔鏡手術の導入

近年は胸腔鏡手術による肺がん手術を行っています。日本胸部外科学会では、皮膚切開が8cm以下であり、なおかつ胸腔鏡を使用して行った手術を「胸腔鏡手術」と定義しています。これによって以前に比べると、小さな傷で低侵襲に手術が行えるようになりました。

肺がんの手術の変遷(櫻井裕幸先生ご提供)

当院の場合、6~7cm程度の皮膚切開下で肺がんの胸腔鏡手術を行っています。創の大きさはもちろん、いかに手術を効率よく短時間で終えて出血量を抑えるかにも重点を置き、患者さんの負担の軽減に努めています。

肺がんの縮小手術(区域切除、部分切除)の割合は増加していくのか

CTによる定期検診の普及によって早期の肺がんが発見される割合が増えていけば、縮小手術の適応の割合も増えていくでしょう。また、高齢の患者さんに縮小手術が行われる数も増加傾向にあり、今後はさらに縮小手術の症例数が増えると予測されます。

肺がんの治療―手術以外の治療法(抗がん剤、放射線治療)

記事1『肺がんのステージごとの症状と生存率―ステージは腫瘍の大きさ・場所・転移などの評価から判断する』でご紹介した通り、肺がんのステージ4は全身にがんが転移した状態です。肺がんの治療方針は、がんが肺のなかに留まっているか(主にステージ1・2)、肺の外に出て転移しているか(ステージ3・4)によって大きく異なります。

ステージ1またはステージ2の肺がんの場合、局所治療である手術中心の治療が計画されます。これに対してステージ3やステージ4で、転移があるとわかっている場合は全身治療である抗がん剤と放射線を併用した化学治療が実施されます。

また、ステージ3の段階で縦隔(胸部の左右肺と胸椎、胸骨に囲まれた部分)のリンパ節への転移が1つ程度の場合、手術を行ったうえで抗がん剤や放射線治療を併用する場合もあります。

縦隔リンパ節に転移がある肺がん(IIIA)に対する集学的治療については、日本でも今後臨床試験が行われる予定で、抗がん剤と放射線を併用し手術を実施すべきか、そのまま放射線治療を継続すべきかが調査されています。試験の結果によっては今後、縦隔リンパ節に転移のある肺がんに対する手術の適応が見直されるかもしれません。

このように、肺がんの治療においては患者さんの容体をみながら、一人ひとりに適した方法を判断します。

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